序章
「開け!黄金の扉!!」
金髪の青年が、手を振りかざし呪文を唱えると黄金の扉が開き......
「チリチリチリチリーン!!!!!」
目覚ましの音で起きる。
月曜日午前6時00分06秒と、デジタル時計に表示されている。
ベッドの上で、少し考える。
「さっきの夢は、何だったんだろう?」
考えたところで、分かる問題ではないことにはもう気付いていた。
「変な夢。」
吐き捨てるように言い、制服に着替える。
僕が通っている私立高校には、6時半の電車に乗らないと間に合わないのだ。
「行ってきます。」
誰もいない家に、あいさつを済ませて出発する。
まずは朝ごはんの調達に、コンビニに寄る。
「いらっしゃいませ~。」
いつものおばさんだ。
ランチパックと牛乳を手に取り、会計を済ます。
コンビニを出ようとしたその時、
「あぁ、お兄さん。」
おばさんに、呼ばれて振り返る。
「行ってらっしゃい。」
「あ......行ってきます。」
僕は、何となくこの世界を嫌いになれない。
たとえ、今の挨拶がなくてもその思いは変わらない。
そんな気持ちに浸りながら、ヌルヌルと最寄りの駅まで歩いていく。
どんなに世界が嫌いじゃなくたって、学校を好きになることはないと心底思う。
別にいじめられているわけではないし、友達だっている。
それこそ、世界が綺麗だと思えるくらいに。
でも、
「つまらないなぁ。」
悪い癖だ。
思うことを、すぐ口に出してしまう。
駅に着くと、それまでの道で飲み干した牛乳のパックを捨てる。
「コーラでも、買っておくか。」
飲み物のリロードをして、プラットホームへ向かう。
いつもはここでランチパックを食べるのだが、今日は何故か食欲がない。
まあ、学校に着くまでまだまだ時間はある。
とりあえず、スマホで今の時間を確認する。
!?
スマホがない?
家に忘れたのだと気付き、駅の時計を見る。
アナログ時計が、6時17分を指している。
走れば間に合うがどうするか?
......お腹が痛い。
朝から牛乳はお腹には、キツいらしい。
とにかくまずはトイレに!
幸いトイレは並んでなく、用をたすことができた。
「最悪かよ。」
6時31分を指す駅の時計を見て、僕は吐き捨てた。