1話 神様と勇者召喚
気が付くと一面真っ白な空間にいた。
ここに来る前の記憶は高校へ行く途中の道で雷に打たれた所までしかない。そして目の前には同じくらいの年齢に見える少女が椅子に座っている。
この状況を考えるに、どうやら自分は死んでしまったようだ。目の前にいる少女も見た目は少女だが、神様とかなのだろう。
「雨霧 暁さん、あなたはすごく物分かりがいいんですね。こちらとしてはその部分の説明の手間が省けるのでうれしいのですが」
どうやら神様(仮)は考えていることが読めるようだ。試しに声を出そうとしても出すことができなかった。肉体そのものが無いようで、自分の体が動かせない。
「ええ。あなたは死んでしまったので魂しか存在していません。一応、自分の体を想像していただければ肉体の代わりを形作れるはずです」
言われた通りに記憶の最後にある制服姿での自分の体を思い浮かべると、制服姿の自分の体が形作られた。
少し体が透けているが、体ができたことで声が出せるようになった。
「ええと、あなたは神様ということでいいんですよね?」
「はい。私たちはあなたたちが認識されている神とあまり違いはありません。それではこれからの説明をさせていただきます。まず初めに説明しないといけないのはあなたが死んでしまったのはこちら側の不手際だということです」
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話を要約すると自分が死んだのは、神々が酔っ払った状態で戦った際に攻撃が勢い余って地球に落ち、それが雷として自分に落ちてきたかららしい。
それにより本来ならすぐ生き返らせるなり、ある程度の望みをかなえたりするらしいのだが、異世界からの召喚魔法により俺たちの学校の生徒が勇者として召喚されてしまうというのだ。学校の生徒は、中学校も一緒にあるため全生徒数は軽く千人を超える。そんな数を勇者として召喚するには流石に多すぎるというものだ。
しかも俺には中学生の妹がいるのだが、生徒全員が召喚されるということはその妹も召喚されるわけだ。
その異世界というのは地球の小説なんかによくあるスキルや魔法なんかがある世界らしい。神様曰く流れてくる日本人なんかが多く、そのため分かりやすいようにステータスなんかもあるらしい。
それならばとその召喚に入れないかとお願いしてみた。
「確かに可能ですが本当にいいんですか?」
「はい。それに妹も召喚されますし、こんな機会滅多にありませんから」
妹も俺も異世界系の本が好きでよく読んでいて、両親も同じように好きで楽観的なので一言異世界に行ってくるといっておけば、お土産でも待ってるぞと言ってくるだろう。
「それならばこちらとしてもありがたいのですが、ただ異世界に送るだけでは私たち神の沽券にかかわりますので何か望みはありますか?」
「いいえ、特には。成り行きで手に入れてしまったのならともかく、自分から望んではせっかくの異世界転移がもったいないですから」
「そうですか…では代わりと言っては何ですが私の加護を授けておきます。加護でしたらあまり迷惑をかけずに役に立つはずですから。それでは色々と準備をしますので少しお待ちください」
神様の周りに純白の翼が付いた天使のような見た目をした人達が現れて神様がその人たちに次々と指示を出していく。
そういえばまだ神様の名前を聞いていなかった。神様の周りに人がいなくなったタイミングを見て聞いてみよう。
「そういえば神様のお名前は何というんですか?」
「まだ名乗っていませんでしたね。私の名前はハーリアといいます。是非覚えてくれると嬉しいです。っと、そうしてる間に準備が整ったようです。何かしてほしいことは他にありますか?」
「では、両親に手紙を渡したいのですが」
「わかりました。この紙に書いてください。あなたが異世界に送る際に両親に届けておきましょう」
紙とペンを出してくれたので簡潔に起きた出来事と異世界に行くことについて書いておく。
生活なんかは勇者召喚されるということなので多分大丈夫だろう。
「あとはもう大丈夫です」
「それでは異世界に送ります。ああ、もし何かあれば迷いの森と呼ばれているところの中にいる人物を訪ねてください。それではよい異世界生活を」
ハーリア様が言い終わると同時に俺の周りが光って見えなくなっていく。
光るのが終わると俺は荘厳な空気を漂わせる神殿のような広い部屋にいた。
周りには俺以外の生徒たちもいて、地面にファンタジー系の絵で出てくるような魔法陣のようなものが描かれていた。
生徒たちの間から妹の姿を見つけることができた。
よかった。ちゃんと召喚されているようだ。
「おい、美羽。こっちだ」
妹に呼びかけるとあっちもこちらに気づいたようでこちらに駆け寄ってきて抱き着いてきた。
「お兄ちゃん!よかった、お兄ちゃんのこと見えなかったからいないんじゃないかと思って心配してたんだから」
「わかったから落ち着け。後でいくらでも抱き着いていいから今はやめろ。変に目立つだろ」
そういうと美羽は渋々といった感じで抱き着くのをやめてくれる。
雑談を交わしていると生徒たちの間から王様らしき人物がこちらに歩み寄ってくる。
そしてこちらの大人数を確認すると横にいる人に話しかける。
「これは一体どういうことだ?」
どうやらこちらの人数はあちら側でも想定外だったようだ。