増える家族の紹介と皆んなの立ち位置
前回書き忘れていましたが、今回は結構のんびりした章になります。
バトルは入りますが、そこまで激しいものは入らないと思います。
書いている内に展開を変えてしまう場合はどうなるかわかりませんが、お付き合いよろしくお願いします。
フェニックスと白虎の歓迎会する為に、料理と飾り付けを行う。
料理は俺と、ケルピーが手伝って行い。(ケーキなんかで混ぜる作業を風魔法でお願いした。刻むのもスパスパやってた!)
飾り付けをマリンとシトリンにやってもらっていたら、いつのまにかフェニックスと白虎も加わっていた。
主役がやっていいのか疑問だったが、楽しそうだったので放っておいた。
肉料理にスープ、パスタに魚は川魚の塩焼き。後、特大のケーキを用意して、外のテーブルに並べる。
ジュースを用意したら、皆んな席に着いた。
「良し!それじゃあフェニックスと白虎に自己紹介でもしてもらうか?」
「うむ、それが良かろう。」
「お願いしますです!」
「じゃあ、鳥さんからね!」
ステイン達が施すと、フェニックスが羽根を広げながら言葉を話す。調停者なだけあって言語化の能力は2人とも持っていたみたいだ。
「お初にお目にかかります。妾は最高神様の調停者にして、最高神様と同じく再生を司るフェニックスで御座います。この度は助けて頂き感謝致します。」
「ええと、僕は創造神様の調停者で、そのまま創造を司る調停者の白虎だよ!よろしくね!」
ふむ、フェニックスはかなり大人びた口調で、白虎は元気な男の子の様な口調だな。
さっきケルピーから聞いた話だと、2人共ケルピーと同じように人間に何かされた事は覚えているらしいが、その前後の記憶は曖昧らしい。
また、俺がエルアリアと話している間に何があったかの説明はケルピーがしてくれていた。
「お、お父様、お父様!?お二人共、も、もしかして、い、一緒に暮らすのですか!?」
「ん?俺もそう思ってたけど、結局は2人がどうしたいのか次第じゃないか?」
「ふむ、それならば、フェニックス殿と白虎殿、良ければ一緒に行動せぬか?調停者とて今回のような事態が起きたのだ。なるべくまとまった方が良いと思う。」
「そうですね・・・妾は構いませぬ。いえ、むしろお願いしたく思いますわ。」
「僕も!いっつも1人で寂しかったんだ〜!お願いします!」
どうやら2人共一緒に暮らすらしい。ならば、やはり家は新しく建てよう!どんな部屋がいいかな〜。作りながら調整していけばいいかな?
とか考えていたら、シトリンとマリンが嬉しそうに声を上げた。
「おお〜!新しい家族だね!?シトちゃん家族が増えました!!」
「はい!嬉しいのです!お姉様とお兄様が増えました!!」
「おやおや?妾は姉ですか?」
「ん?僕、お兄ちゃん?」
などと話していた。いや、ケルピーも今や家族なんだが、調停者ですよ?神の使いですよ?大丈夫ですかね?
「うむ、私達はステイン殿を筆頭に、私が次男、シトリンが姉、マリン様が妹になっておるが、フェニックス殿は長姉で白虎殿は三男であろうか?」
「あらあら!妹が2人も出来るのですか?しかも弟までかしら?」
「おお〜!家族だね!皆んな一緒ならいいよ〜!」
なんか大丈夫そうです。ケルピーが率先してまとめに入りましたけど、俺が長男で良いんですか?貴方達、一応神様の使いですよ?歳も俺より上でしょうに!
「では、私達は、ステイン殿「長男」・私ことケルピー「次男」・フェニックス殿「長姉」・白虎殿「三男」・シトリン「次女」・マリン様「三女」で良いだろうか?」
「妾は構いません。皆んな、よろしくお願いしますね?」
「僕も大丈夫〜!楽しくなってきたね〜!!」
「ではでは、お姉様とお兄様ですね!・・・は!お兄様が2人では呼び名がややこしいのです!?」
「わ〜い!じゃあじゃあ、フェニちゃんと白くんで良い?」
「良いですよ。マリン様よろしくお願いします♪」
「僕はビャクか〜!シロは犬っぽいからね。けど、ビャクか〜なんか語呂が良くないよね?」
「ふむ、私はケルピーのままだから分からぬが、ステイン殿はどう思う?」
「お、俺か?んん〜〜・・・それなら単純にハクで良くないか?語呂的にも呼びやすいし。」
「おお!!良いね!僕はハクにする〜」
「では、フェニお姉様とハクお兄様です!お願いしますです!」
「フェニちゃんとハクくんだね〜!」
「ふふふ。妾、姉として妹達をお守りいたしますわ!!」
「僕も〜!とりあえず、家族に攻撃したら噛んで良いよね?」
おおう!?なんだか、とんでもない家族になってないか?いや、俺も楽しいんだけど、何というか、誰が喧嘩売ってくるの?魔人以外なら瞬殺しちゃわない?
と、色々はしゃぎ、皆んなで固まって寝て、次の日からはフェニックスのフェニと白虎のハクの調子を見ながら過ごしていた。
一応、魔人の影響はないみたいだし、今は小型化してるけど、元のサイズにも戻れたから大丈夫そうだ。
家族になったからには2人も守ってやらないとな!
ちなみに、ギルドカードで通信を入れて、無事に火竜の山から帰っている事は伝えておいた。
野暮用があるから1週間後に行くと伝えてある。
今回は依頼じゃないから必要ないかもしれないが、念の為報告くらいしてやる。
そして、俺は空いた時間は新しい家作りをして、皆んなが寝静まってから『聖気』の練習をしている。
これが難しくてなかなか掴めない。
一度でも見ていれば何となく存在が掴めるのだが、いかんせん初めて聞く力で見たことがない。
一先ず、自分の身体の中に意識を集中させ、魔力や、気功と違う力が眠っていないかを瞑想しながら探している。
それが全く見つからず、アプローチ方法を考え直したりしながら過ごしていた。
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明日には王都に向かおうか。という日に、問題が起きた。
「兄上。妾が乗せて飛んだ方が早いと思うのですが?」
「フェニお姉様!私も皆んなを乗せて走りたいのです!」
「僕も走りたいな〜!」
「私はどちらでも良いが、マリン様はいかがですか?」
「私はステインと一緒がいい!」
「・・・・・」
王都までの移動手段で揉め始めた!
どっちでも良いといえば良いのだが、なるべく皆んなの意向に沿う形にはしたいよな〜。
しかも、何故皆んな俺に聞くの?長男だから?長男って大変なんですね・・・
「では、どうです?ここはひとつ勝負で決めるというのは?」
「「「「勝負????」」」」
俺が考え込んでいたら、フェニが勝負とか言い出した。数日だが一緒に暮らして、面倒見の良い、しっかり者のイメージが付いていたフェニだが案外過激な一面も持っていたのか?
「私、勝負するのです!」
「僕も!負けないよ!」
ハクとシトリンは何時も元気いっぱいで、自由に駆け回っているイメージだ。ハクは自由奔放ながら、周りをしっかり見ているし、シトリンとマリンの面倒をよく見ている。シトリンは幼い感じが抜けないが素直で家族が大好きな良い子だ。
「ふむ、怪我をするような勝負でなければ良いのではないか?」
ケルピーはいつも中間の位置に立って兄弟姉妹の仲裁や中継ぎ的な役割をしている。本当に普段は温厚なのだが、2日前に俺が作っていた家をハクとシトリンとマリンが誤って破壊した時なんかは全員正座させて説教していた。1番大人であり常識人の気がする。
「私、皆んな応援するね!」
マリンは火竜の山以来、また少し成長して、間延びした話し方が減ったけど、シトリン同様まだまだ幼い。派手なことが好きで、俺やケルピー、フェニやハク、シトリンといった面々で組手をしていると手を振り上げながら観戦している。マリンも家族想いだが、寂しがりで誰かと一緒に行動したがる。末っ子らしい甘えん坊な面も持っている。
「では、勝負は今日の晩御飯の素材集めで大物を捉えた者の勝ち。というのはどうでしょう?」
「ご飯!わかった!僕、大っきいの持ってくるね!」
「私、今日はお魚が食べたいです!」
お魚とな?別に構わないけど、皆んな取り過ぎないようにね?保管も面倒だから!
「では、皆、1匹ずつ取ってくるのだ。大物なら3匹もいれば充分であろう?無益な殺生はよろしくないぞ?」
と、ケルピーが注意してくれた!やっぱりケルピーが長男で良くないか?ダメ?
「ステイン!今日も美味しいご飯作ってね!!じゃあ、皆んな、よ〜〜〜〜〜い、ドン!!!」
おおう?マリンが掛け声をかけるのか!?皆んなが一斉に飛び出して行った。
俺とケルピーとマリンは居残って家作りや食事の準備をしていた。
粗方作業を終えると、ふと思い出し、自分の作業部屋に行く。目的の物を見つけると、複製していく。
目的の物と同じ物を3つ作ると、日が暮れかけていた。
ズズズン!!!
重い物が置かれる音が外から聞こえた。帰って来たのかと思い、外に出る。
「これは、また大物を取って来たな!!」
俺の目の前にいたのは、全長30メートル位の巨大魚だった。
これ、確か聖域の森の外れにある泉の主じゃないか?
気のせいと思いたかったが、フェニ達の言葉で裏切られる。
「妾が空から見ていたら、東の泉の上に出た時にいきなり飛びかかってきたのよ。思わず迎撃してしまいましたわ!」
「僕はフェニ姉の後ついて行ってたら出て来たからビックリしたよ!で、つい倒しちゃった!」
「私もなのです!フェニお姉様が危ないと思って攻撃したら、フェニお姉様とハクお兄様も攻撃してやっつけたのです!」
「ケルピーさん、あれ、東の泉の主さんです。」
「全く、此奴らは・・・!!」
「大っきいね〜〜〜!」
大物を捕まえて満足そうな3人にケルピーが説教をしました。
理由があって、こういう主と呼ばれる者はその場所の管理者であり、土地主が多い。泉みたいな場所だと、その泉の浄化や、生態系の管理などを行うものが多く。人間では手に負えない化け物みたいな大きさの生物がなる事が多い。で、代替わりで主は巡るのだが、今回みたいな狩をした場合は、代替わり出来ずにいる。
すると、下手をしたら泉が汚れ、腐敗してしまう恐れがある。俺が前、東の泉の主を狩った時は代替わりの準備をしてやってから狩った。
それを3人は飛び出した瞬間に攻撃、捕獲してしまったのだ。
下手をしたら環境破壊である。
「シトリンはともかく、フェニとハクは知っておろうが!調停者として、しっかり記憶にあろう!準備もせず狩る奴があるか!!」
「す、すみませぬ。わ、妾とした事が、面目次第も御座いません・・・」
「ぼ、僕も、ちょっとはしゃぎ過ぎた。ごめんなさい。」
「わ、私も申し訳なかったのです。」
ケルピーに説教されている3人を横目に、明日、王都に行く前に泉の様子を見に行くことになった。
1日くらいなら問題ないが、処理をしておかないと今後、美味しい魚が取れなくなるしな〜〜〜!
ガミガミと説教を続けるケルピーを横目に、マリンを連れ、魚を捌き料理を進める。
「ステイン。何作る?」
「そうだな〜。大きいから刺身と天ぷらと唐揚げとお吸い物は確実だな。煮込むには時間が足りないから、後は照り焼きと塩焼きでいいかな?」
「見てていい?」
「いいけど、包丁は危ないから近づきすぎるなよ?」
「はい。・・・ケルピー、怒ると怖いし、長いもんね。」
「良い子にしてたら怒られないけどな?それに、ケルピーは皆んなが嫌いで怒るわけじゃないからな?」
「うん!怒ると怖いけど、いつもは優しいお兄ちゃんだもんね!」
「そうだな。俺より兄らしいよな〜」
「ダメだよ!ステインはステインだよ?皆んなのお兄ちゃんなんだから!!」
マリンが言う。
俺にはやっぱりケルピーが長男に思える。
この間まで家族というものに触れていなかった俺は今一長男の実感が湧かない。
家族として皆んなが大切だとは思っているけど、その辺りが曖昧なのだ。
ボーっと料理を進めながら考え込んでいると、マリンが頬を膨らませていた。
「もう!ステインはお兄ちゃんなの!ちょっと待ってて!!」
マリンがケルピー達の方に行き、何事か話している。
料理の仕込みを終え、吸い物や唐揚げ、天ぷらと並べていると、皆んながドタバタと駆け寄って来た。
「おう。ご飯出来たぞ〜一杯食べてくれよ?」
「わ〜〜〜!美味しそう!・・・じゃ、無くてステイン兄ちゃん!!マリンから聞いたよ?」
「うむ、私が兄の方が良いとか考えておるらしいな?」
「兄上は存外自覚が足りぬ。数日過ごした妾でもわかるぞ?」
「お父様!お父様はお父様なのですよ!?」
「皆んなステインにもっと言って〜!」
などなど言われる。
全然何が言いたいかわからない。
取り敢えず聴きたい事があった。
「取り敢えず、3人で取って来たなら、勝負はどうなったんだ?」
「「「あ!!!???」」」
「これは引き分けだろうな。」
「しょうがないよね。3人で一緒に持って来ちゃうし。」
「くっ!妾とした事が、この様な・・・!!」
「あ〜あ!楽しくって忘れちゃってた。」
「私もお姉様やお兄様と狩に行けて嬉しくて忘れていたのです!」
思わず吹き出す俺とケルピー。つられて皆んな笑い始める。
こういう空気が最近増えた。そして、俺はこういう空気が好きだったりする。
なんとなく、こんな感じで勝負がつかない気がしていた俺は先程複製しておいた物を取り出し、ケルピーとハク、シトリンの前に置く。
「そんな事だと思ってさっき作っておいた。オリジナル魔導具、【天翔る翅】だ。そいつをつければ、王都位までなら空を駆けて走れる様になる。」
「なんと!?ステイン殿、この様なものまで造れるのか!?」
「おお!ステイン兄ちゃん、創造の力も持ってるの!?」
「おお!お父様!ありがとうございます!」
「わ、妾は仲間外れ?」
「フェニは飛べるからしょうがないだろう?今度何か造るから何がいいか考えといてくれ。」
「ステイン!それなら家族の印みたいなのが良い!皆んなで付けようよ!」
「ああ、いいなそれ!腕輪でも作るか!皆んなで考えてデザインしよう!」
と盛り上がっていた。魔導具もケルピー達は大事そうに足に着けてくれている。
喧嘩や言い合いをするより皆んな笑っている方が良いよな!と思っていたら、皆んなが此方を見たいた。
「な、なんだ?」
「ふむ、やはり長男はステイン殿であろうな。」
「妾もそう思います。兄上が1番かと。」
「僕も!ステイン兄ちゃんが兄ちゃんでいいと思う!」
「私はずっと妹です!」
「マリンもステインがお兄ちゃんがいいな〜!」
「な、なんだよ皆んなして?」
皆んながシミジミ言ってくる。俺は訳がわからない。
1人でオロオロしていると、ケルピーが代表して伝えてくる。
「ステイン殿、私達を家族と言ってくれたのはステイン殿だ。それに私達皆んなを助けたのもステイン殿だ。わかるか?私達はステイン殿だけなのだ。」
「そうですよ兄上。兄上だけです。妾達皆んなを驚かせたり、喜ばせたり、守ってくれるのは。」
「そうそう!ステイン兄ちゃんが1番強いじゃん!」
「はい!それに1番私達の為に頑張っているのです!」
「そうだよ!お家作ったり、料理をしたり、それに皆んなが落ち込まない様に魔導具作ったり!」
「いや、それは俺しか出来ないからで・・・」
「「「「「そうだよ!!!!!」」」」」
皆んなが一斉に言った。ちょっとビックリしてしまった!なんだ?
「ステイン殿しか出来ぬ事だからステイン殿が兄なのだよ。」
「兄上以上の者は此処に居ません。」
「ステイン兄ちゃん以外の人なら僕此処に居ないよ?」
「いいのです!わからなくても・・・」
「うん!!ステインと同じように私達もステインを家族と思っているの!それだけでいいの!!」
「いいのか?それで?」
「「「「「良い!!!!!」」」」」
力強く言われてしまった。
まだまだ家族として学ぶべき事は多いと思う。
皆んな言う程長い付き合いじゃないし、好みや考えも違う。
けど、
それも含めて家族と思い会えているのなら、もう暫く、このまま皆んなで居れたらいいな。
そして、皆んなには言わなかったけど、
その時間は無駄にしない様に笑ってすごそうと心に誓った。




