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超常の存在同士の戦い

最初に動き出したのはケルピーだった。ヤマタノオロチが満足に動けぬ以上、現在ケルピーが味方側最強の存在だったからだ。黒い姿をしたフェニックスに向かいながら指示を出すケルピー。


「シトリン!マリン様を火竜に預けよ!!火竜はマリン様と非難しておれ!!!ヤマタノオロチ殿はシトリンと白虎を頼むぞ!」

「はい、お兄様!!火竜さん、マリンをお願いします!!」

「グワッ!!」

「頑張って皆んな!!」

「心得た!」


一気に動き出すマリン達。黒い影は動こうとせず、フェニックスと白虎はそれぞれ標的に迫る。先制はケルピーだった。


「フェニックスよ!私が相手だ!!」


風の刃を飛ばし先制する。戦略の差を考えると本来なら同じ調停者であり、闘神の調停者であるヤマタノオロチがいるこちらが有利と言えるが、ヤマタノオロチは火山噴火を止めるために力を使っており満足に行動出来ず。シトリンは守護獣となり、限りなく調停者に近い魔獣と成長した。が、若く力のコントロールが覚束ない今のシトリンでは調停者には決して敵わないだろう。


唯一、ほぼ互角以上に戦えるケルピーが空を飛ぶフェニックスを抑える事を選ぶしかなかった。

ヤマタノオロチが動けるならば、フェニックスはヤマタノオロチに任せて、ケルピーが白虎を抑えていただろう。

空を押さえられるのは避けたかった。


「グエエエエエエエエッ!!!」


攻撃を避け、赤黒い霧を撒き散らしながら、フェニックスが飛び上がる。

赤黒く変色した炎の翼を振り、ケルピーに向かい火炎を放つ。


「空に行けば良いとでも思ったか!?」


炎を回避し、同時に飛び上がる。風の魔力を纏い、短い時間だが空中へと飛び上がり、フェニックスへと取り付く。


「しばらく痺れているが良い!!」

「グエエエエエエエエッ!!?」


眩い雷を放ち、フェニックスを抑え込むケルピー。

時を同じくして、白虎に迫るシトリン。


「シトリン!白虎は素早さに定評がある!我が指示するから注意せよ!!」

「はい!白虎さん、元に戻るのです!!」


ヤマタノオロチからの指示を受け、シトリンはステインと訓練した気功を発動し、速度を上げる。

目にも留まらぬスピードでお互いの爪を合わせていく。


ギャリン!キンッ!!キュイン!!!


火花が飛び散り、激しく打ち付けられた地面が爆ぜていく。


ゴオオオオオオオオオオーーーーーーーッ!!!!


フェニックスがケルピーを落とそうと炎の竜巻を作り出した。

周りを覆うような竜巻にシトリンと白虎が一度距離を取る。


「ケルピー!!」

「グギャ!!」


マリンと火竜が心配の声を上げる。


「ケルピーならば、あの程度大丈夫だ!心配いらぬ。ただ・・・」


ヤマタノオロチが言うと、影が笑いながら問う。


「ははは!!凄まじいね!調停者同士の戦いは!!ヤマタノオロチよ、火山の噴火を止めきれるのかい?」


ニヤニヤと黒い影に覆われてよく見えない表情で問うてくる。


「ふん!!フェニックスよ!それ以上は許さん!!」


ケルピーが炎の中から現れ、フェニックスに向かい風の竜巻をぶつける。


バチチチチチチチチチチッ!!


弾けるような音を立てながら膠着する炎の竜巻と風の竜巻。

激しさを増す戦いに、フロアが荒され、火山に影響を与えていくのをヤマタノオロチが必死に抑えていた。

溶岩の中に隠れて見えていないが、ヤマタノオロチの8つある尻尾を火山に突っ込み、自身のエネルギーで無理矢理押さえつけている。故にヤマタノオロチはその場を離れられずにいた。


「グワフッ!!」

「させないのです!!」


白虎からヤマタノオロチに向かってエネルギー波が放たれたのをシトリンが風の魔法で防ぐ。


「シトリン!我の守りは不要だ!!火山を抑えているとは言え、3割位はまだ力を防御に回せる。お主はステインが来るまでこの場を抑えておくのだ!!」

「は、はい!!」


シトリンがまともに戦っては本気になった白虎には勝てないのはヤマタノオロチもシトリンも分かっていた。その為、耐える事を選び、ステインの到着を待つという選択を取る。

勿論、ケルピーがフェニックスを抑え、倒せればケルピーと一緒に白虎を倒す。という選択肢を選べるが、現状このままではケルピーとフェニックスの戦いは長引くように見える。ほぼ互角の戦いをしていた。


「彼を待つつもりかい?」

「ステインが来たらやっつけてくれるもん!!」

「お父様は直ぐに来てくれます!!」


マリンとシトリンは力強く言う。影はさらに笑いながらいう。


「ははははははは!!君達、彼が直ぐに来ると思っているのかい?それは無理じゃないかな?私が作った影獣えいじゅうは一体だけじゃないんだよ?今頃、足止めされているんじゃないかな?」

「ステイン殿が足止めした、あの気持ちの悪い化け物がまだいたのか!?」

「道理で、ステインの移動速度が落ちたはずだ。」

「でもでも!ステインは負けないもん!!」

「お父様は私達の所に絶対来ます!!」

「気が変わった。もう少し楽しもうと思っていたけど、君達が絶望感を感じるのが見たくなってきたよ。あの化け物がボロボロになった君達を見たらどうなるか、興味がある。」


影がいきなり広がり始めた。フェニックスと白虎に影が重なり、赤黒い変色を遂げていたフェニックスと白虎が真っ黒に染まる。代わりに、目が真っ赤に光り輝いていた。


「ギュエエエエエエエエエエエ!!!!!!」

「ギャオオオオオオオオオオオ!!!!!!」


フェニックスと白虎が咆哮を上げる。超音波が発せられ、ケルピー、シトリンが吹き飛ばされる。マリンを庇うように火竜がその身を盾にした。ヤマタノオロチは辛うじて耐えきった。


「な、何をした!?」

「知っているだろうけど、フェニックスも白虎も魔人の力で操られていたんだ!元の能力は変わらない状態でね。けど、君達が思ったより強いから、魔人の力を注いであげたんだよ。今までの力にプラスして、魔人の力が加算されたって所かな?」

「ぐ、な、何という事を!?」

「わ、ワフ・・・き、キツイのです!」


ケルピーとシトリンが起き上がりながら言う。今までと違う強さに冷や汗を流す。ヤマタノオロチも余裕がなくなり、今や9割を火山に向けている。


「ヤマタノオロチが1番大変だね?君が力を抜いた瞬間、この山だけじゃなく周辺の山々が反応して下手したら王国や魔国なんかが余波で滅びるかもしれないよ?」

「き、貴様ーーーーッ!!」

「させぬ!!」

「まだ負けてません!!」


ケルピーとシトリンが同時に風の魔力を放つ!!


「ケルピー!?シトちゃん!?トカゲさん!手伝ってあげて!?」

「ギャア!!」


マリンを庇っていた火竜も加わり、風と竜のブレスが相手に迫る。

フェニックスと白虎が同時に黒い炎と黒いエネルギー波を放ってくる!


カアアアアアアアアアアアッ!!!


エネルギー同士がぶつかり合うと辺りを閃光が包み込み、その中心ではエネルギー同士が押し合いをしていた!!


「シトリン!!ここは後先考えるな!全力を出し尽くすのだ!」

「は、はい!お兄様!!私の全てを込めます!!!」

「グッワアアアアアアア!!!」

「眷属よ済まない!頑張ってくれ!」


「ギュエエエエエエエエエエエ!!!」

「ギャオオオオオオオオオオオ!!!」

「どれだけ持ちこたえられるかな!?」


「私、皆んなを守るもん!!!」


皆んなが全力を尽くす中、何も出来ないマリンは、涙で一杯になった目を見開き、黒いフェニックスと白虎を見つめる。


「私、私も皆んなと戦いたい!!皆んなを、家族を守りたい!!!」


マリンの目から涙が溢れる。


「私・・・私・・・神様じゃないもん!!」


溢れた涙から光が溢れる!!


「私は、皆んなの家族で、妹のマリンだもん!!皆んな、一緒だもん!!」


マリンを包み込む光。マリンの想いが弾ける!


「家族に意地悪する人なんて許さない!!!!」


マリンから光が溢れる!!


「マリン様!?」

「マリン!?」

「女神様!?」

「ギャウ!?」


「なんだと!?あ、あれは・・・」


光が収まり、現れたのは、青いウェーブの掛かった髪をなびかせ、ティアラを被り、白いドレスを身に纏った美しい女性がいた。


「じょ、浄化の女神だと!!?せ、成長したというのか!?」


影が初めて焦っている。浄化の女神が薄っすらと目を開ける。


「私は浄化の女神にしてステインより、エルマリンの名を貰った者。何人も私の家族を傷付ける者は許しません!!!」


手を広げ、光を放つエルマリン!!フェニックスと白虎を覆っていた黒い影が消える!!元の赤黒い変色に戻り、放っていた力が一瞬弱まった。


「今だ!!ケルピー!!シトリン!!眷属よ!!」

「はああああああ!!!」

「ええええええい!!!」

「ギャウウウウウ!!!」


ドゴーーーーーーーーーーーーーーーーンッッッ!!!!!!


フェニックスと白虎をエネルギーの奔流が覆い尽くし、爆発と共に吹き飛ばしてしまう。影だけがその場に呆然と立っていた。


「まさか、このタイミングで浄化の女神が覚醒するとは・・・」

「影の者よ、貴方の影も消してしまいましょう!」


エルマリンが影に手を向けると、焦ったように言う。


「おっと!!ごめんだよ?それに私の相手をする前に調停者達をなんとかしたら?君達の仲間もだけど、フェニックスと白虎もほっとくと死んじゃうかもよ?」

「・・・・・」


影は後ずさり、言葉を紡ぎ、この場を離れようとする。エルマリンの後ろには力を使い果たしたケルピー達。影の後ろにはフェニックスと白虎が倒れていた。

エルマリンが悩む素振りを見せたことで、影は確信する。


「完全な覚醒じゃなさそうだね?一時的な覚醒だったのかな?無駄に力を使えないのだろう?残念だけど、ここまでだね?」

「くっ・・・!!」


悔しそうにエルマリンが手を下ろす。図星だったからだ。

ここで影を浄化すれば無理矢理覚醒した今の自分ではフェニックスと白虎の浄化が行えない可能性が高い。


「予想外の事も起こったけど、楽しかったよ!また、見えようじゃないか!!」


スウーーーーーッと空に昇っていく影。


「く、に、逃げるか!?」

「ワ、ワフウ!!」

「グッ!!この身が動ければ!!」

「ギャ、ギャウ・・・」


無理矢理動こうとするケルピー達、まだステインを侮辱した影を許してはいなかった。一撃でも入れようと力を込める。しかし、その時、炎の柱が立ち昇った!


「ははは!私の相手より、フェニックスの相手が先じゃないかな?不死鳥、死して尚、火の中から蘇る霊鳥!!ここは火山の火でフェニックスにとってはエネルギーの宝庫だよ!?」


「ギュエエエエエエエエエエエ!!!」


大きな翼を広げ、傷一つない姿で現れるフェニックス。流石に絶望的な状況に陥る。浄化の女神といえども、魔人の力を持った核を破壊せぬ限り、完全なる浄化が出来ず、手を出せなかった。


「じゃあ、私は先に失礼する。頑張って乗り越えてみてくれ?」

「くッ!!」

「うう!?」

「むむ!!」

「ギャウ・・」


空に消えていく影を見送るしかなかったケルピー達。影が嘲笑いながら消えていく。






すると、影の後ろに影が現れた。


「おい」


ガシッと影の頭部らしいところを掴む手が現れた。


「え?」

「人の家族に好き勝手しやがって。逃げてんじゃねえよ!!!!」


ミシミシッと音が出るほど握りしめたまま地面に叩きつける!!


ドゴーーーーーーーーーンッ!!!!!!!!!!


パラパラ・・・パラパラ・・・


砂埃が巻き上がり、砕けた破片が降ってくる。ケルピー達が目を丸くしていると、上空にいたフェニックスがいきなり鳴いた。


「ギャフ!!?」


ゴンッ!!!!ドシン!!!!


思わず見とれてしまっていたケルピー達。言葉が出ずにいると、エルマリンが笑顔でその人物を出迎える。


「お待ちしておりました。ステイン♫」

「おう、待たせたな。皆んな!!」


自分達が苦戦していた相手を吹き飛ばすという人外にして、マリン達の兄、家族の長、親友のステインが到着した・・・!!



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