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調停者と増える家族

ゆっくり寝て、目覚めたのはお昼過ぎだった。

マリンもまだ寝ている。さらさらの青髪を撫でる。

昨日は大変だったからな〜。と思っているとパチリとマリンが目を覚ました。


「起こしたか?まだ眠いなら寝てていいぞ〜?」

「うにゅ〜〜〜」


モゾモゾと体を動かし、目をこすり、ニパっと笑ってこちらを見ると、


「おはよう〜。ステイン!」

「もう昼だけどな!・・・・は?」


今、もの凄い違和感があったんですが?気のせいか?


「マリン、ご飯食べるか〜?」

「はい!食べる〜」

「・・・おお!!マリン、言葉が!!」

「言葉?」


コテンと首を傾げながら不思議そうにしている。


「凄いぞ!マリン、言葉がちゃんと喋れてる!!」

「本当?・・・ステイン!!私、喋れる!!」


ガバッとマリンを抱き上げ、高い高いしながら天才じゃ〜とワシワシ撫でる。うきゃ〜!、と叫びながら喜ぶマリン。2人で騒いでいると、声がかけられた。


「起きたか、御両人。失礼するぞ。」

「誰だ!?」


ガバッと声のした方に振り返ると、窓の外から覗いている白銀の馬がいた。確かコイツは・・・


「ケルピー!!良かったの!大丈夫?」

「はい。我が女神。心配をかけましたが、お陰様ですっかり元どおりです。そちらの御仁にも礼をいう。」

「そうか、浄化の調停者だったな〜。元気そうで何よりだ。狼、ハイ・フェンリルは?」

「ガウ!!」

「おっきいワンワン!!元気になった〜?」

「キャン!!」


礼儀正しくお辞儀するケルピーの横で、尻尾を千切れんばかりに振り回しながら嬉しそうに吠えるハイ・フェンリル。いや、金色の毛皮を来た犬にしか見えない。めちゃくちゃデカイ犬にしか見えない!


「と、取り敢えずご飯にしようか?お前達も食べるだろう?」

「すまない。頂こう。」

「ワウ!!」


食べるとの事だし、急いで食事の準備に取り掛かる。2匹?にマリンを任せ、王都で買い溜めした食材を取り出す。時間もかけれないし、沢山用意しないといけないよな〜。簡単に肉を焼いてステーキ、後、パンは沢山ある。サラダはドレッシングと葉野菜、ベーコンであえるか。スープは昨日の夜のスープに継ぎ足して量を作る。


手早く料理を終え、外にテーブルと大きな布を床に敷く。料理を並べると、マリン達がやってくる。

各々、席に着き、ケルピーと狼は布の上に座っている。


「人間と同じ食事になるが、大丈夫か?大したものは出来ないが、沢山食べてくれ!」

「かたじけない。頂こう!」

「ワウワウ!!」

「頂きま〜す!」


皆んなでご飯をすすめる。マリンはフォークやスプーンの使い方も上手になっていた。ケルピーと狼は相当消耗していたのだろう。ガツガツと食べている。味は大丈夫そうかな?お代わりを配りながら皆んなでワイワイご飯を食べた。


ご飯を食べ終わって、お腹いっぱいになったマリンと狼はウトウトし始め、狼の上に抱きつくようにして一緒に寝始めた。俺はこの隙にケルピーと話をしてみた。何があったのか?どうして魔人の力を纏っていたのか?気になることは沢山あった。


「つまり、記憶が残っていないのか?」

「全くないわけではない。誰かに襲われ弱った私に何かを埋め込む者がいたのだ。ハッキリしないが襲ったのは魔人の力を持ったハイ・フェンリルだったのだろう。通常のハイ・フェンリルならいざ知らず、魔人の力が入っていた為苦戦したのだ。お互いに傷を負い、消耗した所で人影を見た。恐らく複数の人間だ。」

「人間が魔人の力を埋め込んだ?」

「うむ、朧げなが覚えているのはそこまでだ。後は其方に倒された後、最高神様が夢の中で信託を下さって現在に至る。」

「結局、何が起きているのかはわからないのか・・・」

「ああ、しかし私が狙われたのだ。12体いると言われている調停者が狙われている可能性があるかもしれぬ。」

「調停者は12体いるのか?」

「各神につき3体の調停者がいるのだが、現在は調停者も4体のみだ。神が魔人との戦いで消耗してより神界にて回復するまで調停者を維持する事が出来なくなっておる。然るに、現在は4対の調停者がそれぞれ地上に配置されておる。故に、心配なのは私以外の3体なのだが・・・どうするか。」

「取り敢えず注意をしてやった方がいいよな?後、出来ればバラバラにいない方がいいと思うが?」

「そうなのだが、注意は神々がしてくれようが調停者の居場所が分からぬ。基本、調停者は不干渉の決まりなのだ。」

「まあ、神も簡単に信託ができれば苦労はないか・・・。」

「うむ、時にステイン殿お願いがあるのだが?」

「お願い?」

「私とハイ・フェンリルをここに置いてくれぬか?」

「ケルピーはわかるけどハイ・フェンリルもか?」

「1度魔人の力に侵されておる以上、何があるか分からぬ。それに単純に戦力にはなる。備えた方が良いかと思ってな。ここには浄化の女神マリン様がおるからな。」

「確かに・・・今回はマリンを守りながら戦ったけど、無傷って訳じゃなかったしな・・・よし!ハイ・フェンリルが起きたら聞いてみるか!」


それから2人でこれからの事を話した。未だ最高神以外の神は信託を行えないらしい。差し当たって話の聞ける最高神の調停者に逢いに行くことで意見がまとまると、結構な時間話し込んでいたらしく夕方近くになっていた。


晩御飯の準備をしながら自分も考えを巡らせていた。今回の一件で自分自身の鍛錬も必要だと思っていた。魔人の力を前にマリンがいなければ浄化は出来ず、ケルピーやハイ・フェンリルを見殺しにしてしまう所だった。常識外の力を持つステインでも、さらに常識外の力を持つ者が現れたら?と、更なる発展を目指す決意をする。


「ステイン〜!!」

「ガウ〜〜〜!!」


マリンと狼が起きたみたいだ。こちらにマリンを乗せたハイ・フェンリルがやってくる。


「ステインステイン〜〜〜!あのねあのね、ワンちゃんお家にくるんだった!」

「ワフウ〜〜〜」


狼から降り立ち、ステインに飛び込みながらそう言って来た!狼は伏せの状態で此方を見上げている。


「マリン様。ちょうどその話をステイン殿としておりました。ハイ・フェンリルならば私達は歓迎します。それから私もお側にいる事としました。宜しくお願い致します。」

「ケルピ〜!!一緒!?これから皆んな一緒!!わ〜〜い!!!」


両手を挙げて喜ぶマリン。

(俺は賑やかなのは苦手だったはずなんだけどな・・・マリンが来て数日で俺も彼女から影響を受けているのかもな。)

とステインは考えると自嘲気味に少し笑う。


「ステイン・・・ダメだった?」


ションボリして聞いてくるまマリン。頭を掴んで、ちょっと乱暴に撫でてやる。


「いいや、構わないぞ〜〜〜!ケルピーはケルピーでいいけど、ハイ・フェンリルには名前つけてやらないとな!フェンリルも構わないか?」

「お名前!!?マリンの名前みたいに名前付ける!!」

「ワウ!!!」


マリンがう〜ん。と考え込み、ハイ・フェンリルは名前をつけられるのを尻尾を振りながら待っている。


「そうだな〜〜、金色の毛皮に狼。フェンリル・・・・あ!!雄か?」

「ガウガウ!!」


バシッとツッコミみたいに足を叩かれた。メスか!ごめんごめんと謝る。となると、


「シトリンでどうだ?ちょうど毛皮の色と似ている宝石なんだが、確か、良いエネルギーという意味があるんだったか?いやエネルギーを集めるんだっけ?とにかく、マリンを守ってやってくれ!」

「ワウ!!!」


ぱあっと狼が輝く!なんだ!?


「こ、これは!!守護獣化だ!!!こんな事が起こるとは!!」

「守護獣化?」

「ハイ・フェンリルだから起こり得たのだろうが、今、ハイ・フェンリルはステインの気を受け、受け入れた事で強固な繋がりができたのだ!!魔人の時と同じようなものだが、本質は全く違う。魔人は支配を、ステインは繋がりを持って力を分け与えたのだ!」

「ワウ〜〜〜〜!」


輝きが収まると、金に白銀のメッシュが入った狼になっていた。白銀、俺の髪の色だ。繋がり・・・


「まあ、要するに皆んな新しく家族になった・・・ってところかな?」

「家族!!一緒にいる?」

「ワウ!!」

「勿論ですマリン様。」

「そうだぞマリン!さあ、飯にしよう!話は明日だ!!今日は家族が増えたお祝いだ!!沢山食べて、いっぱい寝るぞ!!!」

「わ〜〜〜〜〜〜い!!!」


1人でいる事に慣れていたのに、こんなに家族が増えるとはな〜。これからが楽しみな様な、ちょっと不安な様な不思議な気分になるステインだった・・・

明日は更新しますが、明日以降はペース落とします。落ち着いたらペースアップで行きたいと思います!

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