神との邂逅と、頼み事と、動き始めたステイン
《ふふふ、堅苦しい言葉は疲れるからの〜ココからは砕けて話そう》
「はあ、わかった。こちらも畏まった話し方は苦手だ。後で不敬だ何だ言うなよ?」
楽しそうに笑う神の気配を感じながらわずかに残していた警戒を解いていく。
「ココが世界樹の聖域でなければ、流石に信用ならんかったけどな〜」
《我とて、疑わしいとは思うが、そこは仕方ないしの〜。写し身でも出せれば良かったのだが、今の神々はとある事情で力が足りぬのだ。》
「厄介ごとは御免だが?」
《わかっておる。我ら四神は天上よりステイン、主を観察していたのじゃ。大体の事は知っておるし、お主の疑問にも答えられよう。》
「俺を見ていた?」
《うむ、時間が無いのでゆっくり説明もできぬが、我ら神は観測者であり、造りはしたが干渉するものでは無い。勿論、お主の力についても同様に誓って我らは手出ししておらぬよ》
「そう・・・なのか?」
《それでも何故?と問うので有れば一応我らも調べてあるがな?まあ我がステインに語りかける理由にもなるし、我らの力の低下の原因でもある。》
「・・・やっぱり面倒な話じゃないか?」
《まあまあ、実際にはそう面倒ではない。四神が揃っておる。時期にかたがつく話だし、ステイン、お主には手出しできる話でもないから安心せよ》
「まあそれなら良いが・・・」
訝しむステインだが、神エルアリアは構わず話を続ける。
《今この時、世界樹の元にいるステインにしか我は干渉する力が無いのだ。以前で有れば問題はなかったが、今の天上は荒れていてな?これが限界なのだ。》
「はあ、逃げたいし聞きたく無いが、世界樹の聖域に踏み入れる俺しか無い訳か。」
《左様。そもそも人は勘違いしておるが、世界樹は元々、神々の思念の受信機じゃ。信託というものがあろう?あれは世界樹に思念を飛ばし、人ではどうする事も出来ない出来事などを間接的に世界樹を通じて然るべき人材に伝えておるだけじゃ。》
「つまり、初代国王が言ったという世界樹の頂上は神の世界に繋がっているというのは?」
《あり得ぬの〜》
がっくりと肩を落とし落ち込むステイン。いきなり目標を潰され、さらに会いたかった神と話をしているのだ。
「あ〜何だよも〜〜」
《すまぬな、期待ハズレで・・・》
流石に神もバツが悪そうな気配を出す。ステインが本当に世界樹の頂上を目指しているのを知っているし、神に会いたがっているのも神々は知っていた。ステインの行動を見守ってきた神も申し訳ない気持ちになるが、今回はそんなステインの望みを潰そうとも話しかけた理由があるのだ。
《ステイン・・・本当に済まぬが時間が無いのも事実。取り敢えず我の話を聞き届けてはくれぬか?》
「・・・・・」
《正直、お主に話すのは躊躇っていたのだが、他の神々と話し合い、お主に伝えると決めたのだ。頼む。》
真剣に祈る様な神の声色にステインは溜息を吐きながら頷いた。
《済まぬな》
神は話し始める。
今から約600年前の初代国王の時代、世界樹は初めてこの世界に植え付けられた。その時、初代国王に信託を下し、王国を建て、人種に差別する事のない国を作る様にお願いしたらしい。元々、様々な人種が居ようと神からすれば全て自分達の子供の様なもので、人種が原因で差別や戦争が起こるのを悲しんだ神々の緊急措置だったらしい。王国を中心に差別、戦争の停止になればと考えたらしいのだが、問題が起きた。
当初の目論見通り、王国はなされて、100年位で大陸での中心国と言われるまでに成長していくが、面白く思わなかった者がいたのだ。死と恐怖を司る『魔人』である。神と性質を異なり、相反する者たちがさらに『魔王』と呼ばれる存在を作りだし、世の中に死と恐怖をばら撒こうとしたらしい。後の世に『人魔大戦』と呼ばれる、歴史上もっとも大きな戦争であった。地上は荒れ、闘争の時代が続いたが、時を同じくして神々も『魔人』と戦っていたらしいのだ。
なんとか『魔人』を討伐し、世の流れを正常に戻すことに成功したが、神々も無傷の勝利とは行かず、消耗し、回復するのに長い年月がかかったらしい。『魔人』の討伐と同時に地上の戦いも和平へと向かい、100年続いた『人魔大戦』も終結。そこからゆっくりと国交を繰り返し、人は手を取り合う様になってきた。
そして、今この時思念だけだが世界樹を通して俺に話しかけられる位になったらしい。
《本当に、魔人は力も数も凄まじくてな〜神々は地上に影響を与えぬ様にする為、力がすっからかんじゃ!さらに問題だったのが、とある神が1柱が倒れてしもうたのじゃが、其奴が『生命と繋がり』を司る女神にして、浄化の神じゃったことじゃ。此奴は回復という概念も持っておってな、此奴が居ないせいで力を取り戻すのに時間がかかったのじゃ!》
「神の1柱が居なくなって世の中に影響はないのか?」
《あ〜勘違いするな。魔人に敗れて居れば神の力も消されてしまっただろうが、力さえ残って居れば神は不滅よ。》
「まあ、神だからな・・・」
とんでもない事をサラッと言われたが突っ込んだら話が長くなるとステインは無理矢理納得を示した。
《まあ、それでも魔人の影響を防ぎきる事が完全には出来なくてな?地上に影響を与えてしまった部分もある。それが魔獣であり、魔物じゃ。魔王も影響を受けておる故に、魔王と呼ばれる存在は力が他より強かろう?魔人の波動が子孫にも反映してしまっておる。》
「まさか・・・俺も?」
《そうだ。ステイン、主も魔人の波動を受けた一族の血を引いておる。たまたまお主にその影響が出ておるのだ。》
「たまたまかよ・・・」
人と違う力を持った事に悩んだ時期もあるが、神から言わせればたまたまらしい。事実に気が抜けそうである・・・
《でだな、浄化の神が産まれ代わり、つい数年前に目覚めたのじゃが・・・これが問題があっての〜。我等も力取り戻しきっておらぬので、神界はまだ荒れ果てていての〜、産まれたばかりの赤子を観るには、ちと環境が劣悪なのじゃ!》
「大変なんだな〜。・・・・て、おいまさか・・・」
気の無い返事を返しながら話も終わりかな〜なんて考えていた気の抜けたステインは嫌な予感がして世界樹を見上げる。
《察しが良いの〜。ステイン、主に信託として神の子の育て親になって貰いたい!頼んだのじゃ♪》
「いやいやイヤイヤ嫌々、待て待て待て待て!」
《信託じゃから拒否は無しじゃ♪神の子といえど、赤子と変わらぬ。普通に生活させて居れば良いし、成長したら神界より使いを出すでな!可愛がってやれば良い!》
「なんで俺なんだよ!もっと子守出来そうな人材を探せよ!」
《我ら神々は主を見ていたと言ったろ?主のその才能、様々な事を蓄えている知識、体力、精神力。お主以上の人間などおらぬ!》
「ああ〜〜‼︎今すぐ過去の俺に頑張るなと言いたい!」
がっくり膝を落とし落ち込むステインに神が決定を下す。
《では、ステインよ!浄化の神!これを立派に育ててくれ!育つまでは人の子と変わらぬ故、色々経験させてやってくれ!頼んだぞ♪》
「いや、待て!俺はまだ・・・」
《我等もたまには信託を下しに来る!ではな〜。》
「俺は面倒は嫌なんだよーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!」
完全に夜になり、星々と世界樹だけがステインの叫びを聞いていた。
翌朝、ペチペチと頬を叩く衝撃で眼が覚める。
「んんっ・・・」
まだ眠いと寝返りを打ち、衝撃から逃げる。
「・・・・ちぇ!・・・きちぇ!」
パチパチと先程より強めに今度は肩を叩かれて眼を覚ますと、
「!!!!!」
布団を跳ね除け、壁を背にする様に瞬時に警戒する。
(油断した!?聖域に入れる者が俺以外にいたのか!?)
警戒し、部屋の中を見回すが、何もいない?あれ?と首を傾げていると、跳ね除けた毛布がモゾモゾ動いていた。警戒する手付きで毛布をめくると、「ぷは!」と何かが出てきた。
「あ〜〜、頭が回らないけど、なんとなくわかった。お前が・・・」
「もう!わたち、ちゃんちょおこしちゃのに!ガバ〜ちぇ、びっくり!」
ふんすふんす!と鼻息を荒くしている、2歳位?の青い髪の女?の子がいた。
「はあ〜〜昨日結局あの後何もなかったのにな〜。こう来るのか?」
ペチペチと俺の足を手で叩く赤子をヒョイと持ち上げ、目線を合わせると、
「あ〜、俺はステイン。お前・・・・君が神の子?なのか?」
ニパ〜と笑った子供が元気よく答える。
「はあい!わたち、ちばらく、ここえステイン?とくらちます!ヨロチク〜」
「仕方ないけど・・・仕方ないんだけど・・・」
目の前で落ち込み始めるステインの頭を撫でる子供という、不思議な空間が出来上がった中で、これからの生活が面倒くさいけど、賑やかなものになるだろうと予感するステイン。
(良かろう・・・)
ならば!と決意を込めて子供抱いたまま立ち上がるステイン。
(ならば、やるべき事をやるだけだ!!!)
自分は目的のためにいつもそうしてきた!
理不尽に抗うための力を・・・
権力に負けぬ力を・・・
流されない判断力を・・・
気づいたら聖域に住み着く変わり者になっていたが、俺は面倒だと思った事をこれから先もやり続けるつもりは無い!
神の子を育てれば、俺は自由になれるんだ!
ならば、全力でやってやる!
グッと拳を握り締め、決意を固めるステイン。
面倒な事から逃れるために、面倒だと思った子育てをすると残念な決意をするステイン。
彼は知らない。「テンションが上がると明後日の方向に向かって全速力で、さらに道のないところに道路を広げながら突っ走る。後になって振り返って、何故こうなったと落ち込む馬鹿みたいな天才」と、ステインを知る者たちが評価している事を。
取り敢えず、明日の納品がてら子供用品買い漁ってやる!子供、可愛いがって、神界に帰りたくないと言わせてやる!!!
と、暴走し始めるステインが正気に戻るのはちょっと先の話である。




