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歪んだ歯車  作者: 村上蘭
4/12

ダメ男なりの逆襲ですけど!



 四




   窮鼠猫を噛むと、言うが人間も例外ではない


 らしい浩一が坂田からもらった仮想通貨を失った


 のがちょうど一週間前だったが、それからのこの


 ダメ男の行動は早かった。普通の、人間だったら


 失った物が大きければ大きいほどがっくりきて暫


 くは動けないものだが、どういう訳か浩一はがぜ


 んスイッチが入ってしまったらしい、まず仮想通


 貨の事を徹底的に調べ出した。金が、ないのでち


 ょっと情報は古いが公立の図書館に言ってネット


 ビジネス関係の本を借りまくった。なけなしの金


 をはたいて、最新の仮想通貨の事が書いてある本


 も一冊だけは買った。そして、調べれば調べるほ


 ど仮想通貨の正式には暗号通貨と言うのだが、こ


 のネット社会が生み出した画期的なイノベーショ


 ンに浩一はある種の興奮と未来を確信していた。




 「これは、間違いなく来るな」




  浩一は、独り言をつぶやいた。仮想通貨の事を


 調べ出して一週間だが、最初は漠然とした予感だ


 ったのが段々とこれはひょっとしてすごい金儲け


 ができるという確信に変わって行った。確かに、


 坂田から貰ったビットコインを失った時にはさす


 がにショックを受けた。何しろ、あの時失ったコ


 インを日本円に変えると総額は三千八百五十万円


 だったのだ。俺は何て高いハンバーガーを喰って


 しまったんだろうと暫く落ち込んでしまっていた


 のだが、何といってもこの男の切り替えの早さは


 前にも言ったが天才的なのである。この時浩一は


 こう考えたのだ確かに失った物は大きかったが、


 代わりに得たものの方が遥かに素晴らしかったん


 じゃないのかと、それは同時に仮想通貨の影響力


 というものに驚いたという事に他ならない。ここ


 四、五年という短期間にこれほどの値上がりを見


 せるというのは株式とかFXの世界でもあるにはあ


 るが、その比ではないような気がするのだ。しか


 もビットコインの値上がりはもう爆上げに近いも


 のでまだまだ上がる様相を見せているのだ。




 「まだ、遅くはない仮想通貨は今始まったばかり


 でこの波に乗れさえすれば俺の人生奪還一発逆転


 も夢じゃない」




  とは言うものの、浩一にはあんまり気乗りしな


 いのだが、どうしてもやらなくてはいけない事が


 あった。それも、早くやらないと意味が無い電話


 の回線が料金延滞で切られる前じゃないと、浩一


 はおもむろに携帯をつかんだ。




 「はい、中村です」




  耳に聞きなじんだ母親の声が聞こえてきた。




 「もし、もし俺だけど・・・浩一」




  少し、躊躇して浩一が返事をした。




 「あ、浩ちゃん久しぶりねどうしたの」




  要件は、解ってるし言うこともはっきりしてい


 るのだが中々言い出せない浩一だった。それでも


 意を決して話し始めた。




 「実は、お袋におりいって頼みがあるんだけど」




 「解っているわよ、お金の事でしょ。それで幾ら


 いるの」




  察しの良い、親だなといつもながら浩一は感心


 していた。どうも、浩一のダメ男っぷりはこの母


 親の甘やかしに原因があるようだ。実は、浩一の


 金の無心は今日が初めてではなかった。何回も、


 会社を辞めている浩一はそのたびに今回のように


 父親には内緒で母親から金を借りていたのだ。金


 を、借りるとは言っても1回も返したためしはな


 いのだ。そんな、性格の浩一は人一倍厳格な父親


 とは当然合わなくて実家と疎遠になってからもう


 何年にもなる。




 「それで、今回はどの位いるの私も使えるお金が


 限られてるからあんまり多くは貸せないわよ」

 


  と、母親の法子が言った。




 「悪いけどさ、三十万程貸して貰えないかな何時


 になるか解らないけど必ず返すから」




  こんな、さらさら守る気も無い事を平気で言え


 るのが浩一と言う男。それを、鵜のみにして金を


 貸す母親も母親なのだが、まあ似たもの親子なの


 かもしれない。




 「お袋、いつも済まないこれで何とか急場をしの


 げるけど親父には内緒にしてな」




  それも紀子が、いつも聞く浩一のセリフだ。そ


 して、また母親の方の返事もいつも一緒の事を言


 っていた。




 「解ってるわよ、それより振り込みする口座はい


 つもの所でいいのね」




 「ああ、それは変わら無い悪いけど頼んどくね」




  これで浩一は、なんとか仮想通貨に投資する原


 資を得たのであるが浩一の頭の中では、この元手


 を使って億の金をつかむ計画を練っていた。犯罪


 では、ない筈なのだがこの中村浩一と言う少し、


 いやかなりいい加減な男が絡むと犯罪でもするよ


 うに錯覚するのは作者だけだろうか?ともあれ、


 浩一の人生奪還ゲームがこの日ついに始動したの


 だった。









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