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影の男

マリン達が出会った魔族はステインが話していた昔話に出てきた宿屋の夫婦だった。


ステインの話で盛り上がった両者は直ぐに仲良くなり、打ち解けていった。


マリン達の境遇は黙っていたものの、シトリンとステインが守護獣契約された関係であるとか、ケルピー達他の家族がいる事などを一生懸命に話した。


日が沈む様子を見て、奥さんが立ち上がる。


「あらあら、すっかり話し込んじゃったけど、夕御飯の準備しないとね!」

「おお!そうだな。マリンちゃん達もゆっくりしていくと良い。」

「ありがとー!!」

「助かるのです。お父様の所に行ってくるのです!」


夫婦の申し出を受け入れ、マリンはシトリンとステインの様子を見に行く。


トントントン・・・


階段を登っていっている時だった。


「!!?」


ビクンッ!とマリンの身体が跳ね上がった。

シトリンがマリンを庇うように前に立ち、マリンに聞く。


「どうしたのです?」

「何か来る!」


マリンが言うと急いでステインを休ませている部屋へと入る。

バタバタと音を立てて駆け上がるシトリン達に宿の夫婦も気付き、後を追ってきていた。


バタンッ!!


扉絵を勢いよく開けはなつ。

中ではステインがベッドに寝ていた。


「どうしたの?」

「何かあったのか?」


宿の夫婦が心配そうに2人に聞いてくる。


「・・・来た!!」


マリンが叫ぶと、部屋の中に黒い影が現れる。


「おや?出迎えですか?有難うございます。」

「火竜の山にいた意地悪な影!!」

「あの時の・・・!!」


突然現れた影に夫婦は腰を抜かし、マリンとシトリンは自分達とステインの間に現れた影の男を警戒する。

影は不敵に笑うと、マリン達に向かって言う。


「先程、調停者の方々にも言いましたが私は戦闘力を持っていません。警戒は入りませんよ?」

「貴方は何するかわからないもん!」

「取り敢えずお父様から離れるのです!」


腰を抜かした夫婦を庇うように立ちながら影に対し、警戒をする。

今の立ち位置ではステインが危なかった。


「『魔人の器』には何もしませんよ。今、彼は自分の中の魔人の力と戦っているでしょうからね。」

「魔人の力と?」

「戦っているですか?」

「おや?」


影の言葉に思わぬ情報があり、驚くマリンとシトリン。

影の男は楽しそうに話す。


「やはり女神もまだまだ弱っているようですね。気付いていなかったとは。」


影の男は今は何もしないと言わんばかりに両手を上げると、マリン達に相対する。


「彼は自分の中で戦っているのですよ。まあ、なんでそんな状況になっているのかは分かりませんが、邪魔者が少なくなるのは歓迎しますのでおとなしくしていて欲しいですが。」

「貴方の目的は何?」

「おや?私の目的ですか?言ってませんでしたかね?」

「聞いていないのです。貴方は私達の敵なのです?」


影の男はマリン達の質問に素直に答えていく。

マリンとシトリンも素直に聞く。

狙って行っていない素直な聞き方に影の男の口も軽くなっていっていた。


「私は必要がなければ敵対などしませんよ?今回はこの魔国の魔王が『魔人の種子』として使えるかどうか確認しに来たのです。」

「『種子』?ステインは『器』でしょ?」

「色々複雑そうなのです・・・」


「簡単に言うと魔王の持っている魔人の血を種にして、このステインに埋め込みます。すると、魔人の受け皿として機能して『魔人の意思』が復活するのでは?と考えているのですよ。」

「そうなの?」

「難しいのですが、お父様に危ない事したらダメなのです!」


言っている事は細部まで理解できないが順調に情報を聞き出した。

決して狙っていないし、影の男は話しても大丈夫な情報しか話していない。


「それで貴方は魔人の何なの?」


マリンが1番気になっていたことを聞いた時だ。

影の男が笑い始める。


「あはははははははははっ!!私が何か?ですか!?」

「ステインが『器』で、魔王さんが『種』でしょ?魔人の色々を試している貴方は誰?」


今までの緩い感じはなくなり、影の男から圧力が出ている。

宿屋の夫婦は既に気を失っており、シトリンは今までよりも警戒を濃くする。

マリンは気丈に影の男を見つめ続ける。


「ははははっ!!私はそうですね、言うならば『魔人の下僕』でしょうね!私は単純に見たいだけなのですよ!かつての地獄を!!」


「!!シトちゃん!!ステインを連れて外に!!」

「マリン!落とされないでください!」


マリンが叫ぶや否や、素早く動き出し、マリンとステインを乗せて窓から飛び出すシトリン!


後を追うように影の男が付いてくる。


「私は既に壊れている人間です!魔人という悪魔を見たいだけなのですよ!」

「そんな事にステインを巻き込まないで!」

「マリン!」


シトリンの上で振り返りながら影の男に文句を言うマリン。

影の男を許せなかった。


「ヤマタノオロチさんやケルピー達や魔王さん達は平和に生きていたのに。魔人なんかの為に巻き込むなーーー!!」

「魔人なんか・・・?」


影の男の雰囲気が変わった。


ワナワナと影が蠢きだす。


「浄化された魔人・・・彼はまだ浄化され切っていない。生きている!魔人は復活するのだ!」


影が溢れ出すと、影の男は姿を変える。


ボフンッ!!!!


影が弾けると中から人が現れた。


その姿は人間のように見える。

黒い髪を肩まで伸ばし、黒い装束を身に纏い、初老を迎えたくらいの年齢の男だ。


ただ、普通の人間と違うのは彼の頭に角が生えていた。


マリン達は突然現れた男に驚くが、初めて現れた男の気配が強く、逃げる。


シトリンもマリンとステインを守りながら戦うのは不利だと思い全力で離れる。


「邪魔な女神よ!貴方は私がここで始末します!」


男は宣言するととてつもないスピードでマリン達を追いかけ始めた。


その形相は正気をなくしている。


そして、


魔国の戦いの最期の一戦が幕を開け始めた・・・


短くなりましたが、今回はここまでです。


次回から今回の章の戦いを進めていきます!

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