表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/67

邪魔する奴は!

別れた時よりボロボロの服装になったステインが歩いてくる。

ケルピーは眩しそうにステインを見つめ、

シトリンは喜びを抑えきれないように尻尾を振り回し、

ヤマタノオロチは笑い声を上げる。


「遅くなった。気持ち悪い奴等がウジャウジャいてな!アメーバ・スライムみたいにしつこかったからぶっ飛ばしてきた!!」


ニカッと笑って言うステイン。ボロボロになった服が軽い口調程、楽に此処まで来れた訳ではない事を物語っていた。


「ステイン・・・友よ。待ちわびたぞ!」

「ヤマタさん。すまなかったな。スゲーキツそうだけど、もう暫く持ちこたえられるかな?」

「ガハハハ!!勿論だ!!我と出会った時よりステインも強くなったのだろうな?」

「当たり前だろ?ちょっと休みながら見てろよ!」


戦場であるこの場で談笑するステインとヤマタノオロチ。先程までの限界に近い疲弊感も無く、余裕の現れなのか、他から見ると無防備に見えた。


「ステイン殿・・・」

「うう・・・お、お父様〜〜!!」

「グギャ・・・」


ケルピーが呼びかけ、シトリンが擦り寄り、火竜がステインを見つめている。ステインも皆んなを見渡す。


「ステイン・・・フェニックスと白虎を助けてくれますか?」


エルマリンが泣きそうな顔でステインを見つめる。ステインは力強く頷き、振り返る。


「ああ!!任せとけ!エルマリンは浄化の準備だけしとけば良い。」


頼もしい背中を見送る家族達。ステインの表情は見えなくなる。

ボロボロの服になっても、頼もしい背中に皆んなが信頼を込めて見惚れる。


「フェニックスと白虎にも魔人の核が埋まっています。ケルピー達と同じく丁度心臓の位置です!!」


エルマリンが叫ぶと、影とフェニックスが立ち上がってきた。


「うぐ!まさか、影の私を掴むとは!!幻影を通り越して本体にダメージが及ぶなんて・・・」

「グワアアアアッ!!」


ステインを睨みつけるように相対する。フェニックスが叩きつけられた怒りを露わにしていた。だが、それよりも強く、静かに、怒りを込めてステインが語りかける。


「本体がいないからって油断しすぎじゃないか?俺が、家族を、傷つけられて、無傷で、逃すと、オモウノカ?」


ズンッ!!!!!


いきなりだった!そこだけ重力が増したような強烈なプレッシャーがフェニックスと影に襲いかかる。ステインがゆっくりと、ゆっくりと一歩一歩近ずく。その度に圧が増し、影は後退り、フェニックスは空に逃げようとする。


「ば、化け物め・・・!!」

「グ、グワ・・・!!」

「化け物、か・・・」


ステインが呟く。エルマリン達は影が言っていた話を思い出す。ステインは魔人の力を取り込んだ力の塊。人間の形をした力そのものだと。


「最高神が言っていたな。俺は魔人の影響を受けた人間だって。」

「その通りだ!お前は魔人と神々の戦いより産まれた、力の結晶!!器に過ぎない!!!私のような影とは違い、純粋な力なのだ!只の化け物さ!!」

「違う!!ステイン殿はそれでも!!」

「うん!!お父様はお父様なんです!!」

「この様な頼りになる人間が他に居ようか!!?」


影の言葉を遮る様に家族と友がステインを認めてくれている。ステインは体の奥が温かくなるのを感じていた。エルマリンが続く。


「只の力に最高神のお姉様が私を預けるわけがありません。私が・・・マリンが、ここまで好意を寄せるはずがないのです。これ程の者達が慕うはずがないのです。魔人の影よ。貴方は人を知らなすぎる!」


影が更に後退りながら距離を取ろうとする。しかし、ステインから発せられる圧がそれを許さない。


「ふふふ、ははは!!!」


ステインが笑う。つられて皆んなが笑う。影からしたら異様な光景であった。だが、ステイン達からすれば家族の、友の絆だった。理解出来ない状況に、化け物を受け入れている存在達に影は恐怖する。


「ひ!!く、来るな!!来ないでくれ!!!ふぇ、フェニックス!!!炎は出せるだろうが!!燃やし尽くしてやれ!!!!」

「グワアアアアッ!!!」


フェニックスから炎の柱が立ち上る。さっきまで、その巨大な炎に苦戦していたケルピー達。今は、笑みを浮かべ只々その光景を眺めていた。

そして、ステインは力強く叫ぶ!


「色々聞きたい事もあるが、とりあえず、お前達は許さない!!」


ステインから気の光と魔力の光が溢れ出す!

今までのステインよりも力強く、エルマリンやケルピー達を守る様に暖かな力が溢れ出す!


「ほおおお!!ステインめ!!ここまで力を付けたか!!我でももう勝てまい!!」

「これは・・・!!シトリン、良く見て起きなさい。ステイン殿の本気が見れるようだ!!」

「はい!凄すぎます!流石、お父様です!!」

「ギャウ!ギャウギャウ!!!」


皆んなが興奮する様に安心しきった顔でステインを見つめている。


「魔人の力は未だにステインの中に多くあります。小さな私では浄化しきれないからです。しかし、ステインは魔人の力なんかに負けません!!器になんてなる筈がありません!!何故なら、心があるからです!!」


エルマリンは女神に相応しい笑顔で影に最後の言葉を与える。



カアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッ!!!


皆んなの想いに、言葉に反応する様に光が増していく。

その姿が希望に満ち溢れたエルマリン達の表情が影を困惑させる。

そして、恐れ慄く影は余裕を完全に無くしてしまっていた。

何故なら、何故かステインの攻撃は影を通り抜け、遠くにいる本体に衝撃が襲ってきているからだ。先程までは影を倒されても本体に影響がないという余裕があったが、それが今はもうない。

焦った影は既に負け惜しみの様に言葉を尽くす。


「器は器だ!!お前は化け物らしく魔人の器として存在していればいいんだ!只の入れ物として!!」

「・・・言いたいことはそれだけか?」

「偉そうに!!お前なんて、魔人の、力を入れ込む器!!入れ物のくせに!!!」

「器ね・・・?興味無いな。それより、お前は俺達を見逃しはしないのだろう?これからも余計なことをしてくるんだろう?・・・だったら、俺達がやる事はひとつだけだ!!」

「!?」


本来なら魔人の器など、最近起こっている異常な事態の貴重な情報源だが、今のステインには関係なかった。

今は目の前にいる敵を、家族を傷つけた存在を倒すことしか考えていなかった。

だからこそ言う。


「魔人の力の器なんて知ったことか!!俺達は今、この時を笑って生きていくだけだ!!!」


宣言する。きっとこの先、ステイン達の邪魔をする者達、全ての者が聞くであろう宣言をする。


「それを邪魔する奴等は、ぶっ飛ばす!!!」


高らかに誇らしげに宣言する。それは単純に言葉通りにも聞こえる。敵にとっては恐ろしさしかない言葉だろう。

しかし、家族にとっては、友にとっては、守り抜くという宣言に聞こえた!

力強く踏み込むステインが全力の一撃を宣言する。


「とっておきだ!!『気功術 万物流転ばんぶつるてん』!!、『フル・マキシマム・ブースト』!!」


瞬間、その場にいた者には光しか見えていなかった。


動く音もなく、破壊音もなく、只、気付いたらステインが影を撃ち抜いていた。


そして、静かに、静寂の中、ステインが呟く。


「超絶技、『無音むおん』。」


只、破壊する為だけに高めた気で身体を覆い、圧倒的な魔力量を全て身体強化に注ぎ込み、目の前にいる者に認識さえされずに貫く。そこには音さえ置き去りにし、衝撃さえ遅れてくる。つまり、ステインが技名を呟いた瞬間。



シューーーーーーーーーーッズバッ!!!ドンッッッ!!



「ごわあああああああああ!!!!!!」



遅れてきた衝撃がやってきて、影が貫かれ、フェニックスと倒れていた白虎の胸が弾ける。


そして、ステインは影のみに追い打ちをかける。


「テメエは、拳でぶっ飛ばす!!『気功術 金剛』!!『フル・アクセル』!!『複合奥義 きわみ玄武げんぶ』!!!」


バキンッッッ!!!!ドゴゴゴゴーーーーーーンッ!!!!


殴り飛ばされた影は壁を突き破り、尚も止まらず。文字通り、遥か彼方へと飛んでいった。


「「「「「・・・・・・!!!!!?????」」」」」


流石に皆んなも言葉を無くす。

そんな皆んなの事を構わず、エルマリン達に笑いかけながらステインが言う。


「まあ、本体がどうなったか分からないけど、スッキリした!!」


ニカッと笑うステインに、ビックリしていた皆んなが顔を見合わせ、それでも「ステインらしい」と、笑って迎え入れたのだった。






バトルを一気に読んでもらいたくて2話目更新しました。


一応、今回の章は次回で終わります。


次は日常の章にしようと思っていますが、いつも書きながら考えてない方向に進んでしまうので、どうなるか分かりません。

力不足ですが、少しでも楽しんでいただけたら幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ