6話 王都へ行く前日
「やあ、やっと来たね。待ってたよ」
ニャルは前会ったときと同じ態度で話しかけてきた。
ずっと尋常じゃない気配を漂わせている人物とは思えない。
「それで、こんな気配出しといて何の用だ?」
「君を試しに来たのさ」
そういったニャルの後ろには縄で縛られたフェリルたちがいた。
縄で縛られているにしては、シアが頑張って隠してはいるが楽しそうにしているのはなぜだろう。
「君に聞くのはただ一つ。彼女たちを助けるために僕と戦うか、彼女たちを見捨てて逃げるかだ」
「そんなこと決まってるだろ。世話になった人たちを見捨てて逃げるわけないだろ」
「うんうん。君ならそういうと思っていたよ。早速戦おうじゃないか」
ニャルがパチンと指を鳴らすと一瞬で周りの風景が変わる。
見た目自体はさっきまでいた森と同じだが、雰囲気が違う。
「結界を張ったから周りを傷つけることはないよ。だから全力でかかってきなよ?」
視認できない速度でニャルが距離を詰めて正拳突きのようなものを放ってくる。
とっさに腕で防御したが、後ろの木まで吹き飛ばされる。
「おっと、防御するとは。神見習いだけはあるね」
しゃべりながらも手を緩めずに追撃し続けてくる。
間一髪で防御や回避をして致命傷を受けないようにするだけで精いっぱいだ。
「いいねいいね!ここまで致命傷を与えられなかったのは初めてだよ。さては『危険感知』でも獲得したかな?」
「ああ、その通りだよっ!」
一瞬手が休んだ隙に反撃の蹴りを入れるが軽くかわされてしまう。
さっきから感じていたが本気で俺を倒そうとしているようには見えない。
本気でやっていたのなら、最初の一撃で俺を殺すことだってできていたはずだ。
それにシアたちは争った様子もなく、縄で縛られていた。
さすがに神獣であるフェリルが抵抗しないわけがない。
〈今までの状況からそう考えられます、マスター〉
「その感じ、もしかして気づいちゃった?」
「なんとなくだけどな」
「そっかー。気づかれちゃったかー。それじゃあもうおしまいだ」
結界が解除されたようで周りの景色が元に戻る。
「とーさまー!」
元に戻ると同時にシアが飛びついてくる。うしろには縄をほどいたシエラとフェリルが笑顔で立っている。
「どうしたんだ、シア?」
「えへへー」
「うれしいのさ」
「うれしい?」
「今までこの森で敵なんていなかったからな。守られたことなんて1度もなかったからそれがうれしかったのさ」
「なるほど」
「そーいえばステータス確認してみたら?あれだけの戦闘してたらレベル上がってるんじゃない?」
確認してみるとかなりレベルが上がっていた。
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NAME:雨霧 暁
年齢:16歳
性別:男
種族:人族(異世界)
レベル:100
クラス:神見習い
状態:普通
能力値
体力:1,000,000,000/1,000,000,000
魔力:1,000,000,000/1,000,000,000
聖力:1,000,000,000/1,000,000,000
神力:1,000,000,000/1,000,000,000
STR:100,000,000
INT:100,000,000
VIT:100,000,000
AGI:100,000,000
MND:100,000,000
特殊能力
万能身体Lv- 神核意思Lv-
固有スキル
スキル
異世界言語Lv- 完全鑑定Lv- 無限収納Lv- 苦痛耐性Lv10 神力操作Lv10 魔力操作Lv10 聖力操作Lv10 並列思考Lv- 並列意思Lv- 錬金Lv10 気配感知Lv10 魔力感知Lv10 聖力感知Lv10 神力感知Lv10 危険感知Lv10 危険探知Lv10 魔力探知Lv10 聖力探知Lv10 神力探知Lv10 道具作成Lv10 剣術Lv10 二刀流Lv10 睡眠耐性Lv10 恐怖耐性Lv10 覇気耐性Lv10 瘴気耐性Lv10
加護
創世神の加護
称号
異世界の勇者 神と対話した者 神の加護を受けし者 異世界から召喚されし者 神の力を持ちし者 邪神を倒し者 人を超えし者 神見習い 神獣の友
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ステータスの桁がおかしすぎて二度見してしまった。
レベルが100になってステータスも100倍近くに上がっていて、スキルも『恐怖耐性』『覇気耐性』『瘴気耐性』が増えていた。さっきのニャルとの戦闘の時に獲得したのだろう。
ほかのスキルはポーションや簡単な道具を作ったり、森を探索したりしていた時に獲得していた。
「うわーえげつない上がり方してるね。うーん、『隠蔽』や『偽装』を持ってないのかー。よし」
ニャルが手を向けてくると光が俺に向かって飛んできた。
〈ニャルエミルトからスキル『隠蔽』、『偽装』を譲渡されました〉
確認してみると確かに追加されていた。
「『隠蔽』はスキルとか隠せるし、『偽装』は本来のステータスとかと違う表示にできるからうまく使ってね」
「それはありがたいけどどうしてこれを?」
「それはほら、君のステータスとかが他人にばれたら大変だろ?それにそのスキルは獲得するのが少し面倒だしね」
「そういうことだったら遠慮なく」
早速使ってみよう。
試しに城で見たクラスメイトのステータスと同じくらいに変えてみて鑑定してみるとその通りになっていた。
これは便利だ。普段はこれよりも少しだけ高くしておこう。
「そーいえば明日王都に行くんだっけ?」
「ああ、そうだけど」
「それだったら行ってほしい、いや行くべき場所があるんだよ」
「場所?」
ニャルからその場所を教えてもらう。宿屋らしいが、人に会ってほしいのだろうか?
「まあ行ってもらえればわかるよ。さてそろそろ失礼しようかな」
「そうか。またな、ニャル」
「うん、またね。っと何か用があったらこれ使って呼んでくれれば、駆け付けるからねー。じゃーねー」
札のようなものを渡してニャルはこの前とは違って空を飛んで去って行った。
その後は王都へ行くための準備を再開した。
そういえば『偽装』とかで聖剣や魔剣の表示をどうにかできないのだろうか?やってみるとうまくいったので、普通の鉄の剣よりも多少強い表示にしておく。
明日はフェリルに乗って途中まで行くが、早めに行っておくのに越したことはないので早めに寝ることにした。
昼間の件がよほどうれしかったのか、シアが寝る時もずっと引っ付いてきたが可愛かったので良しとする。