4話 神獣の子供と新しい意思
「やはり予想外な人物だな、お主は」
「私もびっくりしすぎて声を全く出せなかったわよ」
どうやら大精霊や神獣からみても変な行動だったらしい。
それよりも
「もっと色々なことを教えてもらえますか?」
「ん?ああ。ハーリア様からも言われているしな。引き受けさせてもらおう」
よかった。
さっきのことで断られたらどうしようかと思っていた。
「そういえば自己紹介をまだしていなかったな。改めてわたしは神獣の銀狼であるフェリルだ。私に対しても普段の口調で構わんぞ」
「私も改めて、光の大精霊のシエラよ。よろしくね」
「こちらこそよろしく。それでなんだけど、精霊って何?」
魔法なんかに関しては王国で習ったが、精霊などについては聞いたことがなかった。
「精霊っていうのはね、自然の中に常に存在しているの。まあ、大多数が意思がない精霊なんだけど、年月経ったりすると意思を持って小精霊になるの。そこから成長していくと中精霊、大精霊って変わっていくの。精霊を使った魔法は自然に宿ってる精霊を媒介にして発動するわね。精霊と契約するときには小精霊とが基本的ね」
精霊と契約か…いずれしてみたいな。
精霊について聞いたから、次は神獣について聞いてみよう。
「神獣についてか。神獣とは神々に、世界を守るために作られた生物のことだ。私のような銀狼や金狐、他にはゴーレムタイプなんかもいたはずだ。ちなみに神獣はたいてい人型に変身できるぞ」
そういうとフェリルは、狼から人に姿が変わる。
きれいな銀髪の上に狼型の残りである耳が、後ろのほうには尻尾が生えていた。
それにかなりいろんなところが大きかった。
変身したとき用なのか、簡素な白いワンピースをすでに着ていた。
「おっとそうだ。私には娘がいるんだ」
木々の間から小さな銀狼が駆けてきた。
自分のところまで来ると、手をなめてきた。
「その子が娘だ。どうやらアカツキのことが気に入ったようだな」
小さな銀狼が舐めるのをやめて少し離れると、フェリルのように変身をした。
140センチくらいの背丈、フェリルと同じ銀髪に狼耳と尻尾、宝石のような碧い色の瞳、膨らみかけの胸、人形のような整った顔。
それらが組み合わさっていて、つい見とれてしまった。
「名前、付けてほしい」
「え?」
「まだ名前を付けてないんだ。娘はアカツキにつけてもらいたいらしい」
「いいんですか?」
「ああ。娘がつけてもらいたがってるんだから」
そういうことなら考えてみるが。
名前…名前か…。
「うーん、そうだなシアっていうのはどうだ?」
「シア、それが私の名前?」
「ああ、そうだ」
俺がそういうとシアは嬉しそうな顔でこちらに抱き着いてくる。
「ありがとう、とーさま!」
「父様!?」
「名前つけてくれたから、とーさま。だめ?」
「い、いやだめではないけど…いいのか?」
「かまわんよ、別に父親を亡くしたわけではない」
それならいいんだが。
それにしてもシアからとーさまと呼ばれるとなんだか変な気分になるな…。
まだ高校生なんだけどなぁ…
「とーさまは何してるの?」
「えっと…フェリル、シアのお母さんに色々と教えてもらってるんだよ」
「そうなの?じゃあシアも教えてもらう!」
というわけでシアも一緒に教えてもらうことになった。
といっても魔力や聖力の操作などについてだが。
そのおかげで『魔力操作』や『聖力操作』のスキルが手に入った。
そういえばスキルを獲得したときとかに聞こえる声は何なのだろう?
確か『並列意思』やら『並列思考』を獲得していた時から聞こえ始めたが。
〈私はマスターをサポートするために誕生しました。マスターが情報過多による激痛で苦しんだ際、緩和するために固有スキルが自動で『並列思考』を獲得しました。『並列思考』を最大限活用しても緩和されなかったため、送られてきていた神力の一部を流用して『並列意思』を獲得しました。その際に私が誕生したのです〉
な、なるほど。
でも、それならなんで早く出てこなかったんだ?
〈今までの状況で出てしまうとマスターをさらに混乱させてしまうだけと判断したためです〉
自分のことを考えての行動なら文句は言えないな。
確かにあの状況で出てこられてもさらに混乱していただろう。
それにしても、このままだと名前がなく呼びにくいので名前を付けよう。
そうだな……エーアなんてどうだろうか?
〈『並列意思』への名付けにより、スキル『並列意思』が特殊能力『神核意思』へと進化しました〉
〈ありがとうございます、マスター!これからマスターのお役に立てるように頑張ります!〉
さっきまでの会話と違い、言葉から感情が感じられた。
どうやら名前を付けたことによって能力が上がって感情を持ってしまったようだ。