異形の化け物と不審な人影
「挨拶がわりだ!!オラあ!!!」
「ギャプ!!!」
飛び掛かって来た化け物に拳を叩き込む。グニャっとした感触と共に吹き飛ぶ化け物。
「・・・派手に飛んだが、手応えがない!」
グルンと空中で体制を変えた化け物がステインに向かって何かを吐き出す!
「ギャア!」
「おっと!」
避けたステインを過ぎ去り吐き出された物が壁に当たると、シュウウという音と共に壁が溶ける。
「げ!!こりゃ当たる訳にはいかないな!!」
「ギャア!ゲ!ゴウ!!」
次々と吐き出される物体を避け続けるステイン。対処できないレベルではなかった。隙を伺いながらどうやって攻撃するかを考える。
(物理攻撃は効果が薄いみたいだ。全力でやれば分からないが、魔法の方が無難か!)
攻撃を避けながら魔力を練り上げるステイン。気功で強化された体に通常ではあり得ない魔力が集まる。
「『気功術 金剛』、『マジック・ブースト』!!重ね秘術!『ブラスター・レイ』!!!」
ゴウン!バシューーーーーーーーーーーーッ!!
気功術 金剛で身体硬度を上げ、術の強烈な反動に備え、ブーストを掛けた魔術をレーザー状にして放つ!
ダンジョンの壁を突き抜け、異形の化け物ごと外に光の道を作る。光属性の魔力と、膨大な魔力を操作する技術を注ぎ込んだ、単体撃破用の魔術である。
ステインの類い希なる身体能力が無ければ、ステインも吹っ飛んでしまう程の衝撃がある。
辺りを包んでいた異様な空気と共に、消しとばしてしまった。
「ふう〜、予想よりは大したことない奴だったな。」
ステインは急いで先に行ったマリン達を追いかけようとした。
その時、背後から黒いマグマがステインめがけて飛んできた。
「!?」
間一髪躱すステイン。
すると、目の前に黒いマグマが集まり始める。
「おいおい、まさか、この黒いマグマが本体か?」
異形の化け物が再び姿を現した。同時に異様な匂いが復活する。
「GUKYARYUREWASEーーーーーーー」
既に何を叫んでいるか、言葉でさえ無くなった化け物。ステインはどうするかを考える。倒す事自体は左程難しくはない。しかし、この調子で復活されても面倒だった。そもそも、化け物が何なのか?それが分からなかった。
「黒いマグマ毎ぶっ飛ばす!というのが最後の手段かな?ただ、ダンジョン毎壊す訳にはいかないし。どうするかな〜」
単純な戦闘能力は大した敵ではない。ステインはそう考えていた。しかし、その予想を裏切る事態が起きる。
ゴゴゴゴゴゴッ!!!!
「な、なんだ!?」
黒いマグマが胎動を始めると、異形の化け物を包み込む様に集まり始めた!マグマを吸い尽くす様に形を変えていく化け物。マグマの高温で煙が立ち上って何が起こっているのか全くわからない。ステインはその場を飛び退き、後方に下がり様子を伺う。
「・・・おいおい、どういう事なんだ?」
煙が段々と晴れていくと、中から現れたのは黒い人間だった。今まで言葉を話せなかった化け物が、人間を形作り喋り出す。
「お、お前、の力、寄越せ!」
「はあ?」
いきなり喋ったと思ったら力を寄越せだと?意味が分からなかった。
「う、器、じ、自分が、なる、力、欲しい!」
「器?自分がなる?さっぱり分からんが、黒いマグマが本体だったんじゃないのか?」
「お、お前、倒す、吸収、する。」
「吸収・・・?成る程、だからダンジョンモンスターの形が混じってたのか。」
化け物は恐らく黒いマグマが本体で、しかも吸収という行動でダンジョンモンスターを取り込んでいたのだろう。先程まではその一部が形作っていたのだろう。とステインは結論づける。
「で、今度は俺を吸収すると?器ってのが分からんが、俺は俺だ。お前に吸収される謂れはないし、一箇所に集まったお前をぶっ飛ばせば良いだけだろ?倒しやすくなっただけだ。」
「お、お前、じ、自分には、か、勝てない。」
「面白い。やってみろ!」
言うが速いか、踏み込み、攻撃を繰り出す!右のフックから左の回し蹴り、更に回転を加えて裏拳を出す。先程と違い手応えがあった。しかし、化け物は後ろに後ずさっただけで、踏ん張りきった!
「お、お前、さ、さっきの魔法、頂いた!」
「!?」
「か、返す!!」
「くっ!!?」
先程ステインが放った『ブラスター・レイ』と同等の黒い光が放たれる!必死に躱すステイン。しかし、急な事と自身の魔法が撃たれたことに動揺してかわしきれない!
「こなクソーーーー!!!『気功術 金剛』!!うおりゃーーー!!!」
バキンッという音がして黒い光が曲がる!ステインが殴り軌道を無理やり変えたのだ。
「お前!俺の魔法を吸収しやがったな!?」
「もっと、お前の力、寄越せ!!」
襲いくる化け物。ステインは回避に専念する。下手な攻撃をして、また技を吸収されると厄介だ!と化け物の力を測りにかかる!しかし、ステインが奪われた魔法がいけなかった。高速の光線がところ狭しと襲ってきていた。ステインが溜めを必要とする魔法を、化け物はノーモーションで放つ。
「おいおい!随分使い勝手良さそうだな!?」
ダンジョンの壁や床を破壊していく黒い光線を避け続け、更に避けきれない光線は弾き、ステインは防戦一方だった。
「我ながら、厄介な魔法を作ったもんだ!だが、そろそろ掴めてきた!!行くぞ!?」
突然だが、ステインは紛れもなく天才である。
卓越した気の操作技術、洗練された魔力コントロール。異常なまでの気と魔力の内包量。更に、錬金術などの知識も豊富で、更にそれらを師匠を持たずに培ってきた。今でも人類最強の人外なのでが、1番恐ろしいことは、ステインがまだ限界に達していないことだ。ステインは思考を止めない。考える事をやめない。何かを目指すのでは無く、ただ感じるままに強くなる。
そして、今この瞬間に、ステインはこの化け物を倒す手段を考え、実行に移す。
「そんな光線で力押しできると思うなよ!!質も量も足りてないんだよ!!」
「お前、じ、自分の、魔法、で、死ぬ!!」
ステインがいうや否や、黒い光線が量を増す。壁や床を更に破壊しながら、ステインを追いかける。
ステインはチラリと視線を床に向け、自分の考えが間違いないかを確認する。
床には、赤いマグマが溢れて来ていた。
「よし!じゃあ、倍とはいかないが、反撃だ。おおおりゃああ!!」
位置を確認し、方向転換、化け物の上を取る!停止したステインに数十本の光線が襲いかかる!だが、その瞬間、ステインは己の拳をぶつける!
ガキンッ!!ドシュッ!!ドドドドドドド!!!
次々と襲いくる光線にそれ以上のスピードで弾き返していくステイン。しかも、その方向は化け物を狙ってだ!
「おりゃ!はああああ!!!」
「が、ば、馬鹿な!!」
ドドドドドドド!!!!
自分の放った光線が、ステインに返され、更に弾き返した光線はステインの気功の力で増幅、加速していた。
「が、ががががががが!!!!!」
「最後!!くれてやる!『気功術 覆滅』!!奥義!『気流縫合拳』!!」
「や、やめ・・・」
ドカンッ!!!!!!
一際大きな音を立て、化け物を貫いて消える光線。
辺りは赤いマグマが音を立てて溢れていた。
「ふううーーー。」
息を吐き、今度は大丈夫だろうと息をつく。思ったよりも厄介な化け物だった。と思う。
その正体も何が狙いかも分からないが、狙い通り倒せたことに安堵すると、どこからか音が聞こえた。
パチパチパチ・・・
手を叩く様な音だ。ステインは抜きかけた気を入れ直し、周囲を見渡す。すると、上の方から何かが降って来た!
「なんだ?霧?」
黒い靄がかかった様な塊が降ってきたのだ。妙な出来事が重なるな、と溜息を吐くステインに、黒い靄の方からから話しかける。
「見事だな。全て計算尽くか。奴には超学習と超耐性を与えていたのだが。」
「雑魚を倒して褒められたくないな。誰だ?お前?」
「そう言うな。お前は先ず奴の出す光線の威力を確認、威力とスピードが自分の使う力と変わらないと確信。量は奴の方が出せるのも計算尽くか?そして、床を確認し、黒いマグマが出ていないことで復活は無いと思考。自分の力ではなく相手の光線を利用する事で敵に新たな力を与える事なく撃破する。言うのは容易いが、やってる事はお前の方が化け物だぞ。」
「どうも・・・で、お前が奴の親玉か?」
「奴を作ったと言う意味ではそうだが、私は別にお前と敵対するつもりは無かった。理性を十分に与えなかった奴が強い力を持つお前に惹かれたのだろう。奴の本質は渇きだからな。」
「まあいい。で、敵対しないなら先に行っていいか?皆んなを追いかけないとな。」
「敵対はしないが、器を持つお前、ステインに用はあるぞ?」
「器?あの化け物も言っていたな・・・なんだ?器って?」
「未だ自覚はないか・・・自覚が無いようでは今は話せぬ。時が来ればまた見えよう。急がねばヤマタノオロチは危ないぞ?」
「何?お前一体!?」
言うや否やスウウっと影に消える。謎の気配は消え、残っていた妙な匂いまで消えていた。
ステインは少し考え、踵を返すとマリン達を追う様に走り出した。
器とは何なのか?あの霧の存在は?疑問を残し、それでも家族を追うステイン。
しかし、ステインはまだ潜んでいる罠に気付いていなかった。
家族の危機が近い事を、とある別れがせまっている事をステインはまだ気づいていない。
何とか仕事が落ち着いてきましたのでなるべく毎日更新を頑張ります!




