続・昔話。〜勇者になる前のステイン〜
それから、魔国領内に戻ってきた俺が見たのは、焼けただれた街並みだった。
俺が霊峰にこもっている間に、帝国との戦争が進んでいて、魔国は劣勢に立たされていた。
正直な話、戦争に興味はなかったし、何処か自分と関係ないという思いしかなかった。
魔王に会うために魔国領内を突き進んでいた時、ある町に立ち寄った。
目的はなかった。ただ、宿に泊まろうとしただけだ。
そこの宿は夫婦でやっていて、奥さんが受付をしていた。
「あら、こんな時にお客様かな?坊や、1人?」
「ああ。泊まれるかな?」
「もちろん大丈夫よ。と、言いたいけれど、戦争で食材が回らないから、食事はつかないわ。それでも良いなら泊まるだけなら大丈夫よ?」
「わかった。お願いする。」
「はい。ありがとうございます。」
部屋に案内してくれたのは奥さん。
途中、奥さんが着ていた長袖から覗いた腕が細くなっていたのに気づいた。
頬も欠けているように見える。
「ひょっとして、アンタも飯が食えてないんじゃないか?」
「あら?ヤダ、大丈夫よ。今日は旦那達が男達を連れて狩に出てるの。今日の夜は無理でも明日の朝には美味しいご飯が食べれるわ!お客様にもお出しできると思うわよ?」
「そうか。まあ、大丈夫そうならで良い。」
「わかりました。では、2階の角部屋を使ってね?ごゆっくり。」
部屋に通された俺は、フードを取り、上着や荷物を置くとベッドに寝そべった。
戦争が起こると食べ物も無くなるんだな。と、戦争について考えていたら、いつのまにか寝ていた。
しばらく経った頃、下の方から騒ぎ声が聴こえてきた。
部屋の窓から外を見ると、暗くなっていた。
結構寝てしまっていたらしい。
下の方から聞こえる声が気にかかり、フードを被り、階段を降りて行く。
「アナタ!?アナタ!!」
「奥さん!落ち着いて!」
宿の奥さんと、男の声がした。
俺は建物の陰に隠れるようにして、声のする方を見ていた。
奥さんと、男と、旦那さんっぽい男がいた。但し、旦那さんっぽい男は傷だらけの身体で横たわっていた。
(魔獣にでもやられたか?・・・しかし、あんな切り傷を作れる魔獣なんかこの辺りにいたか?あれは・・・)
「すまない。狩をしていたら帝国の奴らに会った。俺達は逃げ切れたが、コイツは逃げ切れなかったんだ季・・・」
「そんな!アナタ!目を開けて!?」
「俺達が駆けつけた時にはもう・・・」
帝国の手がこの町辺りまで伸びていたらしい。
あれは剣で切られた傷か。
魔獣の爪などに比べたら傷が綺麗過ぎると思った。
「この町ももう危ない。今、町長に報告して、明日の朝には皆んなでこの町を出る準備をしている。奥さんも、準備するんだ。」
「この人は!?こんな傷じゃ動けないじゃない!?」
「残酷だが、皆んな自分の事で手一杯なんだ。奥さん、諦めるか、ソイツと残るか決めてくれ。」
「そんな!!」
俺は戦争にも帝国にも興味はなかった。
襲われたら撃退すれば良いし、何もしてこないなら攻撃したりしない。
ただ、何となくの行動だった。
「そのオッさんが治れば良いのか?」
「誰だ!?」
「あ、お客様・・・」
「質問に答えろ。治れば良いんだな?」
「そりゃ、治るならな・・・けど、この傷を治せる薬も魔法使いも、この町にはいないんだよ。」
「治るなら!どんなに良いか・・・」
「わかった。『ヒーリング・ライト』。」
手を伸ばし、傷を癒す回復の光が旦那さんを包み込む。
光が収まると、傷がなくなっていた。
「う、嘘、本当に!?」
「おおおおおお!?」
「傷は治した。時期に目が覚めるだろう。後は栄養を採らせておけば・・・食事が無いんだったな。」
「「あ・・・」」
「はあ・・・まあ良い。ついでだ。俺が狩に行ってくる。」
「だ、ダメよ!お客様はまだ小さいのに、あ、危ないわよ!」
「ああ!それに帝国の奴らもいるかもしれないんだぞ!?」
「ついでだと言ったろ?俺の食料のついでだ。後、帝国?もし何かしてきたら、蹴散らして良いんだろ?」
止める声を無視して俺は町の外に向かって行った。
獲物を魔力探知で探し、ウサギや、猪、鳥を狩っていった。
夜で動物も休んでいたから狩りやすかった!
これだけあれば充分か?と思ったところで、帝国の奴らに会った。
確か、3人位で斥候として来ていた隠密系のグループだった。
「魔族か?」
「人間がいるはずないだろう?」
「味方はこの森の反対側に陣取っているんだ。どう考えても敵でいいだろう?」
「・・・・・・」
スタスタスター
俺は無視して、獲物を抱えて去ろうとした。
「待ちな。小僧。」
「逃げれるわけないだろう?」
「魔族は殺す!」
俺の足元に投げる用の剣が刺さっていた。確か、クナイだっけ?
俺は溜息を吐きながら其奴らに忠告した。
「おい、煩い3バカカラス。シャドウ・カラスみたいに弱そうだけど、邪魔するなら迎撃するぞ?」
「誰がカラスだ!」
「お前、なめやがって!」
「殺す!」
攻撃を仕掛けてきた。
ゆるい攻撃を避けながら聞いた。
「お前ら帝国か?」
「くっ!?」
「コイツ!!」
「だったらどうした!?」
「帝国は俺の敵になるんだな?」
「とっくに魔族とは敵だろうが!!」
「おい、コイツ見た目通りの小僧じゃないぞ!?」
「手加減するな!!」
「わかった。帝国は敵とする。」
俺は宣言した。帝国の野営地に向かって手を向ける。
3人は攻撃を続けていたが、魔力の渦に捉えて、3バカと野営地を直線で繋ぐ。
「俺の邪魔をするな。『エクス・プロージョン・テンペスト』!!!」
爆炎の嵐を巻き起こし、直線上のモノを薙ぎ払う。
断末魔をあげる瞬間もなく、野営地ごと消しとばした俺は何事もなかったように町へと帰った。
宿に着くと、宿の前に人が集まっていた。
ズズズーーーーーーンと、獲物を下ろして行く。
帰りにも結構な数を仕留めた。魔力で浮遊させて持ち帰って来たが、これだけあれば暫く食事は持つだろう。
「お、お客様?こ、これは?」
「ああ、予想より狩が捗ったからな。」
「あ、アンタ、森の方ですごい光と音がしたが、大丈夫だったのか?」
「それは多分俺だ。帝国の奴らが攻撃してきたからな。」
「て、帝国!?帝国の奴ら、何か魔導兵器でも持ち出しやがったのか?」
「坊主、良く無事だったな!?」
「ん?違う。俺が帝国の野営地ごと殲滅したんだ。」
「そうかそうか。・・・ん?何だって?」
「だから、帝国の奴らは殲滅しておいた。」
「「「「「「・・・・・・・・」」」」」」
集まっていた人達が大きく口を開け固まっている。
「それより、宿の奥さん。俺は鳥一羽で充分だから他は好きにしてくれ。」
「え!?は、はい。って、いいの!?ですか?」
「ああ、俺は部屋で休む。」
驚いて固まっている人達を置いて、一羽の鳥を掴み、部屋に戻った。
鳥は、魔法で焼き鳥にして食べた。
朝になると、ドアを叩く音で目が覚めた。
「なんだ?」
「す、すみません!お客様、良かったら下に来てもらえますか?」
「・・・・わかった。」
面倒なことになりそうだ。と思いながらフードを被り、下へ降りる。
一階には、初老の魔族と、奥さん、旦那さんがいた。
旦那さん、目が覚めたか。
「お客様すみません。起こしてしまって。」
「構わない。それで、何の用だ?」
「その前に、昨日は助けてもらったみたいだなお客さん。ありがとうございした!」
「気にするな。たまたまだ。普段はあんなことしない。」
「私からも礼を言います。旦那もだけど、昨日は町の皆んな久し振りに食事が出来ました!本当にありがとうございます!」
「そうか、良かったな。」
宿の両人が礼を言い終わるのを待っていたように、初老の男性が声をかけてくる。
「私は、この町の長をしている。昨日は町の者が世話になりました。あれから、森の中を確認しました者から、帝国の野営地まで綺麗に崩れていたと連絡がありました。」
「そうか。」
「失礼ながら、こんな子供にしか見えない者がやったとは思えませんでした。」
「別に良い。で?何の用だ?」
「失礼。では、単刀直入に。この町は放棄するべきかと思いまして、移動の際の護衛をお願いできませんか?」
「・・・」
「お礼は・・・と言いたいのですが、戦争で何も渡せるものはありませんが・・・」
「礼とかはいらない。ただ、魔城の方角に向かうなら付き合っても良い。但し・・・」
「向かう先は魔城のある中央都市ですが、他に何か?」
「俺は人族だ。」
フードを取り、素顔を見せる。
息を呑む3人。
「帝国にやられた魔族が人を平気だと言うなら引き受けよう。」
「お、お客様は帝国の人間ではないのでしょう?」
「ああ。それは違うな。俺は孤児だ。魔族に世話になっていた。それから、暫く旅に出ていたんだが、久し振りに魔国に来たら帝国との戦争が本格化していたらしいが、詳しいことは知らない。」
「帝国の人間なら、野営地を滅ぼしたりしないだろう。長よ、俺はお客さんを信用しても良いと思うぞ!」
「に、人間だったとは・・・反発するものが出るかもしれぬぞ?」
「俺は危害を加えてくるなら、躊躇なくやり返す。メリットとデメリットを考えろ。」
「これは流石に相談して決めなければならんだろうな・・・お客人、しばし時間を貰えるか?」
「ああ。俺はどっちでも良い。」
「その間は此処にいてくれよ。お客さん、サービスするぜ?」
「サービスって、食事はお客様が採ってきたものですけど?」
「アンタ達は俺が人間でも大丈夫なのか?」
「俺は助けてもらったんだ。恩人を無下にするかよ!」
「私も旦那の恩人だし、どう見たってお客様は悪い人に見えないわ!魔族だって悪い奴は悪い。人間も同じよ!」
「そうか・・・では、世話になる。」
それから、数日を宿の夫婦と過ごした。
何だかんだ世話をしたがる奥さんと、無理をしがちな旦那さん。
例えば、薪割りをする旦那さんが腰を痛めて、俺が代わりに薪割りしたり、
俺が自分の服を洗濯しようとすると、奥さんが奪い取って洗濯したり、
旦那さんが旅の準備をしていて、棚を壊したり、それを修理しようとしてハンマーで指を怪我して俺が代わりに直したり、
ご飯を食べようと料理を始めたら奥さんに見つかり、止められて、一緒に奥さんの料理を食べたり、
何というか、当時の俺には理解できなかった。
けど、どこかで、俺の心はこの夫婦に心を許して良いのかもしれない。と思い始めていたんだと思う。
それから、町の長は話し合いが難航しているらしく、出発の目処は立っていないという報告だけを聞き、俺は夫婦と変わらず過ごしていた。
俺が人間だとバレないように、外に出る時はフードを被り、宿にいる時はフードを外すように奥さんに言われた。
だんだんと夫婦と過ごす日常に慣れ始めた頃だった。
その日も俺は夫婦の手伝いやらをして一日を過ごしていた。
そろそろ、この間採ってきた食料も少なくなって来ていたので、狩に出かけていたんだ。
その時、町には帝国の英雄と呼ばれるものが迫っていた・・・・
まとめきれなかった為、もう1話昔話を入れます。
今回はステインが勇者と呼ばれた戦争の話ですが、魔王やヤマタノオロチとの出会いは機会を見てしっかり書きたいと思っています。
いつもお付き合いありがとうございます!




