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後処理と別れ

皆んなの怪我の治療をステインがしていく間にエルマリンはフェニックスと白虎の浄化を済ませていく。

ケルピーや、シトリンの時よりも魔人の影響は強く受けていたが、何とか浄化できた。

ふらつくようにエルマリンが膝を折る。それをステインが支えた。


「大丈夫か!?」

「は、はい。まだまだ、私も力を取り戻せていないみたいですね・・・」

「エルマリン様。無理をなさらぬように。」

「マリン?エル?どっちも無理したらダメなのです!」

「ケルピー、シトリン。ありがとう。ステイン・・・」

「どうした?」

「私はまた小さな私に戻ります。今回はマリンの強い気持ちが私を呼び覚ましました。けど、今のマリンではまだ、完全なる私にはなれないでしょう。苦労をかけますが、マリンをお願いしますね?」

「マリンもエルマリンも家族だからな。任せろ。」

「私も、微力ながら協力致します。」

「私ももっと強くなってマリンを守るのです!」

「ふふふ、皆んなお願いしましたよ・・・」


パアッとエルマリンが光に包まれると、小さなマリンがステインの腕の中にいた。


「すぴ〜すぴ〜〜」

「寝てるな。」

「うむ、今回はマリン様に助けられてしまったな。」

「ありがとうございます。マリン。」


ステイン達はマリンの寝顔を見ながらマリンを労っていた。

ステインはシトリンにマリンを任せると、ケルピーと一緒にヤマタノオロチの方へ近ずく。

ヤマタノオロチは力の殆どを火山の噴火を抑えるために使い尽くし、今にも倒れそうになっていた。


「ステイン・・・」

「ヤマタさん・・・」


直感でステインはヤマタノオロチと別れが近い事を感じ取っていた。ケルピーも感じているのか黙っている。火竜は心配そうにヤマタノオロチを見ていた。


「もう、我も限界のようだ・・・」

「済まない。俺がもっと早く来ていれば・・・」

「いや、どちらにせよ難しかったのだ。ステインに結界を張ってもらおうと考えていたが、それも一時しのぎにしかなるまい。」

「・・・強がりをいってtもしょうがないから言うが、確かにこの規模の結界は張れても長くは持たなかっただろうな。それに、魔人の影響で活発化しているというなら、魔人の影響を受けた俺が手を出すと余計に悪化する恐れさえある。」

「その通りだ。それに、我が抑えていたが、此処を抑え続けると別の場所に影響が及ぶ可能性があったのだ。どちらにせよ手がなくなっていたのだよ。」

「魔人か・・・ヤマタさん、魔人は強いか?」

「強いぞ。我よりも確実にな。魔人1人で神々を相手にしていたのだぞ?」

「だよな。今の俺じゃ手も足も出ないんだろうな。」

「ステインは十分強くなっておる。我と喧嘩した時よりずっとな。」

「あの時は楽しかったよなぁ。俺、初めてぶっ飛ばされたしな!」

「その後、同じくぶっ飛ばされたと思うが?」

「だいたい、あの時俺は子供だったのに手加減しなかっただろう?」

「手加減など出来るか!その子供が霊峰を登っていきなり殴り掛かってきたのだぞ!!」

「いやいや、そりゃ魔獣だと思ってたし、攻撃するだろう?」

「だとしても、我の呼びかけを無視して殴り掛かる奴があるか!!」

「だって、霊峰には古代竜も居たから話すドラゴンも珍しくなかったし。」



だんだんと昔話に花を咲かせるステインとヤマタノオロチ。気を許し合っている2人の雰囲気に周りの者は黙って見つめていた。

笑い合う2人が別れを惜しむように昔話、そして、会っていなかった間の事を話していた。

まるで今から訪れる別れなど無いように。

本当にのんびりした空気を2人が出していた。


「でさ〜、いきなり最高神がきてな?それから〜・・・」

「ほうほう。また、何とも周りの者が苦労してそうだな・・・」


ケラケラと笑い声をあげながら談笑する2人。

だが、別れの時がやってくる。

無慈悲に、残酷に時は流れる。

ヤマタノオロチの身体から光が立ち上りはじめた。


「・・・・」

「・・・時間か。」


沈黙する2人。

時間と共に光が漏れるヤマタノオロチを周りの皆んなが固唾を呑んで見つめている。


「ステインよ。この火山の爆発は我が完全に抑えて往く。我の命を代償に魔人の気を天上に連れて行く。心配はいらぬ。」

「心配なんかして無いさ。ヤマタさんなら楽勝だろうが。」

「無論だ。我が好きな大地を魔人如きの影響で破壊させてなるものか!」

「・・・ヤマタさん、約束果たせなかったな。」

「約束?」

「ヤマタさんといつか旅をしようって言っただろう?ヤマタさんに乗って、空の旅を、さ。」

「おお!忘れておった!・・・残念だな。それは楽しかっただろうに・・・」


ヤマタノオロチの翼が消えていく。


「ステインよ。我の唯一の人間の友よ。」

「ヤマタノオロチ。俺の親友。」


ヤマタノオロチの身体が消えていく。


「「また、会おう!!」」


そして、ヤマタノオロチは天に昇っていった。

ステインは暫くジッと空を見つめていた。

ケルピー達は黙ってステインの背中を見守り続けていたのだった。






「よし!待たせたな!!皆んな、帰ろうか?」

「うむ、フェニックスと白虎はどうする?」

「マリンは私が乗せて行くのです!」

「すぴ〜〜〜〜」

「グギャア・・・」


暫く時間が経ってから、ステインが笑顔で言う。

ケルピーとシトリンが答え、マリンは寝ていた。

火竜が悲しそうに声を上げる。


「火竜、お前はダンジョンボスだろう?此処を守り切るんだ。ヤマタノオロチの眷属なら、ヤマタさんの墓標、ヤマタさんが守りきった此処を守り切れ!何かあったら今度は間に合う様に駆けつけるさ。」

「ギャ!ギャフギャフ!!」

「お父様!火竜さんが分かった!と言っています!」

「うむ、火竜も強くなるのだぞ。」

「ギャウ!!」


飛び去る火竜。それを見送り、フェニックスと白虎に近ずく。


「えらい小さくなってないか?」

「ふむ、恐らくエルマリン様だろうな。地上に残る調停者は私と此奴らだけだ。聖域に連れ帰れる様にして下さったのだろう。」

「お父様!私がマリンと一緒に乗せますか?」

「良い、フェニックスは私が運ぼう。」

「じゃあ、この猫は俺が連れて行くか。シトリンはマリンを起こさない様にしてくれ。」

「はい!お任せです!」


ステイン達はゆっくりとその場を後にする。


「帰りは余計な戦闘は無しだ!というか、此処に来るまでに破壊し過ぎたから上層は平和だし、そこから下は邪魔する奴は・・・」

「「ぶっ飛ばす(だな)(です)!!」」


ステインの言葉を遮るケルピーとシトリン。キョトンとするステイン。

皆んなで顔を合わせて笑い合う。


「ハハハ!!上等!!だったら競争するか?聖域に1番乗りした奴は今日は取って置きのデザート出してやるぞ?」

「良かろう。馬の聖獣である私が一番乗りだ!!」

「わわわ!!私もデザート欲しいのです!」

「ししし!じゃあ、行くぞ!よ〜〜〜い、ドン!!」


ダッ!!!と走り出すステイン達。


笑い合いながら走るステイン達。


それを空からヤマタノオロチが見ている気がした。



次回から、新章に入ります!

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