激化していく戦況
『魔王』
ケルピー達の前に影の男が現れたころ、魔王は一人剣を握り戦いを繰り広げていた。
ザンッ!!
魔王は魔力を中心とした戦法が得意ではあったが、幼少の頃のステインに会って以来、剣の稽古をしていたため体力的にもそこらの魔族や人間よりは高みにいた。
ザシュッ!!
テンポよく剣を振るい、化け物を切っていく魔王。
化け物からの光線は別の化け物を盾にし躱していく。
今までの交戦で、自身の攻撃には吸収が働かないことは判明していた。
しかし、普通の魔族では分かっていても光線を躱すことさえ出来ずにやられてしまう。
四天王でさえ光線がくると分かっていて何とか躱せるレベルだ。
ましてや、人数が多ければ多いほど光線の餌食になりやすくなる味方が増えるし、回避するにしても周りを気にする余裕などないので、魔王は単身で戦う決心をしたのだった。
かなりの数の化け物を切り捨ててきた。
そして、今目の前にいる化け物の最後の一体を切り捨てる。
ズパッ!!
残心を取る魔王だが、違和感を感じていた。
「・・・・どういうことだ?」
化け物の数が少ないのである。
魔王は自身が狙われていることは自覚している。
ならば、単身戦っている魔王を狙って多勢を用意するか、それとも強力な個体を用意するかがセオリーだろうと思っていた。
罠か?と最初のうちは怪しんでいたものの問題なく撃退できてしまったのである。
「少なすぎるが、気配はない。どうなっている?」
不思議に思っている時だった。
「グ・・・オオオオオオオオ!!!」
地響きするような雄たけびが聞こえてくる。
魔王は謎の声がしたほうに振り返り、言葉を無くす。
魔国の西にある荒野に木々よりも巨大な黒い何かがそびえ立っていたのだ。
「・・・・・何だあれは・・・」
ぽつりと呟いた魔王は、ハッ!とした顔をした後、頭を振り気を取り直す。
「何であれ、あれが敵の本命か?やるしかなかろうな・・・」
覚悟を決めた魔王は巨大な化け物のいる方角へ向かって移動を開始する。
守り切れるのか?という不安を押し殺しながら決戦の舞台へと向かっていた。
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『ケルピー達』
「グ・・・オオオオオオオオ!!!」
巨人が雄たけびを上げる中、ケルピー達は自身達よりも巨大な敵に警戒する。
完全な余談になるが、
ケルピーは普段、仔馬程度の大きさに体を縮めている。が、戦闘の時は巨大な馬型になる。それでも精々普通の馬の三倍くらいである。
ハクは普段は子猫より小さめになり、ステインの肩に乗ったりしているが、本来の大きさは巨大な虎である。やはり、普通の虎より二回りくらい大きい。
フェニも巨大な鳥型であるが、精々7~8メートル位のものだ。普段は小鳥の姿でいる。
勿論、ケルピー達は縮小だけでなく巨大化も出来なくはないが、動きが鈍り本来の戦い方に合わなくなるため無駄に大きくなったりはしない。
しかし、巨人はそんなケルピー達よりも10倍以上の巨大さだった。
「グオオオオッ!!」
雄たけびを上げるだけで空気が震える。
理性を感じさせない本物の化け物がそこにいる。
圧倒的な存在感をしめしていた。
「くっ!?なんという圧力よ!!」
「なかなか面倒な感じだね?」
「これは、全員で行くべきでしょうね。」
言葉が出るのと同時にケルピー達は動き出した。
散会し、巨人を取り囲む。
素早く行動に移すハクとフェニ。
「『激震音』!!!」
「『フレイム・サークル』!!!」
勢いよくハクとフェニが仕掛けた!
音の衝撃と、炎の輪が化け物に迫る。
チュドムッ!!!!!
巨人を捉えると、巨人の腹部で爆発を巻起こす。
「グオオオ・・・・」
ぐらりと傾く巨人の体。
攻撃に効果があったことを確信したハクとフェニは追撃するべく力を溜める。
「グオッ!!」
と、一吠えすると、ぐらついていた体を止める。そして、グルンッ!とハクとフェニを捉える。
「「!!??」」
隙を突かれた形になってしまったハクとフェニに対し、巨人は攻撃を仕掛ける。
その巨体通りの腕を振り上げ叩きつける!!
ドンッ!ドゴゴゴンッ!!!
繰り返すようにパンチを繰り出す巨人。
地を割るような威力の拳がハクとフェニを包み込んだ。
「ハク!?フェニ!?」
ケルピーは一人取り残される形になる。
急いで二人のそばに寄ろうとする。
グルンッ!!
その瞬間、巨人がケルピーの方に赤い眼を向けた。
「!?」
一瞬怯んだケルピー。
しかし、ほんの一瞬で気を取り直すと、巨人に向かい攻撃をいれる。
「『風蘭陣』!!」
ズババババババババババッ!!!!
切り裂く風の檻を作り出し、巨人の動きを止める。
その隙に二人の安否を確認する。
「ハク!!フェニ!!無事か!?」
巨人の攻撃の余波で出来た砂埃の中からハクとフェニが姿を現す。
「ちょっとあぶなかったよ・・・」
「くっ!!無傷ではありませんが何とか・・・」
傷ついた体で現れる2人を見てほっとするケルピー。
すると、後ろからプレッシャーを感じた。
「ケルピー兄ちゃん!?」
「後ろです!!」
「!!?」
振り返った瞬間に、風の檻を散らすように巨人が出てくる。
「ブオオオオオッ!!!」
まるでダメージを感じさせない巨人。しかし、
ズウウンン・・・!!!
と、いきなり両手を地面につける。
四つん這いになった化け物の頭が下がる。
「効いていたのか?」
「わかりづらい敵だね?」
「先ほどの妾達の攻撃も効果はあった手応えでしたが・・・」
巨人を警戒しながら観察する。
今のうちに追撃をする為に改めて力を練っていく三人。
「今のうちに止めまで行くぞ!!」
「やられた分おかえしだよ!!」
「一気にきめましょう!!」
其々が力を溜め、攻撃しようとした瞬間である。
ガバアアアア!!!!
いきなり顔を勢いよく上げる巨人!
「「「!!!???」」」
虚を突かれた形になる三人!
フィフィイイイイイイイイイイイイ!!!!
奇妙な音を立てると、光りだす巨人の赤い瞳。
「不味い!!!」
「うわ!?嘘でしょ!!」
「皆、一斉に打ちますわよ!?」
攻撃から迎撃の体制へと切り替えるケルピー達。
一瞬、巨人が早かった。
「グオワアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!!!!!!」
雄たけびと共に、赤い瞳から放たれる巨大な『ブラスター・レイ』!!
ズゴオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッ・・・・・
強烈な閃光と、その巨大な爆発音にケルピー達は包まれていったのだった・・・・
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『マリンとシトリン』
一方その頃、マリンとシトリンは身を隠すように森の中に入っていた。
影獣は何体か出てきたものの、すべてシトリンが撃退していた。
「皆、大丈夫かな・・・」
「大丈夫なのです!!お兄様達は凄く凄く強いのですよ?」
残ったマリンは不安を感じながらもシトリンに甘えるように寄り添い、今、一番甘えたい相手であるステインを見る。
「ぐ・・・・・がああ・・・」
うなされるように身じろぐステイン。
未だ目を覚ます気配がない。
一体何がステインの中で起きているのか分からないが、大量の汗を拭きとってやりながら見守っていた。
「ステイン・・・」
「お父様・・・」
心配そうに2人とも顔を覗き込む。
戦闘が激化していく中、ステインは自身の戦いをしていた。
誰にも見えない。感じない戦いが、静かに起こっている。
それは、ステインの存在を賭けた戦いだったと、皆は後々知ることになるのだった・・・
次回は久しぶりに主人公に戻ります。




