8話 再会
美羽が落ち着くのを待って、部屋に入って話を聞く。
「今までどうしてたんだ?」
「えっとねー。お兄ちゃんがいなくなった後、お兄ちゃんを探すために情報を色々と探してたの。その時に第一王子がちょっかいをかけてきてたんだけど軽く流しながら調べてるときに、ニャルって人が協力してくれたの。最初は信用してなかったんだけど、お兄ちゃんのことをよく知ってたから信用して、近々王都に来るって言われたからここで待ってたの」
かなり面倒くさそうな状態になっていたんだな。それにニャルがここに行けって言っていたのはそういうことがあったからだったのか。多分俺と会った後に妹のほうに行ったんだろう。
「それでそっちの二人は誰?」
「えーっと、こっちが──」
「光の大精霊のシエラよ」
「わたしはシア!とーさまにつけてもらったの!」
「とーさま?」
「シアに名前を付けてからそう呼ばれているんだ」
「私は美羽、お兄ちゃんの妹です。これからよろしくお願いします!」
美羽がシエラたちに丁寧にお辞儀しながら挨拶をする。
「こちらこそよろしくね、ミウ」
「よろしくね!ミウ姉!」
「よろしくお願いします!シエラさん、シアちゃん!」
無事に挨拶も終わったので少し気になっていた、他の生徒についても聞いてみる。
「ほかの人たち?」
「美羽がここにいるからほかの生徒たちはどうしたのかなって」
「たしか私と同じくらいに半分くらいの人たちが城の外に出てったはずだよ。出てった後はわからないけどまだ残っている人は多いんじゃないかな」
なるほど。問題を起こしたりしそうなもんだけど大丈夫なんだろうか。
「そういえば冒険者登録とかしたのか?」
「うん、とりあえずEランクにはなってるよ」
「それじゃパーティー組んでおくか」
美羽ともパーティーを組んでおく。
まだ夜までは時間があるので外にでてちらっとだけ見た市場を見に行ってみよう。
よく見てみると食料品とかのほかに装飾品なんかの店もちらほらあった。
そういえばシアも戦闘をするなら武器が必要だ。後でシアに聞いて考えよう。
とりあえずみんなで別れてそれぞれで欲しいものや必要なものを買いに行く。
装飾品を売っている店を見てみると小さな宝石を埋め込んだペンダントやネックレスなどが売られていた。
みんなにプレゼントしてもいいがフェリルからもらったお金を使いすぎてもあれなので一人につき銀貨5枚くらいしかかけられない。
「いらっしゃい。何をお探しかな」
「銀貨5枚くらいで買えるものはありますかね」
「ああ、こっちのほうがそのくらいの値段で売っているよ」
店員に言われた所を見てみると銀細工に小さな宝石がつけられたアクセサリーが並んでいた。
美羽たちに似合うアクセサリーを選んで買うことにする。
「これらの値段はいくらですか?」
「そうだな、合計で銀貨10枚ってところだな。……さっきの嬢ちゃんたちにプレゼントするんだろ?おまけで少し引いといてやるよ」
こそっと店員が伝えてくる。
理由がなんにせよ値引きしてもらえるのはありがたい。
「それと、もし何かあれば中央通りにある『戦乙女の炉』って店に行くといい。きっと力になってくれるだろうさ」
アクセサリーについてのことだろうか?困ったことがあったら行ってみよう。
買ったものを受け取って、他の店での買い物も済ませていく。
買い物も終わり、空が暗くなり始めてきた。
合流地点に行くと皆すでに終わっていたようで集まっていた。
「やっと来たー」
「ごめん、待たせたか?」
「そこまで待ってないから大丈夫よ」
皆と合流して宿に帰る。
宿に帰った後渡そうかと思ったがこのまま渡すのもなんとなく嫌なので魔法付与みたいなことができればいいのだが…。
そうだ、明日露店の店員に言われた店に行ってみるか。
「明日は昼まで自由時間にして、みんなで集まって昼食を食べた後依頼をこなしに行きたいと思うんだが構わないか?」
部屋に入った後、明日の予定について相談する。できれば皆には隠して行きたいので自由時間ということにした。
「私はいいよー。街も見回ってみたいし」
「私も大丈夫よ」
「わたしも大丈夫ー」
大丈夫らしいので明日は『戦乙女の炉』に行ってみるとしよう。
それよりも寝る場所をどうするか決めないとな……、と思ったのだが女性陣の間でいつの間にか決まっていたようで、美羽が俺と同じ部屋で寝ることになっていた。
寝る前に、体の水拭きを美羽が取っていた部屋でそれぞれ済ませる。
寝るためにベッドに横になると、美羽がベッドの中に潜り込んできた。
「…どうした?美羽」
「久しぶりに一緒に寝たいなって思って」
やはり俺の行方が分からない間随分と心配してたようだ。
こんなに甘えてくる美羽も久しぶりなので好きにさせる。
「……ほん…とに…心配し……たん…だか……ら…」
一緒に寝て安心したのか、少しすると眠りについていた。
ゆっくり丁寧に美羽の頭をなでる。
目が覚めると朝日が昇っていた。
横には俺の腕を抱いて寝ている美羽がいる。
今は何時くらいなのだろうか。
〈今は午前6時です〉
時間をエーアから教えてもらう。ステータスにも表示できるようにできないかな?
〈可能です。ステータスにも時間を表示しておきます〉
ありがたい。
とりあえず横にいる美羽を起こす。「もう少し…」と言いながらも渋々起きる。
美羽が起きたところでシエラたちのほうも確認しに行く。
「シエラ―、シア―、起きてるかー?」
ノックした後声をかける。
少しした後シエラが扉を開けて出てくる。
「今起きたところよ。シアを起こすのを手伝ってくれる?」
「ああ」
中に入るとシアが寝相よく熟睡していた。特に寝覚めが悪いわけではなく、今から起こすところだったようだ。
シアを起こすと近くにあった俺の腕に抱き着いてきた。
腕を持ち上げようとしてみるとステータスのSTRが高いことやシアが軽いこともあり、軽々と持ち上がる。
それで少し遊んだ後、朝食を食べに下へと降りる。
食事の料金は宿の料金とは別になっている。
どれがおいしいかわからないので、野菜を煮たスープとパン、それとおススメのメニューを頼む。
おすすめのメニューは少し大きめの骨付き肉だった。肉は『鑑定』してみるとマイルドブルという魔物に肉らしい。魔物の肉だからといって食べれないわけではないようだ。
みんなで食べるには食べずらいのでナイフで切り分けて食べる。
食べてみると切った時も感じたが思ったよりも柔らかかった。味もおいしくてなかなかいける。
朝食も食べ終わったのでそれぞれの用事を済ませに自由行動にする。
皆と別れて一人で『戦乙女の炉』に向かう。
どうやらこの店は表では武器や防具、アクセサリーなどの金属製品系を売っていて、裏ではその商品を作ってる鍜治場らしい。
中に入ると店員が入ってきたのに気づいて声をかけられる。
「いらっしゃいませ!本日はどのようなご予定で?」
「ええと、露店の人に言われてきてみたんですけど…」
「露店…ですか?ちょっと待っててください」
店員が裏に引っ込んでいく。
商品を見ながら戻ってくるのを待っていると、数分後に戻ってきた。
「お待たせしました!こちらへどうぞ」
店員に裏の鍜治場に案内される。
そこで金属を打って鍛えていたのは昨日の露店での店員だった。
「あの人は昨日の……」
「おう、随分と早かったな。こっちに来な」
勢いに流されてそのままついていってしまう。
よく見るとギルドマスターに似ているような……。
〈同一人物で間違いありません〉
同一人物だったのか。すっかり気づかなかった。
「自己紹介してなかったな。俺はラインハートだ。まあ一応ギルドマスターもやらせてもらっている。それじゃあ早速鍛冶と魔法付与について教えるか」
「どういうことですか?」
「ん?教えてもらいに来たんじゃないのか?」
「それはそうですけど…。そんな簡単に教えていいんですか?」
「お前には才能がありそうだからな。教えようと思ったんだ」
ラインハートさんはしゃべりながら道具の準備は進めていく。
準備が終わると使う道具や設備について説明される。
もし土地を用意できれば必要な設備なんかをお金さえあれば用意してくれるらしい。
実際に金属を溶かす作業や加工する作業を見学しながら少しだけ手伝わせてもらう。
〈『鍛冶』『金属加工』スキルを習得しました〉
次に魔法付与について教えてもらう。
魔法付与には2種類あって、魔法そのものを付与する方法と、魔力回路を刻む方法がある。
前者は常時発動する魔法付与で、付与する際の魔力量とかで効果が増減するのが特徴で、後者は使う際に魔力を流す必要があるが、魔力回路や魔法陣を刻むだけで使用可能で、使う際に流す魔力量や回路の複雑さなどで効果が増減するのが特徴らしい。
試しに魔法陣を刻む方をやらせてもらう。
〈『彫金』『魔法道具作成』『魔法付与』スキルを習得しました〉
魔法付与はしていないのだが何故か習得していた。魔法陣を刻んだからだろうか?
終わったあたりで外から鐘の音が聞こえてくる。どうやらお昼になったらしい。
「すいません、お昼からは用事があるのでこれで」
「そうか、また時間があるときにでも来てくれ」
店を出て合流予定の宿に行く。
みんなちょうど来たのでそのまま昼食をとりに中に入る。
昼食を食べながら午後のことについて話す。
「とりあえず取った依頼は薬草の採取2つとスライムの駆除だけど」
「薬草を見つけるのはとくいー」
「スライムだったら出てくる場所案内するよ!」
「3つとも同じ場所でできるのね」
一緒にこなせる依頼を持ってきてくれたメルティナさんには感謝しなくては。
それと頼れる仲間たちにもね。