プロローグ
初投稿です!
小鳥のさえずりを聞きながら、朝露の匂いを嗅ぎながら深呼吸をする。
(今日もいい天気になりそうだ)
軽く背伸びしながら空を見上げる。
(ここに暮らしはじめてどれくらいだろうか?)
人里離れた森の中、1人ひっそりと暮らし、人との関わりをなるべく断ち、隠居した頃のことを振り返る。
(完全に人と繋がらない・・・なんて昔は考えてたのだがな~)
思わず苦笑してしまう。1人で生きていくというのは当たり前だが中々難しい。料理が出来ても、掃除が出来ても、裁縫が出来ても、あれもこれも出来ても難しい。
(やっぱり、1人だと・・・)
寂しい。と考えそうになるのを否定するように頭を振る。
(まずは珈琲でも飲もう。)
家に入り、火にかけていたヤカンを確認し、珈琲豆を準備する。
(珈琲豆も買わないとな~)
珈琲の準備をしながら今日は街に買い出しに行く事を考え、何を買うかをピックアップする。
(そうだな、今日は久し振りに王都に足を伸ばすか?本もみたいし、暇潰しにはなるだろう。そろそろ、ギルドに顔出しておかないといけないし。)
出来上がった珈琲を飲みながら、予定を決めると、ギルドカードを取り出す。
(今日の夕方、ギルドに行きますよ~、と)
ギルドカードの通信機能を使いメッセージを飛ばす。
(このギルドカードもそろそろ潮時かな~)
カードを翻し、登録情報を呼び出す。
名前:ステイン
年齢:22
ランク:該当なし
職業:フリーランス
通信:オフ
(あ!やば、これ通信切ってたよ!)
ギルドカードの通信機能は本来緊急時に使用される。高ランク会員の呼び出し機能として使われる。
(あ~、怒られるかな?)
まあ、自分のランク[該当なし]だから大丈夫かと、開き直り、外出の準備をすすめる。
(さて、忘れ物はないよね?)
改めて、確認しながら外に出る。
(久し振りの王都だし、たまにはゆっくり行きますか。)
準備運動しながら、王都までの道程を考え、気を体に馴染ませる。
(魔法も好きだけど、体動かす方が性に合うんだよな~)
人里離れてのんびりしたいはずなのに、体を動かすとワクワクする自分に苦笑してしまう。
(さて、今日は小一時間で着くペースにしよう。)
地面を踏み締め、馴染ませた気を解放する。
ドゴンッ!!!
激しく空気を揺らし、とてつもないスピードで走り出す。
「・・・・・今日はいい天気だ!!」
笑顔で走り出す、この青年は、人里離れた場所に1人で引きこもり、自由気ままに生きている。
本人は認めていないが、
曰く、人外
曰く、化け物
曰く、魔王より魔王
曰く、英雄殺しの英雄
等々、色々な呼び名がある。
この物語は英雄譚ではない、冒険譚でもない。
たった1人の青年の物語であり、何だかんだで1人では生きれない男の、時に巻き込まれ、時にのんびり暮らしていく物語。
本人は知らない。
これから起こる数々の騒動と、彼のまわりに集まる仲間達の、そして、彼の過去との物語は動き出したことを。
では、そろそろ物語を語ろう。




