ステインは忘れっぽい。
話が終わると、静かに聞いていたケルピーが話し始める。
「帝国。人間でも特に愚かな国なのだな。」
「そうね。妾もその様な戦争には関与しない為、今初めて認識しましたが・・・」
「ステイン兄ちゃんが手を出してなかったら、僕達、調停者が介入しないといけなかったかもね?」
「うむ、著しく世界を乱していただろうな。そうなれば戦争如き比べ物にならぬ報復を調停者として下していたであろうな。」
「す、ステイン。貴方の家族が物騒なんですけど?」
物騒て・・・。いや、ケルピー達は世のバランスを乱すものは調停する存在ですからね?
マインには説明・・・あれ?説明してない?
じゃあ、しょうがないね!説明してあげよう!
「貴方ね・・・私は何も知らない事にするわ・・・」
「ふむ、賢明な娘だな。」
「そうだねー。僕達の存在は今は厄介なものになってるからね!」
「妾達も今や最強の存在では無くなったから、余計な者に狙われるかもしれないわね。」
「良し!私は何も聞いてない!!」
せっかく説明してやったのに、何だか聞いてない事にするらしい。
まあ確かに調停者が狙われているかもしれない状況下ではあるけど、地上に今いる調停者はケルピー達だけじゃなかった?
俺の家族になったからには全力で守りますよ?
それから雑談などで時間を潰していると、扉を叩く音がして、扉が開いた。
入ってきたのは、一際豪華な装束に身を包んだ金髪碧眼で、偉そうに髭を生やしている男と、偉そうな服を着ている緑の髪をしている男だ。
「待たせたなステイン。久し振りだ。」
「おう。会いたくなかったけどな!」
「ステイン殿、ご無沙汰しております。」
「ああ、相変わらず疲れた顔してるな!」
挨拶をしていると、マインが服を引っ張ってきた。
どうした?
「すすす、ステイン。嫌な予感しかしないけど、こちらの方は?」
「うん?王と宰相だけど?」
「!!??」
目を見開き、いきなり跪くマイン。
頭を下げる。
「ああ、お嬢さん。良い良い。今日はプライベートな応待だ。礼節はいらぬよ。」
「そうです。ステイン殿の知り合いならわかって頂けると思いますが、ステイン殿の前で権威など意味を成しませんからね。」
「何してんだマイン。服が汚れるぞ?」
ガチガチに緊張しているマインをソファーに座らせる。
しばらくマインはそっとしておいて、王と宰相に向き直る。
「あんた達のことだ、今までの話はそこに居る隠密から聞いていたんだろう?」
「やはり気付くか?」
「だからステイン殿に監視みたいなことは意味が無いと言いましたのに。」
天井を指差しながら聞く。
さっきから聞かれて困る話はしていないから構わないが、隠密がコチラの監視をしていた。
勿論ケルピー達も気付いている。
この2人の事は戦争以来の仲で知っているから放っておいた。
何故なら、目的は・・・
「監視の1つもしたくなるわ。ステインは直ぐに逃げよる。お陰で最近はあって居らんかった!」
「王の爺さんは相変わらずだな〜。」
「ステイン殿、たまには会いに来てやって下さい。王はステイン殿を気にして城を抜け出そうとしていたり、ギルドマスターに近況報告させたりと、公務をほったらかそうとするのです!」
「いや、いつも会おうとは思うんだけど、王都でなんやかんやしていたら忘れるんだよな〜」
「ステイン、お主は興味のある事以外は直ぐに忘れよるからな?」
「そうか?」
などなど話していたら、王と宰相がケルピー達に向き直ると、今度は王達が跪いた。
「ご挨拶が遅れました。王国にて統治をしております国王です。調停者様方、ようこそおいで下さいました。歓迎致します。また、王国国民の無礼の数々、平にご容赦願います。」
「うむ、王よ。今の私達はステイン殿の家族としてここにおる。ステイン殿が何もせぬなら、同じく私達も大人しくしていよう。」
「そうそう、ステイン兄ちゃんや皆んなに敵対するなら容赦しないけど、ステイン兄ちゃんの友達なら何もしないよ?」
「兄上とマリン様は大事な存在であり、妾達の恩人でもあるのでな。気を付けなさい。」
おおう。そうか、王より調停者や神の方が断然偉いよな!
そりゃ応接室に通されるし、隠密で様子見てるはずだ。
謁見して、王が皆んなの前で跪くのも馬鹿な貴族からすれば良い鴨にしかならないだろうし、そうなったら俺達の報復で城が半壊くらいするかもな!
「それで、ステイン。またややこしい事態になっておるらしいな?」
「ああ、けど何にも判らない、というのが本音だ。だから後手後手になるんだよな〜!」
「王国としても協力したい所だが、今は情勢が怪しくなっていてな。」
「何かあったのか?」
「実は、帝国の動きが怪しいのです。かつての帝国残党がいるのかもしれません。」
宰相が言うには、かつての戦争で帝国の皇帝から主要人物は軒並み裁きを下していたらしいが、最近になって帝国らしき人物などの報告が上がってきているらしい。
かつて裁いた帝国人の討ち漏らしは考え辛い。
王国と魔国で共同で行なっていたからだ。
しかし、最近になって、かつての帝国と同じ手口の事件や痕跡が見受けられる事態になったらしい。
何かが帝国で起こっているみたいだ。
また、魔国側でも同様の報告が上がっているのが、デイルから上がっていたらしく、魔国と共同で他国にも使者を出し協力体制を立てようとしているらしい。
「魔国と協力してくれる国で今度会談する為の場所を選別している段階だ。会談で協力関係を築けると良いが、ステインから聞いた魔人と帝国を両方相手取るのは難しい。」
「魔人関係は俺達が対応する。随分好き勝手してくれたからな。今度こそぶっ飛ばす!」
「私も借りを返さねば気がすまぬ!」
「僕も!」
「勿論、妾とてやられっぱなしでは居られぬよ!」
「はっ!?わ、私何か寝過ごしましたか?お父様、私もついていきます!」
「ふにゃ?」
起きたシトリンを含め、それぞれが魔人の関係者を相手取る宣言をする。
火竜の山で出た影野郎もまだ倒し切っていないだろうし、まだまだ神で・・・さ・・え??
ああ!!
「ああ!!」
「ぬお!?」
「おう!?」
「きゃあ!?」
思わず声を上げたステインの声に反応した王と、宰相と、マイン。
ケルピー達はどうした?とステインを見ている。
「しまった!!魔人関係者がまだいた!!」
「本当かステイン殿!?」
「え〜誰!?」
「兄上どこにいますか?」
「お父様、よくわかりませんが本当ですか?」
「んん〜〜〜ステイン?」
そうだ、すっかり忘れていた!
前に聞いていたじゃないか!
俺が魔人の影響を受けた様に、魔人の力の影響を受けた人物がいた!!
「神から聞いていたんだが、魔国の魔王は魔人の影響を受けた人物の子孫だ!!」
「なんと!?」
「そうなの?」
「それはまた・・・」
「お父様、後で聞かせて下さい!」
「ステインお出かけ?」
家族の皆さんの視線が一部痛い。
忘れていた俺が迂闊だったのだが・・・
「フェニ、ハク。ステイン殿は意外と物忘れが過ぎる。ヤマタノオロチ殿の時もそうだ。私達がしっかりせなば!」
「ステイン兄ちゃんもやっぱり人間だね〜。」
「情報の共有は密にした方が良さそうですね。」
いや、だって言い訳するならこんなに魔人に関わると思っていなかったんです。
聞き流していたんです。ごめんなさい!
「よく分からぬが、ステインよ。もしや、魔王も魔人関係なのか?」
「いや、直接関わっていないんだが、どちらにせよ一度会いに行くべきかもしれない。」
「うむ、何かあってからでは遅い故、会いに行っておくべきであろうな。」
「僕は賛成〜」
「妾も賛成致しますわ。」
「私はお父様達と一緒なら〜」
「わーい!旅行だね!」
さて、俺のうっかりが判明したら今度は魔国に行く事になりましたとさ!




