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第17話 決戦に備えて

「お前はこっちに来い」


 酒場の前でダイチはノッポの方に声をかけられた。


「わかりました」


 ダイチは何か言いたげなミレーニアに、目で大丈夫だと合図を送りノッポについていく。

 ミレーニアとリンスはデブの方について酒場に入っていった。


 酒場の裏の人通りの無いところまで来ると、ノッポがダイチに向き直る。


「お前はここで帰りな。女たちにはお腹が痛くて帰ったと言っておいてやるから。ああ、酒場の代金はありがたくもらっておいてやるよ」


 ノッポがニヤニヤしながら凄む。


 黒い胸甲が()を出しそうになるが、ダイチが胸甲を一撫ですると落ち着いたようだ。

 ダイチもだいぶ慣れたものである。


「せめて帝国の状況だけ教えてもらえませんか? そうしたら大人しく帰りますので」


 帰る気などさらさらなさそうだが、ダイチは情報収集に徹しようとする。


「ああ? 何言ってんだてめえは帝――」


 その時、バキっと何かが壊れるような音が、酒場の入口の方から聞こえてきた。


「あ……、またやったな……」


 なんとなく何が起こったのかを理解したダイチがため息をつく。


 ズルズルと引きずられるような音がダイチのいる所に近づいてくる。

 ノッポは頭にクエスチョンを浮かべるばかりだ。


 すぐに建物の角からミレーニアが姿を現した。片手で太った男を引きずっている。

 リンスは申し訳なさそうな感じで後ろをついてきている。


「こいつ重いわね。まったく」


 全然重そうに見えないよ……というダイチの視線をスルーして、近づいてきたところでデブを片手でノッポの方に放り投げた。


「ミレ? どうしてこんなことに?」


「酒場に入ってすぐに私をいやらしい手つきで触ってこようとしたのよ」


 こうなって当然でしょとばかりに、ミレーニアは堂々と告げる。


「そ、そうか……」


「そうよ、私を触っていいのはダイチだけなんだから!」


 ミレーニアはさらに堂々と言い切る。


「私もご主人様だけのものです」


 リンスも負けじと宣言する。


「あ、ありがとう……」


 なんとなくお礼を言うダイチであった。


 そんな中、先ほどから汗を流しながらその場を動けずにいる者がいた。


「ど……どうなっていやがる」


 ノッポが転がっている相棒を見ながら呟いた。


「まあいいか。とりあえず帝国について知っていることを全部話してもらおうか」


 ダイチがノッポに声をかけたところで、ノッポはからんではいけない者達にからんでしまったことを悟ったのだった。



■■■



 ノッポから話を聞いただけでも、帝国の魔王領への侵攻の時期が近づいていることが分かった。

 帝国では、傭兵集めや、食糧の確保、武器の買い付け等が進められているということだ。


 魔王城に戻って対策を立てる必要があるということで、ダイチ達は急ぎ魔王城に戻ることとなった。


 各地からの情報も徐々に集まってきており、魔王城の会議室にて幹部たちが今後の動きについて話し合っている。


「魔王様、帝国はまずこの魔王城を叩くつもりのようです」


 各地の偵察を管理する幹部がミレーニアに報告する。


「敵の陣容は?」


「はっ、魔王城への侵攻は竜人族が主力となるようです。よほど自信があるのか、帝国の情報管理が雑になっている印象です」


 ミレーニアの問いに答える。帝国と竜人族が手を組んだのは記憶に新しいが、竜人族がさっそく攻撃の主軸となるようだ。


「竜人族ね……、さすがにこの前、城に来た奴程度ではないはずよね。竜人族の情報はあまりないんでしょ」


「すみません、竜人族の集落への潜入はさすがに難しく……」


「いいのよ、しょうがないわ。帝国軍の動向は分かるかしら?」


「帝国軍は軍の編成をすすめているようです。配置からして、おそらく魔王城を落とした後に各地を制圧するのに向かうと思われます」


 報告の通りに帝国側が動くなら、勝敗は魔王城での戦いで決まる。


 帝国側が魔王城を落とすか、魔王側が撃退するかが勝敗の分かれ目であろう。

 

 戦略上は魔王城を放棄するという考え方もあるにはあるが、それを魔王がしないということは、ここにいる誰もが分かっているので案として出ることもない。


「ロイス、帝国方面の集落や拠点の人たちに、後方へ避難するように魔王の名で指示を出して」


「かしこまりました。ミレーニア様」


 ミレーニアの命令に執事姿の幹部が恭しく返事をする。


「帝国と竜人族への偵察は人数を増やして、逐次報告をお願い。あとは時間の許す限り魔王城の防備を固めるわよ。」


 ミレーニアの指示の元、帝国との戦いの準備が進められていく――

 

 

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