シトリンの会話とそう言えばアイツがいた!
マリン、ケルピー、シトリンと大いに食べ、笑い、喋った。それから皆んなで星を見ながら世界樹の袂で丸まって寝た。皆んなまだ疲れが残っていたのだろう。すぐに眠気が襲ってきて、気づいたら朝だった。
「んん?ああ、よく寝た・・・」
シトリンに寄り掛かって寝てしまっていた。マリンはケルピーの上で、すぴーすぴーと寝息を立てている。
「起こさない様にしないとな。」
毛布を持ってきてマリンにかけてやる。まだ日が昇ってきたばかりだ。日中あまり出来ない為、今の内に自分の訓練を行う。音が漏れない様に結界を張り、気功、魔力を巡回させながら体を動かしていく。程よく汗ばんできたところで、結界を解き、座禅を組む。
(気功と魔力は少しずつ力を上げている感覚はある。ただ、伸び代が少ないか。)
物心ついたくらいから1人で鍛えてきた。何が出来るのか?どうすれば出来るのか?何故か分かっていたし、本当に出来たのだ。力をつけ、力を磨いてきた。ただ、これから先、自分の能力だけでは足りないのかもしれない。魔人の力に襲われた時、その時に何が出来るのか?どう出来る?
瞑想に集中していると、誰かが足の上に乗ってきた。目を開けるとマリンがいた。
「マリン、起きたのか?」
「おはよ〜何してるの?」
「ああ、運動してたんだよ。マリンが起きたならご飯用意しないとな!」
ケルピーとシトリンも起きていた様だ。皆んなでご飯を食べると、ケルピーに質問してみた。
「とりあえず、しばらくゆっくりしよう。魔人の影響を受けたんだから用心するに越したことはないだろう?」
「そうだな。様子を見ながら活動した方が良いかもしれないな。」
「その間に、家を建て替えるか。2人とも大きいから家に入れないだろう?」
「む?ああ、すまぬ。私は大きさを小さくする事が出来る。ある程度は問題ない。」
「ワウウ!!」
ケルピーが言うと同時にシトリンも吠え、体を小さくする。2人とも便利だな〜。これならちょっと増築とリフォームすれば大丈夫か?後は、
「後は、食料か。食い扶持が増えたから買い込んだ食料だけだと不安だな。まあ、これは暫く大丈夫だし、いざとなれば買い出しをすれば大丈夫か。」
「ふむ、苦労をかける様だな・・・よし、私とシトリンが狩をしてこよう。私は少しなら野草やキノコなどもわかるしな。シトリンも覚えていけば良いだろう。」
「ワウ!!」
任せろ!!とばかりにシトリンが吼える。頼りにさせてもらおう!暫くはゆっくりと過ごしながら修行を合間にしていく方がいいだろう。無理に鍛えても意味はない。
それから何日かゆっくりと過ごし、俺は家の改築、食事の準備。ケルピーがシトリンを連れて狩りや、採集して来てくれる。マリンは自分の気分に合わせて俺のそばにいたり、ケルピーかシトリンについていく。
数日すると、急にマリンが「きゃ〜〜〜〜〜〜!!!!」と声を上げながらシトリンに連れられて駆け寄って来た。
「どうした?マリン?」
「シトちゃんが、シトちゃんが!!!」
「お父様。シトリンです。やっとお父様に頂いた力が馴染みました。」
「「おお!!??」」
ケルピーと俺は驚いて声を上げる!シトリンが喋った!!?
「え、ええ?シトリンも言語化の能力持ちだったのか?」
「い、いや、ハイ・フェンリルは戦闘種族。その様な能力はない戦闘型のはずだが・・・守護獣化してステイン殿の影響を受けたからだろう。」
「はい!お父様の力のお陰で皆さんと話せるようになりました!他にもどうやら気功が使える様になったみたいです!」
「シトちゃん凄い凄い〜〜〜〜〜〜!!!!」
どうやら守護獣化してパワーアップしたらしい。どこかで力を確認しておかないとな〜。ところで、
「シトリン、お父様ってなんだ?」
「ハイ!お父様の力で私、生まれ変わっていますので、お父様と!!」
「生まれ変わったの!?」
「ステイン殿、守護獣かは自分の身に主人となる者の力を取り込む。そうすると、身体に異物を打ち込む事となるのだ。自分の物以外の力が入ってくるのだ。そこで、身体を作り変えて馴染ませる。生まれ変わったとて間違いではない。」
「シトちゃん、ステインの子供?」
「マリン様、ステイン殿の力で生まれ変わったので父で間違いないかと。」
「お父様はお父様です!」
「いや、シトリンは親とかいないのか?」
「いません!生まれた時から1人でした!」
「ステイン殿、上級の、取り分け災害級などと呼ばれる魔獣は親を持たぬ。魔力溜まりから代替わりで産まれてくる為、1代限りの魔獣となる。今現在、ハイ・フェンリルはシトリンのみという訳だ。」
「世の中に出回っていない新事実だな〜」
「災害級や上級魔獣ほど無駄な争いはせぬ。知性が高いからだ。ゆえに、人間が目にする事も少ない。知らぬでもしょうがないと思う。」
「ステインステイン!!ステインはマリンのお父さん?」
話していたらマリンがそう尋ねて来た。マリンは俺の子供ではないけど・・・
「育て親という意味ではそうなるか?いや、まだ俺、結婚してないし。マリンの好きに呼べばいいかな?」
「ふ〜ん、わかった!じゃあステイン!」
「ステイン殿は親より兄かもしれぬな。となると、私は次男でシトリンは長女、マリン様は次女かと。」
「おお〜!!」
「お父様!妹が出来ました!」
「その方がしっくりくるな。ケルピーが長男の気もするが。」
「この聖域の主人は今はステイン殿だろう。ならば私は下につかねばなるまい。」
「シトちゃんお姉ちゃん?シト姉ちゃん?」
「マリン〜!お姉ちゃんだよ〜!!マリンはお姉ちゃんが守るからね!!任せて!」
なんか盛り上がるマリンとシトリン。それを見ながら、やれやれと眺めている俺とケルピー。家族ってこんな感じなのかな〜と穏やかに過ごす。一緒にご飯を食べて、風呂に入って、寝て。遊んで。家族でもいいか!!と笑いながら駆け回る妹達を見ていた。
それから何日かゆっくり過ごし、家の増築も終わり、皆んなでご飯を食べている時にギルドカードが通信を知らせて来た。
「ん?お父様、何か光ってるよ?」
「ああ、王都のギルドから通信だな。・・・ああ!!」
「どうしたのステイン?」
「ステイン殿?」
「バタバタしてたからすっかり頭から抜け落ちてた・・・ケルピー、ヤマタさん。ヤマタノオロチが見つかってたんだ。」
「なんと!?調停者が既に見つかっていたとは・・・」
「ああ。迂闊だったな〜。ヤマタさんは知り合いだから最初に逢いに行くべきだよな〜」
「ステイン、お出かけするの?」
「ああ、凄く暑い所に行くからマリンはキツイかもな〜」
「私は一緒に行った方が良かろう。」
「お父様。私は〜?」
「んん〜、何があるかわからないから皆んなで行くべきだよな。となると準備がいるか。そうだな・・・3日もあれば大丈夫だ。3日後に王都に行って買い出しして皆んなでピクニックだな!!」
「「ピクニック!!??」」
わ〜い!とはしゃぐ女の子チームを眺めながらケルピーと作業部屋に向かう。火竜の山に行くなら必要になる物をピックアップして、水の沢山入る錬金水筒と大容量の食料などが入る魔導袋を出す。
「ケルピー、取ってきて欲しい素材があるんだ。氷の結晶なんだけど。」
「氷の結晶か?世界樹からなら北の山にあるな。採集するだけならば1日もあれば充分だ。何に使うのだ?」
「出掛ける場所が火竜の山なんだ。火山が活きている山で、マグマに包まれて物凄く暑い。氷の結晶があれば氷結マントが作れる。俺の分はあるがマリンとシトリン、ケルピーの分を用意しないといけないだろう?」
「心得た。早速行くとする。」
「頼んだよ。俺はケルピーが帰ってくるまで作業を進めておく。」
ケルピーが走り去っていく。外から行ってらっしゃい!とマリンとシトリンの声がする。その後遊び始めたのか元気な声が外から聞こえる。その声を聞きながら、一人で作業するのを不思議と少し寂しいと感じるステインだった。
仕事が落ち着くまで更新ペースが落ちるかもしれませんが、良ければお付き合い下さい。
目を通して下さってありがとうございます。




