第六十九話 主人公VS主席
「やあ、久しぶり。結構強くなったらしいね」
「こっちもあれから特訓したんだ、あの時と同じとは思うなよ」
フィールドの中心部、やや開けた場所で二人で天川と一ノ瀬の二人は向き合っていた。しばらくさまよっていたところ、同じく歩いていた一ノ瀬とかち合ったのだ。
(おいおい、いきなりラスボスかよ! でも、いつかは倒さなきゃいけない相手だし、それなら万全な内に戦える方がいい!)
「ッ!?」
心の中でそう意気込みを掲げた瞬間、一ノ瀬がいつの間にか生成した剣を天川めがけて振り下ろしてきた。接近速度もまるで加速するための能力を使っているのかと思うほどだが、すべての同調率の水準が高い一ノ瀬だからできる芸当である。
「へえ、強くなったってのはあながち間違いじゃないみたいだね」
「こんなんで終わるわけにはいかないんでね」
間違いなく、入学試験の時の天川ではやられていた一撃。だが、それを天川は両腕についた黄金のアルマで受け止めていた。
勇気の欠片、天川の持つ能力であり現在同系統のスキルを持つ者は確認できていないレア能力である。黄金のアルマを身にまとうものであり、そのアルマそのもの性能は非常に高く同調率が続く限り再生も容易というものであった。
一ノ瀬は剣ごと自分を弾き飛ばす力に逆らわないようにバク宙をしながら距離をとり、鋭い刃で生成した刃を射出する。しかし、それも防御に徹した天川に傷をつけることはなく地面に落ちたのちに粒子となって消えた。
両腕と胴体を黄金のアルマに包んだ天川が迫ると同時に、一ノ瀬が新たな剣を生成し迎え撃つ。さらに力を込めて生成した剣は天川の拳を受けても歪むことはなく競り合う。一ノ瀬は一瞬の硬直を狙うように、剣から片手を離すと空いた左手からさらにもう一本の剣を生成し天川の右足に突き刺す。
「ぐあっ!?」
「まだまだ近接の動きが甘いね」
足の痛みに耐えながら左足での回し蹴りで一ノ瀬を狙うが、あっさりと剣を手放した彼は蹴りの届かないところまで一度下がると再度剣を作り出し襲い掛かる。
「すまねぇな、特訓はしたがまだまだ未熟でこっちに来てから動作が不安定だったんだ……だが、こっからギア上げさせてもらうぜ!」
「前菜のつもりだったけど、想像以上に楽しめそうだ。嬉しいよ」
天川の手には一振りの大きな剣が握られていた。騎士剣とも呼べるそれは、一ノ瀬が持つような剣よりもさらに大型である。それだけ大型の獲物となれば、取り回しも鈍重になるものだが勇気の欠片で強化された腕力で、まるで普通の剣のように振り回す。
「二重生成」
天川のパワーに対抗するように一ノ瀬は一対の剣を手に作り出す。赤と青、二つをそれぞれあしらった剣は合わさることで騎士剣を受け止め今度こそ互角の競り合いを起こす。
パワーで勝る天川は、強引に一ノ瀬の防御を突破しようと何度も剣を振るうが、一ノ瀬は受け止めるというより弾くように防御と確実な反撃を通していく。
(ダメージは大きくはないけど、このままじゃジリ貧だな……)
出てもいないはずの汗を肩でぬぐいながら天川は現状を分析していた。Cクラスでありながら、歴代の主席でも傑作と呼ばれている一ノ瀬相手にここまで戦えるのは快挙なのだが、それだけで天川は満足しない。
(一か八かだけど、このぐらいのリスク背負わなきゃ一ノ瀬のやつになんて勝てねぇ!)
天川はさらに同調率を引き上げると、上段から力を込めた振り下ろしを放つ。一ノ瀬はそれを二本の剣で受け止める。天川の力に耐えるために、一ノ瀬の方も両腕に力を込めて迎え撃ったその瞬間、
「武装・解除」
「!? 何ッ!」
一ノ瀬がさらに力を込めたのを見計らって、天川は意図的に騎士剣を消した。当然、力を込めていた一ノ瀬は支えを失って体勢が崩れるが、意識していた天川は違う。さらに、消した騎士剣はあくまで勇気の欠片で作ったもの。
つまり、もう一度生み出すことも容易であり、無防備な一ノ瀬の胴体めがけて最大の力を込めた突き刺しを繰り出す。
「おっっっりゃあああ!!!!」
渾身の一撃を受けて吹き飛ぶ一ノ瀬は砂煙を巻き上げ、天川の手にも当たった手ごたえはあった。
「鋭い刃・龍鱗の鎧!」
「あれを耐えるのかよ……っ!」
「認めるよ、君は強い。こっちも出し惜しみしている場合じゃなさそうだ!!」
全身を鋭い刃の鎧で覆った一ノ瀬は立ち上がる。その刃の鱗にも大きな傷こそあるが、それでも彼は立って能力を維持している。
そして、一ノ瀬は二つの剣を地面に突き刺すとそのまま鋭い刃の出力を引き上げていく。
「鋭い刃・龍神創造!!! これが今の僕の切り札だよ。さあ、キミは超えられるかな」
「噓だろ……このサイズ」
天川の目の前に現れたのは、一ノ瀬が突き刺した剣から地面が盛り上がり無数の刃が巨大なドラゴンの形を生成した姿。天川はその見上げるほどの巨体に、実装されていないはずの汗が出ている気がするのであった。




