王都への報告とマリン
それから、翌日の朝からケルピーと2人で東の泉に行き、泉全体に浄化の結界を施しておいた。
エルマリン程の力はないが、泉の浄化くらいなら俺かケルピーがいれば大丈夫だ。
もし、泉の一部でもフェニ達が破壊したり、手を加えていたならもっと大規模の処置が必要だったけど、今回は浄化だけで充分だ。
泉から引き返すと、他の皆んなが出かける準備を終えていた。
今回は俺はフェニに乗り、マリンはシトリンに乗って行く。
俺も瞬間的に浮遊するくらいならできるが、常時飛行はやった事がない。
皆んなで空の旅と洒落込んだけど、調停者の気配とシトリンの気配のせいか空の魔獣が避けて行く光景は不思議だった。
皆んなお気付きの様に、俺達の旅で襲われる。なんて事は起こらなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
最近、来慣れてしまった王都ギルドに入る。
その道中は特に言う事はない。だって何もなかったからな!強いて言うなら、入国手続きで、ケルピーやらフェニやらハクやらシトリンを見て兵士が驚いていたくらいで、そう言えばギルドで従魔登録していなかったから、手続きが面倒だったくらいだ。
ちょっとイライラしたけど仕方ないから我慢するようにケルピーが皆んなに注意していた。
と、そんな感じでギルドに直行して、先に報告と従魔登録してしまおうと思っている。
中に入って直ぐに、絡まれました。
何故?
「お前か?この間ウチの子分を可愛がってくれたのは?」
「そ、そうです!コイツですよ兄貴!」
「ヒョロイな!こんな奴が本当に強いのか?」
ゾロゾロと人が20人くらい集まってきたが、何かあるのか?
「あ!ステイン!ゴリラさん!」
マリンが叫ぶ。ゴリラ?なんだそりゃ?
え?前にぶっ飛ばした?ああ!思い出した!ゴリラね、ゴリラ。今度はボス付きか!
「ふむ、ゴリラの群れか。ポイズン・ゴリラのボスだからアイツはキング・ゴリラでいいか!」
「ステイン兄ちゃん!ゴリラって街中に居るんだね!」
「確かにあれは妾から見ても人間とは思えぬ。しかし、ゴリラとは・・・プフ!」
「フェニ笑っておるぞ?シトリンは目に毒だからマリン様をお下げしろ。」
「ゴリラさん達とは、遊びませんか?」
「遊ばない!ゴリラさんって五月蝿いんだよ?」
かなり自由な皆んなを見てゴリラ達もギルド内に居た人達もあんぐりと口を開けている。
埃が入るから口閉じた方が良いよ?
「まーーーーーーた、お前達か!!ステイン!!」
「おっす!マスター。報告に来たらゴリラに絡まれたんだが、ぶっ飛ばしていいか?」
「ステイン兄ちゃん!どっちが遠くに飛ばせるか競争しようよ!」
「ハク。殺してはいけませんよ?殺さずに上手く飛ばすのです。」
「これこれ、皆んな競争などせず、普通に飛ばしなさい!」
「お兄様、注意するところが間違っている気がするのです?」
「ケルピーも飛ばしたいんじゃない?」
「飛ばすな!!いいか?飛ばすなよ!」
俺達のセリフに慌てるマスターが周りにいた冒険者やら、ギルド職員に指示を飛ばして、ゴリラ達を捕まえ始めた。
捕まえるくらいなら飛ばした方が早い気がするけどな。
「クソ!!テメエだけは1度殴らねえと気がすまねえ!!!」
マスター達の包囲を掻い潜って、ポイズン・ゴリラがせまってくる。
同時に、フェニ、ハク、ケルピーと俺も動き出す。
「オラ!!」
「えい!!」
「ふん!!」
「はあ!!」
4人が同時にカウンターを決める。
「ゴッはああああああ・・・・!!!!!???」
ドンッ!!ヒュー、ガッシャン!!ゴロゴロ・・・・ドゴン!!!
「「「「「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」」」」」
シーーンと静まり返るギルド内。そこにシトリンの叫びが響いた。
「はっ!!私、出遅れたのです!!」
「お前らは手を出すなよ・・・頼むから、建物を壊すな・・・」
「仕方ないだろ?修理費は出すよ。王国貨幣10000枚もあれば足りるか?」
「「「「「城が建つよ!!!???」」」」」
何故かその場にいた人達の突っ込みを受けた。何故だ?
それからマスターにまたまた個室に通され何があったか?何が起こったのか?を説明していき、フェニとハクの話や魔人の影の話などを聞いて頭を抱えていた。
「ぐおおおおお!!何だその規格外の出来事の数々は!しかも家族が増えたら調停者様が勢揃いとは・・・」
「皆んな賑やかで楽しいぞ?今度聖域まで来るか?」
「行けるか!普通の人間は聖域にたどり着けんのだ!!」
「ケルピー兄ちゃん、聖域って行くの難しいかな?」
「ふむ、人間からしたらそうかもしれぬ。私達からすれば普通に行けるが、他のものなら聖域の結界を通ることさえ難しかろう。」
「妾達が連れて行っても結界に弾かれるでしょうね。」
「え?そうなの?俺は普通に入れたけど?」
「ステイン殿は神々も認めておられる存在。しかし、それ以外の者は神に認められぬ限り入れぬよ。私達は調停者として入れるし、シトリンはステイン殿の守護獣だから入れるのだろう。マリン様は神だから素通りだ。」
「いい加減、自分の規格外さを認めろ。ステイン、家族が増えたというなら自分の事もしっかりせねばならぬぞ?」
「おおう、マスターの経験からか?だったら聞いておかないとな。家族を傷つける奴はぶっ飛ばすって決めたし!」
「それは家族を持つ者なら当然の感情だが、ステインは周りから同じ様に思われている自覚が足りん。さっきのゴロツキ冒険者もそうだ。お前に攻撃してきたから調停者様方も反撃したのだぞ?」
「・・・そうなのか?」
「うむ、当然だ。我等の長なのだぞ?」
「当たり前でしょ!ステイン兄ちゃんに攻撃するなんて許せないよ!」
「妾の兄上に手を出す不貞の輩は排除いたします!」
「私は出遅れてしまいましたが、守護獣としても当然なのです!」
「マリンもステインが痛いのヤダ!」
「ほらな?家族を持つと大変だが、初めて学ぶ事も増えるのだ。自覚と覚悟を少しづつでもして行け!後悔しないようにな。」
「わかった。マスターありがとう。」
それから今後の動きとして、王様に知らせる事は確定らしい。
まあ事態が事態なんで、王国も備えはいるだろう。
魔国にも今回の共同依頼主として早急に伝えるらしい。
あっちは魔王が強いからおいそれとは倒れないだろうけど、やはり魔人は想像を超えている。
備えておいて損はないだろう。
それから、今後、俺はフリーパスでこの個室に来るように言われた。
目立ちすぎたらしい。
この間、威圧をしたから職員も一部の人が怖がってしまっているらしく、来たら個室に入り、呼び鈴を押すとマスターやマイン等の俺を平気な人物が応対する決まりになったらしい。
「それから、お前の通り名が『子連れ殲滅部隊』になったぞ!ブフッ!!」
「よし、皆んなギルド潰そう。」
「え?いいの!?」
「兄上、焼いてはいけませぬか?」
「お父様、私も今度は頑張るのです!」
「これこれ!人殺しはするでないぞ!?」
「ケルピー、また注意間違ってる気がするの。」
「ごめんなさい!!!」
その後、必死に謝るマスターに通り名を消さなかったらギルドごと吹っ飛ばす!と言いギルドを後にした。
ギルドを出て、歩いていると追いかけて来る人影があった。
「ステイン!ちょっと待って!!」
「ん?マインか?どうした?」
「ふむ、この間の娘か。」
「おお、お父様のお知り合いですね。」
「誰〜〜?ステイン兄ちゃんの友達?」
「兄上に近ずく女子ですか・・・相応しくないなら妾が許しませぬ。」
「おお!ええと、マインお姉さんだ!」
この間ぶりだが、マインが追いかけてきた。どうしたんだろう?
赤い髪を揺らしながら呼吸を整えているマインを見つめる。
呼吸が整うまで待っていると、
「はあ、はあ・・・よし!ステイン、この間の約束を果たそうと思って休み取ったから今から大丈夫かな?」
「約束?」
「そうよ!マインちゃんの服選び!!楽しみにしてたんだから!!」
「ああ!!忘れてた。」
「お洋服!私のお洋服買ってくれるの!?」
「おお、それは良い。言われてみればマリン様もお洒落をした方が良かろう!」
「お買い物か〜、僕は興味ないな〜食べ物なら別だけど。」
「マリン様も女子ですからね。女はお洒落するものですよ?」
「マリン、可愛いくなる?なる?」
意外と興味深々らしい。
俺には分からないが、今度からこういう事も気にかけてやろう。
頼んでおいて良かった!
「もう!ステインは駄目ね!女の子は可愛い物を身に付けたいものよ!今日は私がしっかり選んであげる!」
「わ〜〜い!行く行く〜〜〜!!」
「というか、マリンちゃん、大きくなってない?話し方も随分流暢になったような?」
「ああ、マリンは神の子だから人間と成長の仕方が違うみたいなんだ。こないだよりまた成長したから今はもう5歳くらいかな?」
そう、マリンは身長は少ししか伸びていないように見えるが、成長してしまっていて、今は前に着せていた服が合わなくなっていた。
その為、今は薄い紺色のシャツに半ズボンという格好をしていた。
うん、言われてみたら女の子らしくない!いかん!早急に服を選ばねば!
「ママママ、マイン!マリンを連れて早く服を選んできてくれ!!こんな格好をさせていたなんて大失態だ!!幾ら使っても構わない!!王国貨幣50000枚で足りるか!?」
「多すぎよ!!それに、成長が早いならまた直ぐに買わないとサイズが合わないでしょ?今回は4、5着位にしたら?足りないなら買えばいいし替えも取り敢えずは足りるでしょう?」
「任せる!任せるから、早く買ってきてくれ!!」
ドサッとお財布を渡して、シトリンとマリンとフェニを行かせる。女の子同士でゆっくりするらしい。
俺達、男チームは喫茶店で待つことにした。待ち合わせも喫茶店でゆっくりすることになった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【マリンサイド】
ステインと別れてマインお姉さんとシトちゃんとフェニちゃんと4人で買い物に行く。
服を買ってくれるみたい。
私も可愛い服着たい!ステイン、可愛いって言ってくれるかな?ケルピーは?ハクくんは?
ワクワクしながら歩いているとマインお姉さんがクスッと笑う。
なんだろう?と思っていると
「ごめんなさい。マリンちゃんがコロコロ表情変わるから可愛くって!神様の子って言っても普通の子供みたいね?」
「マリン様はまだ成長途中ゆえ、力もついておられぬ。精神もまだ女神としての自覚も芽生えていない為、普通の子供と変わりませぬよ。」
「私、マリンを守るのです!普通の子供だと危ない事が沢山ありました!」
「そうなの?ステインはその辺り話してくれないから分からなくて、お洋服選びながら皆んなの話を聞かせてくれる?」
「いいよ!えっとね〜・・・」
それから色々話した。お洋服屋さんに着いても話した。シトちゃんがステインの自慢をしたり、フェニちゃんがステインを褒めたりしてた!
私はお洋服を試着?しながらずっと喋ってた!
ステインと初めて会った時のこと、王都に来た時の事、ケルピーとシトちゃんの事、ゴリラさんとかギルドの依頼の事、女神のお姉ちゃんの事、変な騎士さんとか真面目な騎士さんとか、後、火竜の山とか!
いっぱいいっぱい話せる内容があったの!
ステインと一緒に暮らし始めて大変な事もあったけど、楽しい事はもっとあったの!
ヤマタノオロチさんとのお別れは悲しかったけど、ケルピー達はステインとヤマタノオロチさんは楽しそうだった。と言ってたの!
ステインといると悲しい事もなんとかしてくれる。
それにお食事とか、お風呂とか、お家を作ったりとか、今日のお買い物とか色々お世話してくれる。
私達は知ってるよ?ステインは面倒な事嫌いだって言うけど、家族の為なら頑張っちゃうんだ〜!
だから、私達もステインの為に頑張るし、ステインの敵なら皆んなの敵なの!
けど、マインお姉さんみたいにステインのお友達なら皆んなのお友達!
マリンとマインで名前が似てるからお姉さんの事、私も好きなんだ〜!
今も服を見てコレかな?アレかな?って選んでくれている。
「マリンちゃんの青い髪はとても綺麗だから、目立つようにオレンジ系の薄い色とかピンクとかが良いと思うけど、デザインがね〜〜」
「うん!マリンは何でも可愛いのです!さすが私達の妹なのです!」
「ええ、マリン様はとても美しくなられるのです。今から見た目に気を使うように教えねばなりません!」
「そうなの?マリンはよく分からないけど、ステインとお出掛けしやすい服が良いな〜!」
「そうよね、だったらズボン系になるけどスカートも1着くらい買いましょう。ワンピースとか絶対似合うし!」
ワイワイと服を選び、気付いたら凄く時間が経っていたの!
ステイン達が待ってる!と思って皆んなで喫茶店?って処に急いだの!!
そして、喫茶店に行ったら、待ってるはずのステイン達がいたんだけど、何故か騎士さん達に囲まれていたの。どういう事?
日常系が長引いてすみません。
次回はドタバタします!




