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王都

王都 グランバール


大陸の中心に位置し、大陸3大大国の一つであり、ステインの住んでいる国である。


王都には多種多様の人種が住んでおり、公正公平の国として民からの信頼も厚く、物流に関しても中心となっている。また、懐の深い王族の人気も高く、建国から300年たった今も世界の中心国として人が行き交う都市である。


ステインは王都から離れた人通りの少ない地点から街道に出て、1時間程歩く。と、王都の外壁が見えてくる。

王都は入国の際の検査の為に兵士達がゲートを作り、日夜複数のチームで不審者などいないかチェックされている。身分証の提出はもちろん、魔水晶と鑑定装置で荷物や人物確認されて初めて王都に入れる。現代における空港のイメージだ。

身分証で身元を確認し、魔水晶で犯罪歴を洗い出し、鑑定装置で危険物などを取り締まり、それぞれ兵士が1人ずつ担当している。


(相変わらず、これが面倒だよな〜)


兵達の努力により、ゲートも複数構え、実際には待ち時間も微々たるものになってはいるが、ステインは毎回受ける入国審査が苦手だった。


「次の方どうぞ!」


自分の前の人達が審査に呼ばれた。


(む?)


今呼ばれた人達は全部で5人組の冒険者風の出で立ちをしたパーティだ。一人一人、ギルドカードを見せて魔水晶に手を当てて、鑑定装置で手荷物などの検査を受けている。


(・・・・・気づいてないのか?)


ステインは前の5人を見て、兵士の方を確認する。


「ふむ、問題なさそうだな。滞在中は問題を起こさないように注意してください。また、お困りの際は気軽に兵に声をかけてください!」


若い兵士は元気に言葉を交わしている。まだ新米という感じがする。ステインは溜息を吐きながら前に出る。


「兵士さん、そいつら違法行為してるぞ?」


「え?」

「「!?」」


兵士と5人組が驚いて振り返る。


「明らかに狙って魔水晶の犯罪歴をごまかしていたが?」


「な!?」

「いきなり何だ!貴様は!」


5人組の冒険者が騒ぎ立てる。兵士はステインと5人組をキョロキョロ見ながら


「怪しい行動はなかったと思うが?」


と、ステインに首を傾げてみせた。


「そうだ!俺たちは言われた手続きをちゃんとしたぞ!」

「妙な言いがかりをかけるな!」


ステインは指差しながら言葉をつなぐ、


「やましい事がないなら、もう一度、魔水晶に手を当ててみろ。」


魔水晶を担当していた兵士がびっくりした様子で尋ねる。


「この方達には怪しい行動はなかったように見えますが?」


「たしかに怪しい行動はなかったけどな。」


ステインが頷きながら言う。


「では、問題ないのでは?」


兵士はステインが何をしたいのか首をかしげる。


「兵士さん、こいつの言うことはほっといて入国許可をください!」

「言いがかりをかけられるのはうんざりだ!」


5人組 が騒ぎ立てるが、兵士は考える。


(確かに怪しい行動はなかったはず。鑑定装置にも怪しいものは映っていないし、ギルドカードも本物だ。魔水晶の犯罪歴にも問題はない。しかし・・・)


兵士はチラッとステインの表情を見る。


(誰の目から見ても怪しい行動はなかったはずなのに自信ありげに怪しいと言う。)


この男自体が怪しいのでは?とステインを見つめている。


ちなみに、今のステインはフード付きの黒いローブを着ており、フードを被った姿は怪しいといえば怪しく見えた。


「どうしたのだ!?」


大声をあげて、巨漢の男が近ずいてくる。筋骨隆々で、年の頃は30の半ばくらいだろうか?兵士よりも着ている鎧は立派で短く切りそろえた髪の毛は黒髪で、肌は浅黒く日焼けしている。


「バ、バラキ様!?お、お疲れ様です!」


その場にいた兵士達が、立ち上がり敬礼する。


「先程から何やら揉めているように見えたが?」


冒険者達とステインを見ながらバラキと呼ばれた騎士が尋ねる。


「実は・・・」


兵士が事情を説明している間にステインは5人組を見ている。5人組はバラキが現れて少し焦ったようだが、コソコソと話し合い、今は落ち着いた様子を見せていた。


「ふむ、貴殿が彼らを怪しんでいるのかね?」


バラキがステインに確認する。


「ああ、出来れば魔水晶でもう一度確認するのをお勧めするが、俺には関係ないからな。そちらが問題ないと言うならそれまでさ。」


正直、思わず声をかけてしまったが、ステインは自分に迷惑が掛からないなら問題ないと思っている。むしろ、余計なことを言ってしまったと後悔していた。


「俺達は何もやましいことはないし、実際何も問題はなかったはずだ!」

「そうだ!無駄に時間を取られて迷惑だ!」


冒険者が騒ぎ立てるが、


「ふむ、失礼だが、貴殿のギルドカードか身分証の確認をしても良いか?」


バラキがステインに尋ねながら近く。


「ああ、ギルドカードとついでにこれが俺の荷物だ。魔水晶にも触れようか?」


「すまない、では念のため先に済ませてしまおうか?」


バラキが兵士に指示してステインの入国審査を済ませていく。魔水晶の前に来てステインが説明する。


「普通、魔水晶は触れただけで魔力を読み取る。魔水晶が犯罪歴を映し出すのは、犯人として捕まった犯罪者の魔力を計測、登録し全てを魔導ネットワークで共有しているからだ。単純ゆえに誤魔化すのが難しく、現在では危険人物の把握などに役立っている。」


「誤魔化すのが難しいのなら彼らの何が違法行為と言ったのだね?」


バラキはステインが何を言いたいのか尋ねる。

ステインの犯罪歴に異常はないのを確認して、ステインはバラキに身を寄せて小声で話しかける。


「誤魔化すのが難しいと言うことは、仮に誤魔化せたら?それは、疑われにくくなると思わないか?」

「!?し、しかしどうやって?あからさまに何かあれば兵士にもわかるし、そのために、魔水晶に触れるには素肌である必要がある!魔力を抑えても同様に魔水晶は反応しなくなるだけだぞ?」


ステインはバラキの言葉にニヤリと笑う。


「普通の人なら気付かないだろうが、俺を誰だと思っているんだ?バっさん?」

「ステイン、バっさんはやめろ。」


肩を落としてバラキがステインを軽く睨む。


「悪い悪い!俺も騒ぎになるとは思わなかったし、魔水晶の製作者としては見逃せなかったからな〜。ついつい口出ししてしまった。」

「ギルドの方から今日ステインが来るから様子を見に行ってくれと言われたから来てみたら面倒な・・・」


バラキは苦笑しながらステインを見やる。


「で、何があった?お前が作ったこの魔水晶を誤魔化すのが難しいのは製作者であるお前が一番わかっているだろう?」

「まあ、あの5人組が誰で、何をしたかわからないが、魔水晶が何か忘れたのか?」


不敵に笑いバラキに耳打ちする。


「・・・・てわけだ。もう一度魔水晶で確認してくれるか?」

「わかった。そちらの5人組の方々、お待たせして申し訳ない。俺は王国兵士長のバラキと言う。申し訳ないが、今一度、こちらの魔水晶にて確認を願えるか?」


兵士長!?と5人組が騒ぎ立てる。


「まあ、面白くは無いだろうが、変にケチが付いても詰まらぬだろう。此方の男も余計なことを言って済まないと謝っている。協力お願いできますかな?」


バラキの後ろでステインが頭を下げる。フードで表情は見えないが反省しているのだろうと5人組は考え、バラキに応じる。


「ま、まあ兵士長に言われたら断れませんし構いませんよ。」

「そうだな。そっちの兄ちゃんは後で叱っといて下さいよ?」


「わかった。兵士長の自分が後で責任を持って叱っておきます。」


5人の言葉にバラキが答えながら魔水晶の前に来る。


「では、1人ずつお願いします。」


魔水晶の担当兵士が答えると、


「済まぬな。おお、そうだ!たまには俺が魔水晶を担当して良いかね?」

「「「「「え!?」」」」


バラキの言葉に5人組と魔水晶の担当者が驚きの声をあげる。


「バ、バラキ様がわざわざ担当なさる必要は無いと思いますが?」

「なに、たまには初心にかえるつもりでやりたいだけよ!大丈夫。俺も昔は魔水晶の担当などもしていたし、問題はなかろう?」


「い、いや、兵士長に担当されるとか、き、緊張するというか・・・なあ?」

「そ、そうそう、普通にして下さいよ!普通に!」


「バ、バラキ様、彼らもこう言っていますし、よろしいですか?」

「ふむ、仕方ないな。たまには担当してみたかったが、さっさと済ませてしまうか。」


バラキが頷きながら場所を開けると、ほっと息をついて5人組が前に出る。そして、1人が魔水晶に触れようとすると同時に、


ドタン!!!!


と、目の前にいた兵士がバラキに組み伏せられる。突然の行動に誰もが驚きながらバラキに注目が集まる中、ステインが素早く魔水晶を覗き込む。


「・・・盗賊、強盗、強姦、詐欺、窃盗か?殺人までは無いが、今回で不正入国がつくな。」


ガシっと男の腕を掴み魔水晶に当てながらステインが声を上げる。兵士は驚き動きが止まり、5人組も驚きのあまり動きが止まっていた。


「何をしている!!その5人を取り押さえろ!不正入国と詐欺の現行犯だ!」


バラキの怒声が飛ぶと同時に兵士が動き出す。逃げ惑う5人組だったがステインが腕を掴んでいた男が隠していたナイフをステインに向ける。


「動くな!動けばこの男の命がないぞ!!」


兵士達が動きを止めようとする。


「いいから拘束しろ!」


と言うと、ステインは気を一瞬で手に纏いナイフを素手で掴み上げると、グシャっと握りつぶし、目の前の男の懐に潜り込むと同時に一撃を加える!


「ふっ!」


軽く息を吐きながら顎下を掠める一撃で、男は目を回しながら倒れる。兵士の方もバラキ含め対象を捉えたようだ。


「バ、バラキ様なぜ、わ、私を?」


バラキに組み伏せられ、今拘束された兵士がバラキを見ながら問う。


「ふむ、俺も、俺たち王国兵士も舐められたものだな。身内に潜り込めば疑われないと思っていたのか?」


バラキに睨まれ、蒼白になる元兵士はガタガタ震えながら意地悪く呂律が回らない言葉を重ねる。

「ひゃ、わ、私が、いいい、いったいにゃにをしゅたと?」

「魔水晶の担当をしながら犯罪者と結託しておいてよく言う。気づいていないと思ったか!!もう良い!牢に連れて行け!こやつらの目的もなにもかも洗いざらいはかせろ!」


ばたばたと兵士が動き出し、拘束した男達を連れ出す。


「助かったぞステイン。礼を言う。後は此方で取り調べし、然るべき処罰をしておくよ!」

「バラキ様、此方の方はお知り合いでしたか?」


バラキのステインに対する気安い空気を見て、1人の兵士が近ずいてくる。


「ニール!こやつはステインという変わり者だ。悪いやつではないから顔合わせくらいしておくと良いぞ?」

「ええ、今回はステイン殿のお陰で王国の膿を出すチャンスですからね。お礼を申し上げます。」

「ステイン!こいつはニール。俺の副官だ!仲良くしてやってくれ!」


「ああ、俺はステイン。バっさんとは昔馴染みってところだな。よろしく頼むよ。」

「バ、バっさん!?ですか・・?いや、ニールです。よろしくお願いします。」


バっさんとの呼び方に触れるなというバラキの睨みを受け、とりあえず挨拶だけ済ませるニール。


「ステインよ。ギルドマスターが呼んでいた。必ずギルドに顔を出すように、俺からも注意しておくように言われたぞ?」

「・・・・・気が向いたらな。」


ギルドカードの通信を切っていたため、後ろめたい気がするが、面倒な予感がするため、今日は近づかないようにしようと決意する。


(買い出しが済んだら、王都から出て急用ができたとかでっちあげればいいだろう。)


ステインの様子を見て、こいつは変わらないなと溜息をつくバラキ。


「まあいい。どちらにせよ、お前を縛ることなどできまい。伝言を伝えただけだ。」

「バっさん、すまん・・・」

「まあ、ギルドのことは置いといても、たまには俺の家にも顔だしてくれ。妻と娘も息子までお前に会いたがっているんだ!」

「ああ、今度来るときにでも手土産持って会いに行く。約束する。」


ステインは約束すると言ったのを見てバラキは満足げに頷く。そして、ニール達兵士に声をかけると改めてステインに言う。


「ではな!俺達は引き上げる。ただ、現場説明がいる。面倒だろうが、ニールに説明を頼むよ。ニールはあまり時間をかけずにステインを解放するように。ニールなら心配ないだろうが、ステインに失礼がないようにな。」

「了解しました。」

「仕方ないだろうな。」


ニールとステインの返事を確認すると、バラキは引き上げていった。


「では、聞きたいことは沢山ありますが、今回の件だけ手短に聞きましょう。そうですね、ご飯でも食べながらいかがですか?」

「ああ、助かる。よろしく頼むよ。」


面倒な事はさっさと終わらせるかと、ステインは苦笑しながら後についていく。


(さて、やっと王都に入れそうだな。今日はもう面倒はごめんだ!)


ステインは空を見上げながら次面倒な事があったら全力で逃げようと決意を固めた。

やっと王都に入ります。

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