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ただ家族を想って

現実でステインがうなされ始めた頃に戦いは始まった。


ステインは少ない力で魔人の力そのものに立ち向かう。

『聖気』の白い男は見守っているだけだった。


「取り敢えず、ぶっ飛べ!!!」


バキイイイイイイイン!!!


勢いよく飛び出し、小手調べに怪物を殴り飛ばした。


が、勢い良く顔面に叩き込まれた拳を何事もなかったかのように受ける怪物。

赤い瞳をステインに向ける。


「!?」

「ガアアアッ!!!」


素早く離れるステイン。

ステインが元いた場所に怪物の爪が刺さっていた。


もうワンテンポ遅れていたらステインは貫かれていただろう。

今のステインよりも怪物の力の方が上だった。

直感でそれを感じたステインは、素早く次の行動を取る。


「こなクソ!!」


怪物に再度接近すると正面から殴り合いに持ち込む。


「ガアアアアアアアアアッ!!!」


怪物はステインを迎え撃つ。


ステインは一撃でも受ければ大怪我を負い、怪物は一撃でも入れれば致命傷を与えられる。


紙一重の攻防をステインは望んだ。


ハッキリ言って現実でステインが苦戦した事などほとんどない。

いつも圧倒的な力で敵を粉砕してきた。

幼い頃にヤマタノオロチと戦った時以来のギリギリの戦いだった。


バシュ!ブン!!ガン!!


お互いに身体能力はほぼ互角だった。

ただし、それはあくまでも身体能力はだ。


「ちいいっ!!!」


ステインは大きく怪物の腹に蹴りを入れ、反動で距離を取る。

先程から攻撃はヒットしているが有効な攻撃は1度として入れられてない。


「グウウウウウッ・・・!!」


距離が空いた瞬間に怪物は唸り始める。


ゴワッ!!


怪物の体から赤黒いオーラが溢れる。


「ヤバイ!!?」


ステインは残っている力を解放して迎え撃った。


ギャリイイイインッ!!!


怪物の腕が振り抜かれる。

ガラスを引き裂いたような音を立てながら赤黒いオーラがステインに迫る。


「クソッ!!」


必死に躱すステイン。

残った少しの力を身体の強化に回し、横に転がるように何とか回避した。

しかし、怪物は手を緩めない。


「ガウッ!!ガアッ!!ウガッ!!」


連続して爪を振るう怪物。

必死に避け続けるステイン。


「くっ!!?」


躱しきれない攻撃が少しづつステインの身体を傷つけていく。


ドンッ!!


怪物は動きが鈍ったステインの隙を突くように間合いを詰める。


「しまっ・・!?」

「ガウッ!!」


隙を突かれたステインは振り下ろされる爪を躱せない!!


ガウンッ!!!!


攻撃に当たったステインは吹き飛ぶ。


「ぐううっ!!!?」


咄嗟に気をかき集め両腕でガードしたが衝撃までは往なせなかった。


ドンッ!!ゴロゴロ・・


地面に叩きつけられるように転がる。


吹き飛ばされたステインは『聖気』の側まで転がり、やっと止まった。

白い男はステインに話しかける。


「お前は勝てないぞ?お前の中に残る力よりも、魔人の力の方が今は強い。」

「そうかよ。」

「お前は負けたら魔人に飲み込まれるぞ?奴はお前を殺して乗っ取るつもりなのだ。」

「はっ!!やってみろってんだよ!」

「・・・怖くないのか?」

「怖い?何で?」


ステインは首を傾げながら聞く。

不思議そうな顔をするステイン。


「お前の存在がなくなるかもしれないんだぞ?」

「だから?」

「いや、二度と現実に戻れないかもしれないだろ?」

「それが?」

「・・・ハッキリ言うと負けたら死ぬんだぞ?」

「わかってるよ?」

「だったら恐怖は無いのか?」

「無いよ。」


質問に答えながら立ち上がるステイン。

怪物は今、こちらの様子を伺っている。


恐らく、この白い男を警戒しているのだろう。

最高神の話では、魔人の力を浄化した結果が『聖気』だったはず。

恐らく怪物は『聖気』が苦手なのだろう。


それを分かっているから白い男はステインに語りかけているのだ。


「戦いや、死ぬことに恐怖は無い。けど、そうだな・・・」

「なんだ?」


ステインは何も無い空を見上げる。


思い浮かぶのは家族の顔だ。


マリンを預かってから今まで、厄介な事もあった。


別れもあった。


けど、新しい家族が増えた。


(ステイン〜♪)


元気に呼ぶマリン・・・


(お父様!)


慕ってくれるシトリン・・・


(ステイン殿?)


気遣ってくれるケルピー・・・


(ステイン兄ちゃん!)


悪戯気味に笑うハク・・・


(兄上。)


お淑やかに微笑むフェニ・・・



家族の顔が浮かぶ。


今まで自分一人で充分だった。


その中に種族も立場も年齢も性格も、何もかもバラバラな者達が増えた。


それが、今は楽しい!


「俺は・・・」


この戦闘は怖くない。


だって、負ける気がしないんだ。


「きっと・・・」


力は俺の方が弱いだろう。


使える技も今は少ない。


「それでも・・・」


けど、決めているんだろう。


自分に誓っているのだ。


相手がどれだけ巨大でも、強力でも。


多分、皆んなを家族と認めた時に。


決めたんだ。





「!!!?」


ステインを光が包む。


ステインの気持ちに応えるように。


眩い白い光が溢れる。


「グオオオオオッ!?」


白い男と怪物が驚愕する中、ステインは白い光の中で微笑んだ。


「俺は、決めている・・・」


そして、笑いながら言うのだ。


「俺の!!家族の邪魔をする奴は、絶対にぶっ飛ばす!!!」


コオオオオオオオオオオオッ!!!!


輝きが増す!

ステインの想いに応えるように。


「こ、これ・・・は・・・」


白い男の姿がステインに吸い込まれるように消えていく。


「ガア!?」


怪物は驚愕し後ずさる。


「俺が怖いのは家族が危ない時に側にいてやれない事。それだけだ!!」


光がステインに収束していく。


眩い光に包まれて、ステインは怪物に向かって宣言する。


「『聖気』はマリンに貰った。この力で俺はお前を倒す。」


構えを取るステイン。


怪物は四つん這いになり、吠えながら力を入れる。


「ゴオオオオオオオオオオッ!!」


「俺は急いでる。家族の元に戻るんだ。邪魔するな!!!!」


力が戻った訳ではない。


『聖気』が宿ったとしてもステインの力は戻ってはいない。


けれど、


家族の元に戻るために、


ただそれだけを考え、


ステインは自身の存在を賭けて怪物と戦いを始めた・・・





短くなりました。

色々な戦いを同時進行していますが、次回はマリンです。

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