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7話 王都当日

 王都へ行く当日。

 朝早くからフェリルに乗って森を抜けて、王都まで大体半分くらいといった場所で降ろしてもらう。


「こんなところまでで済まないな」

「ここまで送ってもらっただけでありがたいよ」

「街についたら冒険者ギルドに行くといい。冒険者になっておけばいろいろと便利だからな」

「わかった。旅に出る前にはそっちに行くよ」


 別れようとしたが腰に抱き着いていたシアに止められる。


「どうしたんだ?シア」

「かーさま。わたし、とーさまについていきたい」


 これは俺だけで決めることではないだろうからフェリルに聞いてみる。


「シアが自分で決めたのだから構わないさ。お前と一緒であれば大丈夫だろうしな」


 フェリルがいいなら構わないが…。

 

「わかった。シアもつれていくよ」

「ありがとう、とーさま!」


 嬉しさの余り、シアが飛びついてくる。

 顔のほうに来たのでバランスを崩して少しよろめく。


「私も案内役としてついていっても大丈夫?」

「もちろん。ついてきてくれればうれしいよ」


 エーアでもスキルとかを使って認識している情報しかわからないので知らない情報を教えてもらえるのはありがたい。

 話もまとまったのでフェリルと別れて街へと向かう。

 道中では何事もなく、無事に王都の入口へとたどり着く。

 門のところでは身分証らしいものを見せている。

 俺たちは持っていないのであらかじめ考えておいた理由を言っておこう。


「身分を証明できるものの提示を」

「すみません、魔物との戦闘中に無くしてしまったのです」

「そうか、それなら銀貨1枚だ」


 フェリルからもらっていたお金を三人分払う。

 もう少し何かあると思ったがあっさりと通された。

 王都に入れたのでまず先に冒険者ギルドによっておく。

 冒険者ギルドに入ると受付に少し人が並んでいるのが見える。

 その複数ある列の間に空いている部分があった。受付嬢がいないのかと思ったが、人がいなくて暇らしく机に突っ伏している。

 人がいないのならちょうどいいのでそこへ向かう。


「あの野郎、並びやがったぞ」

「何も知らないのか?」


 何かヒソヒソと聞こえたが気にせずに受付の前に行く。目の前に来たが突っ伏しているので気づかれていない。


「あのー、すみません」

「はっ!ごめんなさい!気づかなくて」


 今まで突っ伏していたので顔が見えなかったが、他の受付嬢よりもかわいく肩くらいまでの茶髪がよく似合う見た目をしていた。

 さっき小声で聞こえていた声ってもしかしたら……。いやそんなことを考えるよりも目的を果たさないと。


「いえ、大丈夫ですよ。えっと、登録に来たんですけど」

「冒険者登録ですね。それでしたらこちらの水晶に手をあててください」


 手を当てるとステータスが読み取られているようで水晶の上に表示されている。

 表示は『偽造』で変えているステータスのようだ。


「これで完了です。こちらをお受け取りください」


 受付の人からスマホくらいのサイズのカードをもらう。


「これが冒険者カードです。ステータスと繋がっているため常に更新され続けます。ステータスにも冒険者ランクなどのステータスが表示されています。そのためその情報からカードを作り直せています。ちなみに作り直すにはお金がかかりますので気を付けてください」

「わかりました。それでついでといってはなんですが、手ごろな依頼を教えてもらってもいいですか?」

「はい、いいですよ!え~っと……」


 受付嬢が依頼を探しに奥へと消える。それを見ていた一人のがたいのいい冒険者がこっちに近寄ってくる。


「おい、新人さんよ。あの子、メルティナはお前みたいな新人なんかにふさわしくねぇんだよ。俺たちみたいな強い冒険者にこそふさわしいんだよ。だからよ、さっさとほかの受付嬢のところへ行ってくんねぇか」


 やっぱりこういうことだったか。

 このまま相手をするのも面倒だがいうことに従うのも今更めんどくさい。


「俺たちはあの人のところが開いていたので行っただけなのですが」

「登録は終わったんだろ?だったら自分で勝手に依頼選んで別のとこで受けてこいや」

「あの人はあなた専用の受付嬢か何かなのですか?そうでないならそんな命令を聞く義務はありませんが」

 

 まるで自分のものとでも言わんばかりに言っていたのでつい言ってしまった。するとその言葉でキレたようで額に血管を浮かばせていた。


「あいつ言っちまいやがったぞ!」

「おいやべぇぞ。あいつ死んじまうんじゃねぇか?」

「誰かギルマスでも呼んで来いよ」


 周りの冒険者の話を聞いていると相手はどうやらC級冒険者らしい。ランクなんかの話はまだ聞いていないので詳しくはわからないが多分中級といったところだろう。


「てめぇ…どうやら死にてぇらしいな。そんなに死にたいなら今すぐ殺してやるよ!」


 相手が剣を振りかざして突撃してくるが、ニャルとのハイレベルな戦闘をした今ならその動きがゆっくりに見える。


〈スキル『思考加速』を習得しました〉


 剣を軽くよけるとますます怒ったようで剣を振り回しながらこっちに向かってくる。

 このままよけ続けてもいいのだが周りの人に迷惑なのでいい加減止めよう。

 剣をよけた後、腹に掌底を軽く当てて腕を抑えて床に抑え込む。


「いったい何の騒ぎだ!」


 声がした方向を見るといかつい顔の中年男性が現れていた。どうやらあの人がギルマスなのだろう。


「お前ら説明しろ!」

「始めはいつものことだよギルマス!ジャコがこの新人にケンカを売って、新人が言ったことに怒ったジャコが先に手を出したんだ。その後は見ての通りジャコの完敗さ」


 周りにいた冒険者が笑いながら説明する。


「そうか、すまんな新人。登録して早々迷惑をかけちまった。こいつは前から色々問題を起こしてたんだが罪に問えるようなことはしていなくてな。今まで困っていたんだ」

「俺はむかついてつい言ってしまっただけですから」

「まだ街には居るつもりなんだろう?」

「ええ、そのつもりです」

「それなら明日にでもまた来てこの件の詳しい話を聞かせてくれ」


 特にする予定もないし構わないだろう。


「わかりました」

「お待たせしました!……ってあれ何かあったんですか?」


 どうやら依頼選びをしていたメルティナさんはこの騒ぎに気付いていなかったようだ。


「いや、何でもない。お前らも仕事に戻っていいぞ!」


 ギルドマスターがそういうと皆それぞれの仕事に戻っていく。

 ただ一人状況がわかっていないメルティナさんが慌てているだけだ。


「本当に何があったんですか?」

「気にするな。一人の冒険者が入ったばかりの新人と喧嘩して負けただけだ」


 ギルドマスターがジャコを担ぎながら裏へと消えていく。


「ところで、依頼を見せてもらえますか?」

「あっ!そうでした。アカツキさんは登録したばかりなのでFランクになっています。依頼は同じランク以下か、パーティーを組んでいると1ランク上の依頼を受けることができます」


 パーティーがあるのか。どうやって組めばいいんだ?


〈ステータスから組むことができます〉


 エーアに言われた通りに操作すると無事にパーティーを組めた。

 パーティーを組むと、メンバーの情報がステータス欄からも見ることができるようになった。しかし、偽造された情報なんかはそのままらしい。


「一応Fランクの依頼を用意しましたがどういたしますか?」


 依頼を見てみると薬草の採取や郵便物の配達などの依頼が大半だ。

 とりあえずこの中からいくつか選んで受けることにする。


「この三つを受けられますか?」

「わかりました。では冒険者カードをお願いします」


 カードを台の上に置くように言われたので置くと、一瞬だけ光った後カードを返される。


「これで完了です。無事に成功することを祈っています」


 終わったようなのでメルティナに別れを告げてからギルドから出る。

 この後の予定もないし、宿をとるためにもニャルから教えられた宿へと向かう。

 途中で市場なんかも見ながら宿についた。宿の名前は「精霊銀の宿」と書かれている。

 中に入るとテーブルで食事をとっている人などがいる。

 

「部屋は空いてますか?」

 

 受付に向かい部屋をとれるか確認する。


「ああ、空いてるよ」

「シエラ、部屋どうする?」


 女性であるシエラを気遣って部屋を分けるか聞く。


「別に分けなくても大丈夫よ」

「それならベッドが二つの部屋を一つお願いします」

「あいよ。1泊で銅貨5枚だ」


 とりあえず10泊分の銅貨50枚を払う。

 貨幣に関しては銅貨100枚で銀貨1枚、銀貨100枚で金貨一枚になっている。そして銅貨10枚で大銅貨1枚、銀貨10枚で大銀貨1枚、金貨10枚で大金貨1枚となっている。ちなみに銅貨1枚は円で大体100円くらいだ。

 用意された部屋に行き、ベッドに腰を下ろす。

 ニャルから聞いた部屋はこの部屋のすぐ隣だった。せっかくなので早速行ってみる。

 気配から部屋の中にいることはわかったので扉をノックする。


「今行きまーす」


 部屋の中から聞き覚えのある声が聞こえる。この声って──。


「お待たせしま……し…た……」


 扉から出てきたのは紛れもなく、妹の美羽だった。城で見ていた制服ではなく、俺が着ているようなこの世界での普通の服にちょっとした軽鎧を身に着けていた。


「お兄ちゃん!」


 美羽がものすごい勢いで飛びついてくる。ステータスが上がっているおかげで倒れることなく軽く抱きしめる。

 

「お兄ちゃんがいなくなってからずっと探してたんだからね!おかえり!お兄ちゃん!」

「ああ、ここは家じゃないけどただいま。美羽」


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