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第五十七話 新たなアルマ

『暇になっちゃったね』

『すぐにできるとは思ってないし、むしろ二十分程度で終わるだけ良心的さ』


 ぶらぶらと店内を見回す光一。どれもこれも初期型に比べれば性能はかなり高いのが、簡単な説明でもすぐに分かるくらいである。それでも既製品でグレードの高い品の方がスペックが高いとなれば、それらをよく購入している上位クラスとの戦力差を突きつけれられているようである。


『うわー、ここまで差があるとなると結構大変じゃない?』

『ここのスペック表はあくまで完全に力を発揮した時のものだからな、やりようはあるさ』


 かつて下位クラスの生徒が上位クラスの生徒をなぎ倒し、クラス対抗戦で輝かしい成績を飾ったのもそういう背景があったのだ。


『ちなみに光一はほかの装備に変更する予定はないの? サブアルマなら能力スキルの邪魔もしないんじゃない?』


 リースが話す通り、光一が頑なに右腕のアルマしか使わないのは自身が持つ能力スキルの都合上である。集約せし力(ディスペラード)の仕様は、メインアルマの数によって強化倍率が変わるのだがサブアルマはこの制約に引っかからない。


『それはそうなんだが……情けないが、手持ちだとサブアルマも買えないのが現状なんだよな』


 光一はバツの悪そうに頭を掻きながらサブアルマを手に取る。それは簡易キャノンというサブアルマで、一発しか打てない上に、弾の補充もできないが砲弾を発射するアルマであるキャノンの同等の威力を持つ人気のサブアルマである。

 遠距離攻撃の手段が一切ない光一にとって、サブアルマで遠距離の手段が手に入るのはかなり有用ではあるが、それにかかるAPは今の光一に出せるような代物ではない。もともと右腕を強化して殴るが一番の強みであるのに、その精度を落として遠距離手段を手に入れるのは本末転倒と言わざるを得ないだろう。


『あれ、でもこっちの方のやつなら一つくらいなら買えるんじゃないかな?』

『なんだこれ? 随分雑に入れられてるな』


 リースの声に指示され、店の隅に置かれた箱の前に行ってみると『大特価!』と手書きで書かれたポップが目を引くだけで、いくつかのサブアルマがまるでガラクタのように詰め込まれていた。他のアルマは大体カタログスペックの表が近くにあり、どんな性能をしているかある程度分かるのが当たり前である。だが、光一の前にあるサブアルマは値段以外の情報が何もない。


「おーい、ログの表示は大体終わったけど、見積もり出すからサインくれなーい?」


 いくら安いとはいえ、使い方の分からない代物を買ってもしかたない。光一がその場から動こうとした時、店の奥から楽島がひょっこりと出てきた。


「……分かりました、料金はこれでお願いします」

「ホントにいいの? これだけのAP出すならもう少し攻撃力とか同調シンクロ率の上げやすさとかにも振れると思うけど」

「その辺はこっちで何とかするんで」


 書類にサインを走らせながら話す光一を見て、それ以上は踏み込むまいとばかりに楽島は口をつぐんだ。そして、何か話題を変えようと光一の目の前にある箱に視線を移す。


「あれ、その箱気になる?」

「気になるというか……そもそもどうやって使うのかすらロクに書いてないじゃないですか」


 光一の言葉を聞きながら、楽島は箱の中に手を突っ込んでガチャガチャと探る。


「ここにあるのは私が一年の時に作ったやつや、適当に作った失敗作とかなんだよね。普通に売っても売れないから大特価ってわけさ」


 そう言いながら、楽島はボールペンほどの大きさのサブアルマを光一に投げ渡す。楽島も同じものを手に持っており、先についた金属製のキャップを取り外すとそこから黄色の光が発せられる。


「これは開発科だと最初に作らされるやつで、同調シンクロ率によって色が変わるってだけのペンライト型サブアルマだね」


 光一も手元のサブアルマに意識を集中し、キャップを外すと緑色の光が一直線に出る。


「おー、さすが戦闘科アサルト。このぐらいのサブアルマならいきなりでも私より同調シンクロ率高いんだね」

「これ、実用性あります?」

「少なくとも今年に入って売れた記憶はないかな」


 あっけからんと話す楽島は、特に売れていないことを恥じている様子はない。やはり実用に足らないものばかりと言っただけに、売れさえすれば儲けもの、買う方も期待はしないことという風潮があるようである。


「これはいいんじゃないかな、二つで一つの通信機だよ。もう一人に渡せば、ちょっとくらい離れていても通信ができる」

「襟章の通信機能でよくありません?」

「うっ……それを言われたら何もいえないね」


 次に出された耳飾り型の通信も、普段使う上では襟章についているチャット機能や通信機能で十分代替できる。これが襟章の通信が禁止された上で、チームプレーの重要度が高いならともかく、今は必要であるとは思えない。


「だったらこれならどうだ! こいつは珍しく攻撃にも使えるんだぞ」


 そういって楽島が取り出したのは指輪。だが、ただの指輪ではなくそれの横に小さな弾丸が接着されているような代物だった。


「一応裏は試す用のスペースになっているから来なよ、ちょっと驚くくらいには面白いよ」


 特価品が入った箱を持ち上げた楽島はが店の奥に入って行くのを見て、少しだけ店番のことを考えたが、よくよく考えれば自分がそんな心配をする必要はないと結論づけてから光一は楽島の後を追うのであった。


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