マリンとシトリンと出会い
『マリン』
皆んなが其々の敵と戦いを繰り広げる中、マリンはシトリンと姿を隠していた。
ステインの体を守るために休める場所を探して移動していた。
「マリン、疲れてませんか?」
「大丈夫だよ!シトちゃんこそ、私とステイン乗せて大丈夫?」
「大丈夫なのです!マリンもお父様も大きくなった私からしたら軽いのですよ!」
大きくなったシトリンはかなり巨大な狼になる。
普段は仔犬位の大きさになっているが、本来は大人が優に乗れる位に大きい。
現代のトラック位の大きさだ。
「!?また出てきます!!マリン、しっかり掴まっているのです!」
「うん!シトちゃん。前に2体だよ!!」
影の化け物が気配を出すや否やシトリンが襲い掛かり化け物を切り裂く。
マリンとシトリンも影の化け物に襲われていた。
だが、化け物はそこまで大量に表れるわけではなかった。
また、マリンが詳細な察知を行い、場所や数を知らせるためにシトリンが楽に撃退していっていた。
「む〜?シトちゃん、なんだかあっちに気配があるよ?」
「おや?行ってみるです?」
「うん。変な感じはしないから大丈夫だと思うよ!ステインをゆっくり休められるかも!!」
「ぐう・・・が・・・」
ステインは未だに魘されていた。
マリンは感じる気配が敵のものでないことから、ステインを休ませるために気配の方へ向かう事にした。
シトリンはマリンの指示に従って進む。
しばらく進んでいると小さな村が見えてきた。
村の中から気配がする。
「この村?町?は、まだ避難してないみたいだねー。」
「気配がするけど人はいないのです?」
村の中は閑散としていた。
村の規模からしても気配は少ないみたいだ。
「んん〜?居るのは少ないみたい?」
「多分、影の魔獣に襲われて避難したのではないです?」
「そっか!じゃあ今いる人は逃げ残り?」
「だと思うのですよ!誰かに聞いてみるです!」
気配の感じる方に進む。
村の中を歩いていると一軒の建物の前に着いた。
マリンがシトリンから降りて建物の中に語りかける。
「誰か居ませんか〜〜〜?」
「・・・・誰だ?」
「おお〜〜〜!ごめんなさい。ちょっと休ませたい人がいるの!」
扉を挟んで中の人物が効いてくることに一生懸命に応えるマリン。
「・・・待て、声が・・・子供か!?」
バンッ!!
慌てた感じで扉が開くと魔族の男が飛び出してくる。
マリンを視界に捉えると驚いた様子で語りかけてくる。
「嬢ちゃん、人間か?なんで1人でこんな魔国の外れにいるんだ?」
「1人じゃないよ!シトちゃんとステインもいるもん。」
「・・・ステイン?」
「そうだよ!ステインが今ずっと寝てるから休ませたいの!お願いできる?」
「いや、まさか・・・ステインなのか?」
「あれ?ステインを知ってる?」
「あ、ああ。いや、あのステインなのかは分からないが・・・」
「じゃあ呼んでみるね!シトちゃん!!ステイン連れてきて〜〜!」
マリンが呼びかけると隠れていたシトリンがステインを抱えるようにして表れる。
一応、身体を縮めているが、シトリンの姿を見た家の主人は驚いている。
「おおおわああ!ま、魔獣!?」
「む!私はお父様の守護獣なのです!魔獣では無いのです!!」
「シトちゃん。落ち着いてーー。」
魔獣と言われて興奮したシトリンを宥めていると、男の大声を聞いて中から更に人が出てくる。
バタバタバター
「あなた!?どうしたの!?」
今度は魔族の女の人が出てきた。
男の魔族を心配そうに見ると、側にいるマリンとシトリンを見て目を丸くする。
「あらあら?可愛らしいお嬢さんと狼さん?ね。あなた、この子達はどうしたの?」
少し驚いているようだが、女性は強し。平静を装って男に尋ねている。
しかし、男は口をパクパクさせて声が出せないでいるのでマリンが言う。
「あのね、この子はシトリンって言うの。でね、ステインを休ませたいんだけどいいかな?」
「あら小さいのにしっかりしてるわね!・・・・・ステイン?」
「そそそそそ、そうだ!!ステインってあのステインか!?」
ステインの名前に反応して男もマリンに詰め寄る。
庇うようにシトリンが前に出ると、ちょっと屈んで背中のステインが見えるようにする。
覗き込む魔族の男女。
じーーーーっと観察すると、嬉しそうに話し始める。
「おおおお!!大きくなってるけど面影がある!ステイン君だ!!」
「ステイン君ね!間違いないわ!!」
「2人ともステイン知ってるの?」
どうやらステインの知り合いらしい。
シトリンも警戒を解いていた。
「ああ!昔、この町に来たことがあって世話になったんだ!」
「もう一度会ってお礼を言いたかったのよ!」
「へ〜〜〜!」
「取り敢えず、ステイン君の連れなら歓迎するよ!中に入ってくれ!」
「そうね!そちらの、狼ちゃんもいらっしゃいな!」
案内され、家の中に入っていくと、普通の家とは作りが違うことに気づいた。
「ステイン君は二階の部屋に寝かせてあげましょう。」
「私が連れていくのです!」
奥さんに案内されステインを寝かせにいくシトリン。
マリンは旦那さんに案内され食堂へと連れていかれた。
旦那さんが用意してくれたミルクを飲んでいるとシトリンと奥さんが戻ってきた。
色々聞きたいと言うことで、了承しお互いの話をする。
「しかし、あのステイン君がどうしたんだ?彼が誰かにやられるとは到底思えないんだが・・・」
「そうね。なんだか魘されていたし、大丈夫かしら?」
「お父様なら絶対大丈夫なのです!今はお父様は自分から寝てらっしゃるのです。」
「うん!ステインはね、とってもとっても強いから大丈夫!」
心配する夫婦にマリンとシトリンはにこやかに宣言する。
そして、今のこの村の状況も聞かせてもらった。
「もう10日くらい前かな?急にこの魔国に正体不明の魔獣が現れるようになったんだ。黒い化け物でな。自警団やら兵士やらが戦ってくれたんだが魔国の劣勢で避難令が出たんだ。ここも本当はもうちょっと賑やかな町なんだが、殆どの住民は避難してる。中央がどうなっているか迄はわからないけどな。」
「そうね。私達は逃げ遅れている人達がいる限り避難場所として宿屋をやることにしているの。」
「宿屋?」
「ここは宿屋です?」
「おう!避難も殆ど終わったからそろそろ俺達も逃げる所なんだ。」
ここは宿屋だったらしい。
逃げ遅れている人達をまとめて一緒に逃げる準備をしていた所にマリン達が来たらしい。
夫婦の魔族はそれでも明るく言う。
「それにしてもステイン君が来るとはな。まだまだ魔国は救われるかもしれないな!」
「ええ。ステイン君なら化け物なんてあっという間に倒してくれるわ!」
「ステインが起きたら絶対ぶっ飛ばしてくれるよ!」
「私もお父様を手伝うのです!」
「おお!元気な娘さん達だな!流石ステイン君の連れだ!」
「そうね!『英雄殺しの英雄』の妹だものね〜〜!思い出すわ〜、ステイン君が帝国の英雄から助けてくれた事・・・」
「帝国の・・・?」
「英雄なのです?」
どこかで聞いたような話にマリン達は首を傾げて見つめ合う。
しばらく考え込むと、シトリンが思い出し言う。
「ああ!!お父様が言ってた宿屋の旦那さんと奥さんです!?」
「おお!ステインが言ってた人達!!」
王城でステインが話した昔話の魔族の夫婦が目の前にいた。
マリン達は奇跡的にステインの昔を知っている人物へと辿り着いていた。
そして、そんなマリン達を見つけた影も同時に迫っているのだった・・・
明日はお休みして明後日から頑張って行こうと思います。
お読みいただいてありがとうございます。




