説明とお買い物と帰宅したいんだが?
ニールと連れだって、個室のある兵士御用達の店に入る。
個室に案内され、テーブルに向かい合わせに座る。すると、ステインはメモを取り出し、さっそくと言わんばかりにステインに話しかける。
「では、さっそくですが何があったのか教えていただいてもよろしいですか?」
「ああ、手短に説明する。」
「ええ、お願いします。不都合な場合は言ってくだされば言わなくても構いませんよ。」
「すまない。手間をかける。」
ニールに施され、今回、魔水晶を使い何が行われたのか説明していく。
「まあ、そんなに難しいことをしていたわけでは無い。今回の肝は兵士側に前科のまだついていない犯人がいた事が重要だ。後は、5人組の方にある程度の魔法の心得があれば犯行が可能だ。」
「魔水晶を誤魔化すとは大胆な発想だと思いますが・・・」
「ああ、本来、魔水晶は大戦以前の通行管理ではギルドカードや身分証などで管理するくらいしかしておらず、犯罪者や、他国の患者などを素通りさせてしまうため、鑑定装置による持ち物の詳細確認と魔水晶による犯罪歴を洗い出すことで前以て王国に危険を起こすリスクを下げる為に導入、実用してきた。」
「確かに、魔水晶が出回ってからの安全管理は、それ以前とは段違いに違いますね。」
そもそも、ステインは魔水晶の製作者ではあるが、本来、別の目的で作ったのだ。今、本来の目的で使うものはいないし、本来の魔水晶の目的など教えるつもりも無い。
「今回は比較的に簡単な方法で犯罪歴を誤魔化していたんだが、まあ、一言で言うと、5人組の魔水晶の結果は全て魔水晶の担当をしていた兵士のものだったと言うだけだ。5人組の1人1人が魔水晶に触れるタイミングで自分が魔水晶に触れ、結果を誤魔化して表示させ、何事もなく犯罪者を王都に入国させようとしていた。」
「・・・横で確認記入の作業していた兵士は無関係ですか?流石に5人とも魔水晶に触れなければ気づくと思いますが?」
そう、魔水晶の犯罪歴を確認して記入している兵士もいる中、堂々と不正が行われた。
「まあ、5人が魔水晶に触れるタイミングで兵士も同時に魔水晶に触れていた。記入の兵士の死角で触れていた為気付かなかっただろうな。さらに、5人組は手のひらに魔力で無属性の魔力を意図的に流し、兵士の方からそれを上回る魔力を流して兵士側の履歴が浮き上がるように細工していた。・・・まあ、調べればわかるだろうが魔水晶の作成者としてちょっと申し訳ない。」
「本当に魔水晶の作成者だったのですね・・・」
ニールはバラキの副官としてバラキを信用しており、また知人でありバラキの接し方を見てステインも信用に足ると思っているが、まだ年若く自分より若いステインが現在、王都の安全を守るのに一役買っている魔水晶の作成者だった事実は驚きを隠せずにいる。
「そうだな。バっさん・・・バラキさんには3日後にでも魔水晶を改善して来るから警戒をしておくように伝言を頼むよ。流石に放置していて同じような不正が行われると思うと寝覚めが悪い。」
「・・・・分かりました。伝えておきます。さて、私は失礼しますが、ここは兵士の顔のきくお店で、お食事代はバラキ様から支払いが届くのでゆっくりお食事してください。今回はご協力感謝致します。」
ニールと別れ、個室で食事を楽しみ、予定より時間を取られた為、急いで必要な生活雑貨を買い揃えていく。
(最近は王都に来ていなかったからな〜ゆっくりしたいところだが、ギルドに見つかると面倒だからな。3日後に来る予定もあるし、魔水晶の改良もあるからな〜。)
肩に大きな袋を掛けながら、次々に市場を巡り買い物を手際よく済ませると、今日の本来の目的である本屋の前で考える。ゆっくり本を吟味したいが、帰ったら魔水晶の改良がある。すでに改良の方法は頭の中にできているが、3日後と言ってしまった手前、本を買い漁ってもゆっくり読めない。今日、新しい出会いを本としてしまうと読むのを我慢できるはずもない。
(魔水晶の件には制作者として責任はあるしな〜3日後まで我慢かな〜)
泣く泣く本屋を通り過ぎ、買い物を終えて早めに帰ろうと入場ゲートに向かう。
ゲートに近づき、改めて出国審査を受けようとすると、ゲートの前に1人の女性がいるのに気づいた。
(げ!!!あいつは・・・)
赤いウェーブがかった腰まである美しい髪をなびかせ、スタイルの良い体型が浮き出るようなドレス風の旅装束に身を包み、道行く人の視線を集めている。パッと見は何処ぞの貴族の姫に見えるだろう。王都では有名人である彼女は辺りを見渡しながら警戒していた。
(アブねー!!後数メートル踏み込んでたらアイツの索敵範囲に入るところだったよ・・・)
物陰に隠れるようにそっと彼女を視界に捉えながらバレないようにその場を離れようとする。
ピイイイ〜〜〜♪
と、その瞬間、どこか楽しげに聴こえる鳴き声を上げる一羽の鳥がステインの頭上にいた。流石に驚いて空を見上げるステインは緑の羽根に赤いメッシュが入った美しい鳥を見つける。思わず足を止めてしまって目を奪われてしまったステインの後ろから素早く彼の肩を抑える手が置かれる。
「・・・・・コソコソしてどうしたの?ス・テ・イ・ン?」
ギギギ、と機械のように振り返り、今声をかけてきた人物を視界に入れるステイン。
「い、いや、今日は、王都に、買い物。終わった、から、帰る。」
「へ〜〜〜」
ビクビクしながら喋るステインを訝しむように見るのは先ほどゲートの前にいた女性だった。先程鳴いてステインの居場所を教えたであろう鳥が彼女の肩にとまる。得意げにステインを見てピイ♪とひと鳴きする。鳥が若干恨めしかったが、ステインの胸中はそれどころではなかった。
「ギルドの英雄にして稀代の錬金術師、王国の勇者とまで言われた貴方が、コソコソしてどこにいくのかしら?」
「ちょ、ちょっと待て待て!!変な呼び名で呼ぶな!!!」
「だったらギルドに顔を出すと言いながら、何故勝手に帰ろうとしてるのよ!?朝一で久しぶりに通信が入ったと思ったら、バラキさんから依頼が入ったから帰るとか!ゲートの一件は聞いているけど、バラキさんからギルドに顔を出すように聞かなかったの!?だいたいステインは昔からフラフラして、なんでギルドカードの通信切ってるのよ!通信の意味がないじゃない!!!!!!他にもあんたは〜〜・・・・」
クドクドとステインに説教を始める彼女は周囲の注目を集め始め、ステインは被っていたフードをそっとつまみ、顔を隠すように俯いた。
(ああああ〜〜こうなったらコイツは周りが見えなくなるし、長いんだよ〜)
周りに充分に人が集まり注目を集め、さらに10分ほど声を荒げた女性が肩で息をし始める程の説教をして、ハッと周囲を見渡し、恥ずかしそうに説教を切り上げる。
「と、とりあえず、ギルドカードの通信だけは入れておきなさい!後、面倒でもたまには通信寄越しなさい!死んだかと思うでしょう?」
最後は若干涙声で言う彼女に流石に少し罰が悪くなり、素直に応える。
「あ、ああ、悪かった。気をつける。許してくれマイン姉。」
「お願いよ?・・・・まったく心配かけて。」
マインと呼ばれた彼女はやっと笑顔を見せると、騒動が落ち着いたらしい様子に野次馬も散り始める。
「一応、ギルドマスターには私から断っておくから今日はもう帰るのでしょう?」
「ああ、魔水晶の件は聞いてると思うが、改良がいるのは本当だしな。3日後に改めて王都に来るからそのときにでも顔を出すと伝えてくれるか?」
「はいはい、後、ウチのお父さんとお母さんも心配してるからたまには寄りなさい。だいたい日帰りでなくても王都にゆっくりしていけばいいでしょう?」
「ああ、叔父さんと叔母さんにも最近あっていなかったな。そうだな、3日後は面倒だがいろいろ顔だしとくよ。」
「面倒じゃないでしょ!まったく、この子も結局ほったらかしにしてるし。」
ピピイ〜〜♪
鳥がその通りと言わんばかりに鳴き声を上げる。
「そいつは前に預けた雛鳥か?大きくなったな。マイン姉の従魔になっているのか?」
「そうよ。まともに張り込みしたってステインは捕まらないもの。この子に見張ってもらったのよ。賢いでしょ?」
クスクスと笑いながら優しく頭を指で撫でている姿は仲良くやれているように見えて、ほっとする。
「よかったな。お前の両親は助けてやれなかったけどな・・・」
ピイ〜〜〜♪
気にするなと片方の羽を広げる。
「この子の紹介もあるし、3日後はウチに寄りなさいよ。私も帰れるようにギルドの仕事片付けておくから。」
「わかったわかった!流石にそうするよ!」
「じゃあ、気をつけて帰りなさい。気をつけるのよ?」
「もう子供じゃないんだし、大丈夫だよ。じゃあ3日後に改めてな!」
ピイピイピイ〜〜♬
マインと鳥・・・名前聞くの忘れたな〜と思いながら手を振りながらゲートに入り、出国処理を済ませると3日後は予定が詰まってしまい、2、3日王都に滞在する羽目になりそうだと溜息を吐きながら自分の住んでいる森の中へと帰って行く。
彼が帰る森は人々に『世界樹の森』と呼ばれている。その中心部は生半可に到達できるものではなく今までの歴史でもわずかに1人、王国の初代国王が到達したと言い伝えられている。中心部には世界樹が佇んでいるが外からは見えず、中心部に到達した者のみ見えるらしい。聖域と呼ばれる場所である。
人々は知らない。ある1人の男がそのような聖域に住んでいることを。さらに、彼は知らない。
今、その彼の帰りを待ち、世界樹の上から眺めている存在がいることを。
一応、主人公の身長を。
身長170センチの細身
髪はシルバーに近い白髪。
能力その他は次から出てきます。




