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目覚めないステインと魔国への到着

ステインが眠ってからは、それぞれが順番でマリンと一緒に面倒を見ていた。


途中交代しながら訓練とステインとマリンの守りに回る。

ステインの焦げた服は変えさせ、今は寝息を立てている状態だった。

フェニの背中で眠るステインをマリンが心配そうに見ていた。


「ステイン起きないね?」

「ええ、思ったよりも力を出しすぎたのかもしれません。妾達が守るので、マリン様は心配いりませんよ?」

「うん。ありがとう。けど、ステインが起きないと何だか寂しいね。」

「兄上はあまり自覚がないようですが、妾達の中心には兄上がいて周りにケルピー兄やハク、シトリンとマリン様が集まっていますからね。」

「うん。そうだね。・・・・あれ?フェニ、ケルピー兄?」

「ああ、呼び方ですか?修行中にケルピー兄と呼ぶように変えたんです。やはり教えを請う立場でしたから、敬意を示そうと思って!可笑しいですか?」

「ううん!兄妹みたいでいいと思う!私達、家族だもんね!」

「ええ、過ごした時間は短くても家族は家族です。」

「だよね!!」


ケルピー達もステインも自然に家族と呼び合える関係がマリンは嬉しかった。

ニコニコ笑っているマリンを見てフェニも笑っている。


これが、ステインが寝て、2日目の事だった。

それからもステインは眠り続けていたのだが、5日目辺りから様子が変わり始めた。


「グッ・・・!!ウウッ・・・・!!」

「ステイン!?ステイン、大丈夫!?」


今日はハクの上に乗っていたステインが苦しみ出した。

マリンは慌ててステインに呼び掛けているが返事はない。

代わりに呻き声が上がっていた。


「ステイン兄ちゃん!?ちょっと、ケルピー兄ちゃん!!皆んな!!集まってーーーー!!!??」


ステインの様子を見たハクが、訓練中のケルピー達を呼ぶ。

様子が変な事に気付いたケルピー達が慌てて集まる。

ハクは自分の上からステインとマリンを下ろすとケルピーにステインを診せる。


「いきなりステイン兄ちゃんが苦しみ出したんだ!!ケルピー兄ちゃん、何か分からない?」

「どういう事だ!?」

「お父様!?」

「兄上が!?」


ケルピーが浄化の魔力をステインに送る。

それを心配そうにフェニ達が眺めていた。


「これは・・・力の消耗が原因ではなさそうだな。何が起こっている?」

「ケルピー兄ちゃん、分からないの?」


ハクの質問にケルピーは首を振る。


「消耗した力が殆ど戻って居らぬ。息はあるが、これでは仮死状態と変わらぬままだ。恐らく、ステイン殿の中の『聖気』と関係があるとは思うが・・・」


悔しそうな声を出すケルピー。

他の皆んなは心配そうにステインを見ていた。

そんな中、マリンが元気に言う。


「ステインなら大丈夫!皆んなのお兄ちゃんなんだから!私達は魔国に向かおうよ?ステインをベッドに寝かせてあげよう!」


ケルピー達は顔を見合わせる。

一番年下の妹に励まされたのだ。

誰ともなく笑いながら顔を見つめあうと、気を取り直して言う。


「そうですな。私達の長兄がこのようなことでどうにか成るわけがない!」

「うん!ステイン兄ちゃんは僕の中で最強だしね!」

「妾の兄上がなにかに負けるなど、想像出来ぬ!」

「お父様をゆっくり休ませるのです!」


皆んな、ステインを心配しながらも先に進む。

ただ、今までと違い、皆んな訓練を止めステインを囲むようにして進んだ。


それから、訓練は止めたものの、順調に先に足を進めたが、ついにステインが目覚める事はなかった。


皆んなステインを心配していたが、マリンが「大丈夫。」と率先して言う為、不安を口にすることはなかった。


後1日程で魔国に着くという所で異変は起きた。


「「「「!!!!????」」」」


ケルピー、フェニ、ハク、シトリンは今向かう先から妙な気配が漂っているのを感知する。


「皆んな、魔国が危ないの。」


マリンが静かに言う。

マリンはケルピー達よりも前に感知していたのだ。


「マリン様、まさかとは思いますが・・・」

「うん。多分間違いない。ちょっと変な感じだけど。」

「僕もこの気配は感じたことあるよ。」

「妾もですわ。訓練の成果をぶつける機会が早々に来そうですわね?」

「私もお兄様やお姉様に負けないように活躍するのです!」


皆んな感知できる気配に覚えがあった。

何故なら、マリンはその気配に危険な目に合わされたことがあり、ケルピー達はその気配に取り憑かれたことがあるのだ。


「魔国内に魔人の気配があろうとはな!」

「ステイン兄ちゃんが寝てる所だけど見逃さないよね!」

「兄上が居なくとも、妾達ならばやれるはずですわ!」


調停者達がやる気を漲らせる。


「シトリンは私とステインの側に居てくれる?」

「ムム?仕方ないのです。私がマリンとお父様を守るので、お兄様方、魔人は任せるのです!」


マリンは自分が着いていくと足手まといになると思い、シトリンに一緒に残るようにお願いした。

ステインも、今はほっておくわけにはいかない為、シトリンは残るように決めた。


「では、距離はありますが、マリン様達はこちらに待機していてください。」

「僕らは先に魔国内を見てくるね?」

「戦闘になる可能性が高いので、マリン様達も気を付けてください!」


ケルピー達は言葉を残すと足早に魔国に向かって走り出した。


今までも感じたことのある魔人の気配。

だが、今回の気配は何か違和感があった。

今までの気配は陽炎のようだったのに、やけにハッキリとした気配だった。


胸に感じる不安と、良くないことが起こりそうな気配を感じながらマリンはステインの手を握り締める。


「マリン、一応隠れる場所を探すのです!」

「うん!わかった。」


シトリンの背に股がり、マリン達は移動する。


(凄く嫌な予感がする。ステイン、早く起きて!)


不安を見せないように胸の内で祈るマリン。


これから、歴史上最悪と呼ばれる大陸戦争の始まりだった。

予約忘れてました。

次回より新章に行きます。

お読みいただき有難うございます!

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