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到達する家族。そして真実と集う者達

ステインと別れ、シトリンにマリンを乗せ、ケルピーが道を切り開きながら登り続ける。


下の階層から、ステインの戦闘する振動や音が響いていたが、登るにつれ聞こえなくなっていった。

それが幼いマリンとシトリンには不安に感じられ、意識が散漫になっているのをケルピーは分かっていた。しかし、それを注意したりはしなかった。

最近、ステインは自然と皆んなを家族と呼ぶ。意識してかしないでかは判らないが、魔獣であるシトリン、調停者たるケルピー、神であるマリンを同じ人間として見ているし、自分達もステインをそのように思っていると感じている。だから、家族を心配する妹達の気持ちに注意するなどケルピーには出来なかった。


上層を駆け巡るが、本来、調停者とは、その上に神しかいないとされる生物であり、戦闘特化ではないケルピーでも、地上の魔獣やモンスターでは束になろうと敵う訳は無かった。問題なく進み、最上階へと到着する。


頂上は開け、空が見渡せるが、とてつもない溶岩が溢れていた。氷結マントを着ていても若干の暑さを感じる。溶岩から出る煙で前が見えない中、ケルピーが声を上げた。


「ヤマタノオロチ殿!私は浄化の調停者、ケルピー!浄化の神であり子であるマリン様と、私達の家族であるマザー・フェンリルの守護獣シトリン、無事到着致した!」


ゴゴゴゴゴゴ・・・!!


溶岩の中心部から地鳴りが響き、巨大な姿が現れる。

八つ首、金の鱗、巨大な六つの翼、赤い瞳、ダンジョンボスである火竜など比べ物にならないくらい大きく、また、威風あるドラゴンの頂点。


「よく参られた。浄化の女神マリン様、その調停者ケルピー、そして、マザー・フェンリルだったか?聞いたことのない種だがステインの気を感じる。ステインの守護獣だな。シトリンといったか?我は戦いの神である闘神様の調停者、ヤマタノオロチである。よろしく頼む。」

「おお〜〜〜〜凄い凄い!!凄〜〜〜〜〜〜〜〜い!!!!」

「無事であったかヤマタノオロチ殿!!」

「はい!お父様の妹のシトリンです!」

「グギャア!!」


ようやく、目的としていたヤマタノオロチに会えた。ダンジョンボスの火竜がいる。


「あれ?おっきなトカゲさん?」

「ダンジョンボスさんです!?何でいるのです?」

「マリン様、シトリン。ダンジョンボスの火竜はダンジョン内なら自由に移動できる。私達が出発した後、ここに移動していたのでしょう。」

「「へえ〜〜〜〜」」


「ところで皆々様、ステインはいかがした?姿が見えぬが?」

「ステイン・・・ううーー」

「お、お父様は・・・ううーー」

「2人共、心配いらぬ。ヤマタノオロチ殿、ステイン殿は今、突然現れた異業種の化け物と戦闘中である。私達だけ先に行くように戦っておいでだ。」

「異業種だと!?まさか・・・」

「グギャ!!!」


驚きを表すヤマタノオロチと火竜。その様子を見て、心当たりがあるのか聞いてみる。


「何かご存知か?」

「もしやと思うが、其奴の側に黒い影みたいな輩がいなかったか?」

「かげ?」

「変な匂いと黒いマグマはあったのです!」

「うむ、異様な気配に溢れていたので気づかなかったが・・・」


ヤマタノオロチが言うような存在は居なかったとマリン達は言う。ヤマタノオロチも考える。


「ダンジョンに何者かが干渉するなど、普通なら考えられぬが・・・」

「既にあり得ないことが多々起こっている以上、油断できますまい。」


黒い影、と黒いマグマ。赤黒い霧に覆われた事のあるケルピーは魔人の仕業かと思い、これまでの経緯をステインとの出会いからヤマタノオロチに聞かせていく。ヤマタノオロチは頷きながら聞き、魔人という言葉に反応した。


「魔人・・・。神々と同等以上の化け物か・・・我の前に現れた黒い影がその関係者の可能性が高い。という訳か?」

「なんとも言えぬが共通点はあるように感じるのだが。」

「警戒がいるか。む?」

「どうされた?」


ヤマタノオロチが何かを感じた。


「この気配はステインか!!とてつもない速度で此処に向かっておる!流石我が友よ!!」

「ステイン!!」

「お父様!!」

「無事だったか!!」


ヤマタノオロチの言葉に喜びの声を上げる一同。そして、今回のヤマタノオロチの目的を話す。


「ステインが来てから話すつもりだったが、今の内に言っておく。我は今、此処の活火山を鎮めるために溶岩に潜っている。少し前から此処の活火山が爆発する兆候を見せ、そこに居る我の眷属から連絡が入り対処していたのだ。」

「ふむ、活火山が?しかし、此処は上級ダンジョン。ダンジョンが消滅する様な爆発など考えられぬが・・・」

「ああ、そして昨日、影が現れ、この活火山の爆発は仕組まれたのだと確信した。」

「ステイン殿に何をさせるつもりなのだ?」

「ステインには此処に封印を願うつもりだった。だが、それも難しいかもしれぬ。」

「どういう事だ?」


「そこからは私が説明しようか?」


突然、声が響く。ヤマタノオロチ、ケルピー、マリン、シトリン。全ての者の警戒をくぐり抜け、何かがいきなり現れる。黒い影だ!


「貴様・・・!!」

「コヤツは!?」

「黒ーー?」

「危ないから、動かないで。マリン!」

「グギャ!!」


一気に臨戦態勢に入る面々。しかし、目の前の影は意に介さず話し続ける。


「警戒は最もだが、私は戦うつもりは無い。説明を省いてやりに来ただけだ。」

「なんだと!」

「どういう事だ!?」


動けぬヤマタノオロチとマリンとシトリンを守る様にケルピーが前に出る。


「どういう事もないがね、正確な情報は持っていないだろう?だから彼に封印をなんて考えるのだろうし。だって、通常あり得ない上級ダンジョンの爆発。それは魔人の影響だよ?私が何かしたと思っているならそれは勘違いだ。今、地上ではとある所でとんでもない事が起こっていて、それに魔人の力が関係しているんだ。その影響を此処が受けてしまったのさ。」

「とんでもない事だと!?なんだそれは!」

「それは教えられないよ。此処の事は関係ないけど、そっちは私も関係しているからね。」

「ペラペラとお喋りな奴め!貴様を此処で潰せば良かろう!」

「それは無理じゃない?今此処にいる影は本体じゃないし、ヤマタノオロチは今は戦えないだろ?そっちのケルピーで倒せるだろうけど、意味はないよ。」

「シトちゃん。この人変・・・」

「分かっているのです。マリンは守るのです!」

「浄化の女神か・・・流石に君だけは私の気配を読み取っていたね?」

「マリン様に近ずくな!」


雷を出して影を威嚇する。しかし、一向に意に介さず。影は喋り続ける。


「そうそう、その火山の爆発は魔人の影響だから彼には止められないよ?何故なら彼も魔人の影響を受けた人間だからだ。魔人が魔人を封印なんて出来る訳が無い。」

「なんだと?ステインが魔人の影響を受けし者だと!?」

「ヤマタノオロチ殿、事実だ。最高神様がステイン殿にそう言っていたらしい。」

「それは知っていたのかい?彼は元々いない筈の存在なんだよ。神々と魔人の戦争の余波で溢れた力が溜まって偶々生まれた存在だ。親は居ないし、ただ力のみを持って生まれた存在だよ。人では無い。彼こそ異形の化け物だ。」

「「「「!!!!????」」」」


語られるステインの秘密。何故ステインがあそこまでの力を持つのか?その理由を事もなく語られる。


てた物をインする者。略してステイン。シャレが効いた名前じゃないか。素直に馬鹿馬鹿しい化け物だよ!何者にもなれない哀れな化け物さ!!」


その瞬間。怒りを爆発させるもの達がいた。


「ステインはステインだもん!!」

「お父様はお父様です!!」

「ステイン殿は人間だ!!」

「我が友を愚弄するな!!」


家族と友人が影に怒鳴る。ステインを馬鹿にするな!と叫ぶ。


「ははは!!怒るんだ!?あんな化け物のために?只の器に過ぎない彼のためにかい?滑稽だよ!」

「ステインだもん!私達のステインだもん!!」

「そうです!私達のお父様です!!」

「大恩あるステイン殿を侮辱する者など焦がし尽くしてくれる!!」

「我が自由なら既に燃やし尽くしておるわ!!」

「君達が何を言っても、事実は変わらない!だが、面白い!今回は使うつもりは無かったのだけど、調停者が2人も揃っているのだし、もう2体も呼ぼうか・・・」


怒気を含んだ声を出す影の横に新たな影が出来る。大きな赤黒い鳥と、虎が現れる。


「フェニックスと白虎なのか?どうやって・・・」

「調停者をまた操るとは・・・」

「あれ、ケルピーとシトちゃんの時と一緒!!」

「あ、あんな感じだったのですね。」


本来集う筈のない調停者が揃った。神の代理者にして、世の安定を司る筈の調停者との戦いを影が宣言する。


「彼が化け物でないというならば、証明してみろ!化け物となった2体の調停者を倒してな!!」


上級ダンジョン、火竜の山での最後の戦いが始まった・・・

次回は戦いっぱなしです。一応書き上げていますが、できれば明日、2話投稿で一気に終わらせたいと思っています。


お読みいただいてありがとうございます!

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