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第五十八話 トイアルマ

 楽島に案内されてきたのは、縦長の部屋の先に的が一つ置かれた部屋。パッと見たイメージでは、刑事ドラマにでも出てくる射撃場のような場所であった。


「射撃系とかは一度試してみたいって人も多いからね。小さくても試着室や射撃室といった施設は作らなきゃいけないんだよねー、そのせいで店の内装があんなに狭くなっちゃってさー」


 あっけからんと話す楽島。彼女は射撃室の横のパネルを操作し、部屋の明かりを調整すると同時に奥にあった的が一メートルほどの距離にまで前進して来る。

 楽島は指輪型のアルマを人差し指に着けると、まるで拳銃のジェスチャーをするように手を構える。


「バン! いやー、単純な構造だけにメンテ無しでも動くものだね」

 

 そして、楽島が口で発砲音の真似事をすると同時に指輪に付けられた銃弾は発射されて的に命中する。


「さっきのペンライト型もそうだけど、このトイアルマを使うのは随分久しぶりじゃないかな? 童心に戻った気になって君も打ってごらんよ」


 楽島が話す通り、光るだけのサブアルマにほとんど射程のない弾丸を発射するこれらのアルマはトイアルマと呼ばれる代物である。これらは、最低限の装着インスタリアムを行うハードルが非常に低く、初めて使ったアルマがこれらであるという人も多い代物なのだ。

 構造が単純なだけに、普通科の方でも最初に完成を目標にするアルマとして人気なのだと話しながら、楽島は箱から取り出した光一に指輪型のアルマを渡す。


「一発使い切りだからよーく狙いなよ」


 冗談めかして話す楽島の言葉をよそに、光一は指輪を着けると同じく拳銃のジェスチャーを取り構える。指先から真っ直ぐ伸びた光が狙った場所に当たるイメージをしながら、僅かな呼吸や心臓の鼓動で指先が震えぬよう自身操作で微調整をしてから放つ。


「おー、ど真ん中。おめでとう、随分同調シンクロ率も上げたんだね。疲れた?」

「いや、これくらいなら平気ですよ」

「さっすが下位クラスとはいえ代表ともなれば違うんだね」


 光一は集中コンストレイションまで使ったものの、初めて使ったアルマということもあり同調シンクロ率は四十%ほどで止めている。これがキャノンなどのアルマであれば、一メートル先どころか数十メートルも砲弾が飛んでいくところだが、指輪型のアルマから放たれるのは一メートル先の的を少しばかり凹ませてポトリと弾丸が落ちるだけであった。

 この威力では、わざわざ同調シンクロ率を引き上げて性能を底上げしたところで威力はたかが知れている、だからこそおもちゃ(トイ)という名がついているのかと考えながら光一は指輪型アルマを楽島に返した。


「それで? 最後に聞くけどメインアルマの改造は本当にここでいいのかい? 私が言うのもなんだけど企業の方に行った方が丸いとは思うけど」

「そんな置きにいった考えじゃ、優勝なんて狙えないでしょう」


 楽島の警告じみたアドバイスにも、光一はきっぱりと言い切る。そこまで言われたらと、楽島は大きなため息を一つつくと頭を掻いてから、


「よし分かった! 引き受けたからには私も全力を尽くさせてもらうよ。今年度最初にこんな大きな仕事を任させるなんて、開発部冥利に尽きるからね。これはオマケさ、好きなの一つとっていって構わないから」


 気合を入れなおすように語気を強めながら宣言し、光一に先ほどまで持っていた特価品の入った箱。トイアルマの詰め合わせを渡すと、奥にある作業所の方にへと引っ込んでしまうのであった。



『行っちゃったね』

『そうだな。話が分かる人で良かったよ、こんな無茶な改造を引き受けてくれる人なんてそうそういないだろうし』

『それで、これからどうするかは決めてるのかい?』

『もうアルマを買う余裕はないし、訓練かな。まだまだ動きの最適化には時間がかかるようだしな』

『それじゃあ頑張ってね。期待してるよ』


 その一言を残してリースからの念話は途切れた。


「うしっ、気合入れていくか」


 小さく、しかし確実に自分を鼓舞するように声に出したら光一は一人訓練場の方に歩き出していくのであった。


 クラス対抗戦まで、残り一週間。






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