博物館にて 二
こんにちは
2番目の主人公が出てきます
「ん?あー…うん?」
「なんか微妙な顔してるね」
「いやするよあんた誰よ」
よくわかんなくなって口調がおかしくなる。
「さっき言ったじゃん。僕エダブル。」
「いや名前じゃなくて…いった…」
傷口が痛む。あー私もあの絵画みたいに真っ赤な…
「あれ?」
赤い血が出ているはずの傷は白い光で眩く光っていて、中からは桃と橙色の花びらが出てきていて宙を舞っていた。
激痛に反して怪我自体は幻想的なものだった。
「やっぱり怪我してるねー
あっ治し方知らない?花びらを1枚ちぎると基本治るよ」
とりあえず青年の指示に従って花びらを1枚ちぎってみる。すると右腕の怪我が簡単に治ってしまった。右腕をぶんぶん振ってみる。痛くない。さっきまで全く動かなかったのに…
左足の近くにあった花びらもちぎると治った。
「凄いな…」
立って1回ジャンプしてみてもやっぱり痛くない。
「なんか便利な体になったみたいだからねー でも僕はプライドが…」
「プライド?」
こんな便利な体を手に入れてどんな苦情が…
「僕狼なんだ」
え?
「普通に野生の狼。」
なんですと?
「こんな人の形にされたら狼としてのアイデンティティが無くなっちゃってて… 僕の今の狼としての証はこの尻尾だけだよ。」
「狼が好きなのはわかるけど自分の事を狼って言うのは良くないと思うよ。てか狼そんなに尻尾モフモフじゃないし。」
「いや本当だって!!」
流石に信じられない…本当かな?
「だって狼って颯爽と走って颯爽と獲物を狩って満月の夜に遠吠えをして…」
「そんな勝手な妄想抱かれても…
前半2つは先輩がそうだけど3つ目は人間が妄想で作ったおとぎ話だろ?」
「まぁごもっとも…」
3つ目は反論出来ない…
「ま…まぁそれは置いといて助けてくれてありがとう…」
「どういたしまして!!君の名前は確かサクリだったよね?」
「うん。そうだよ。エダブルだっけ?ありがとう。」
一応ちゃんとした人…人?らしいけど大丈夫かな…
「…この展示物はもう動かないのかな…」
さっきは私に一斉発砲していた展示物達は全て動かなくなっている。
動かないのが正しいんだけど…
「大丈夫。僕の能力でやっつけた。」
「能力…君もなんか持ってるんだ」
「そう。僕は超能力。」
超能力。それだけ言われてもいろんな種類があるからな…
物浮かせたり瞬間移動したり物を圧縮したり…
「…具体的にはどれ」
「どれ?どれって…物を浮かせたり瞬間移動したり物を圧縮したり…」
全部来た。
「チートじゃん…」
「いや唯一人の心を読む事は出来ないんだ。それに君も兵器ならなんでも出せるんだからだいぶチートだと思うけど」
「ま…そっか…」
なんかさっきから論破されてる気分…
「あっ突然だけど僕君のパートナーとして来たんだ」
「まじで?」
「まじで。これから君のサポートするからよろしく。」
どーゆータイミングのカミングアウト…
確かに言われてみるとエダブルは私と似たような格好をしていた。
身長が低いのは元々狼だったからだろうけど…
じゃあ人間の私が身長低いのは一体全体どうゆうこっちゃまぁ小さかったらちょっと可愛いく見えるし(現実逃避)
「…じゃあパートナー…」
「へいなんでござりましょう」
「どうすればここから出れると思う」
「子供を探す?」
「まぁそれだろうけど…どうやって探そうか…」
「へい。」
ボキッ
嫌な音がして恐る恐る音がした方をみる。そこにあったのは近くにあった女の彫刻の両足を折ってドヤ顔しているエダブル。
「何やってんのーーー!!!」
子供にバレないように小声で怒鳴った。
見つかったら絶対死亡確定…
だって自分の美術品を壊されたんだもの…
「いや彫刻壊しただけだよ?」
「声がでかい!本当何やってんのさ叩くよ!?なんとかこの事実を隠蔽しないと…」
「あんたたちさいてい」
おそかったーーーーーーーーーーーー
見ずともわかる。突然現れたミキのただならぬ殺気…
「本当何してくれちゃったのさアホ狼…」
「だってこうすれば怒って出てくるかなって…」
「あーなるほど…じゃねーよ!!他に良い方法絶対あったでしょ!!!!」
言い合いをしていると両足が無い彫刻が動き出した。
「なにごちゃごちゃ言ってるのか知らないけどミキの力で二人共潰してあげる…」
めっちゃ怒ってるめっちゃ怒ってる
やばい
「あーー結構怒ってる…」
「当たり前でしょ!!!!!!!!!!!!!!!!」
「どうすれば良いと思う」
「全力で逃げる。」
私のその言葉を合図に二人で全速力で走り出した。
「逃げないでよ!!!!お前ら二人共処刑!!!!!!処刑!!!!!!!!!!」
ミキの怒号が響き渡る。すると博物館のスピーカーから「処刑!!処刑!!」と処刑コールが流れてきた。
二人のスピードは増す。これまでに無い超全速力。
後ろからガタガタという音が聞こえる。少しだけ振り向くと両足が無い女の彫刻が腕だけで走っていた。
超速い!!!!!!超怖い!!!!!!!!!!
とにかく出口を目指す。走って走って辿りついた出口!!!!二人で扉のドアノブをひねって開ける!!!!!!
…こういう場面での扉は基本開かない。お約束。
「あはははははははははははははははは馬鹿!!馬鹿!!!!さぁ追い詰めた!!
仲良く死んでーーー!?!?」
私は銃を取り出してとにかく撃って撃って撃ちまくった。
でも全く弱らない。彫刻はミキの全力の力を降り注いであるから最強なのだ。
「エダブル!!君の超能力で…」
「分かってる!!!!」
エダブルは両手を前に突き出して結界を作り出した。触れたら電流が走る結界。
流石に彫刻も近寄れない。
「おー!!がんばれ…」
エダブルは半端ない位疲れてた。さっきの全速力で。本当に狼なのか…?
エダブルの結界が壊れるのも時間の問題。どうにか…
「エダブル!!瞬間移動しよう!!!!」
「うわああ最初からそうしとけば良かった!!!!」
「ほんとそれねーーーー!!!!」
エダブルは1回結界を消して代わりに瞬間移動した。
二階のプラネタリウムに一旦避難。絵画は綺麗に片付いていた。壁に絵画が飾られてるから戻ったのかな?
エダブルが隣で倒れ込んだ
「…大丈夫?」
「………僕…体力も…消費…オエッ するんだ…よね……おえぇ…」
強い分デメリットはそれか…吐きそうだなって思ってたら吐いた。気の毒だが正直見たくないから目を逸らした。
「休憩してると良いよ。」
私も疲れてるけど体が強くなった分そんなに疲れていない。
とりあえず彫刻を二階から見つからないように探して弱点を見つける事にした。
二階から一階を見下ろすと彫刻はすぐに見つかった。
出口付近で私達二人が突然いなくなった事に動揺してせわしなく動いていた。
大丈夫。私もよくわかってない。
弱点は…やっぱりよくわかんないな…
するとミキが彫刻に駆け寄って取られた両足の断面を優しく撫でていた。
あそこが弱点?彫刻でも怪我は痛むのかな?あっでも絵画はうめいてたな…
すると後ろからうめき声が聞こえた。
また絵画かと思って拳銃を声の主に突きつける…
声の主はエダブルだった。ずいぶん酷い顔色に四つん這いで私に近づいていた。
「もう大丈夫なの…なわけないか。」
「…水飲みたい…」
「ごめん我慢して…」
冷水機なんてあるわけないからな…
「ねぇねぇちょっとアレ見て」
「ん?彫刻?」
「そう。さっき君が取った両足の断面が弱点みたいなんだけど…」
「そうなの?」
「いや推測だけど…」
とりあえず超長距離のライフルを取り出して断面を狙う事にした。
私達二人を探しにミキが彫刻から離れたスキを見計らって…!!
「あア亜阿編我在明会唖!!!!!!!」
ビンゴ!!!!彫刻はこの世のものとは思えない奇声を発してジタバタと暴れた。
ミキが驚いて彫刻に声をかけた
「何!?どうしたのぴーちゃん!?!?」
ぴーちゃん!?あの彫刻の名前ぴーちゃん!?!?
ミキがこちらに思いっきり振り向いた。
「やっぱり貴方達ね…!!許せない!!!!」
動かなくなったぴーちゃん…ぴーちゃん。に「仇をとるよ」みたいな感じの視線を送ったミキは
「みんなー!!動いてー!!!!!!」
と叫んだ。みんなは展示物の事だろう。
「やばいよエダブル!!逃げないとまた酷い目に会う!!」
「また全速力ー?」
「場合によっては…いやほとんどの確率で…いや全速力確定…」
「…まじかよ…」
嫌がるエダブルを引きずって走り出す準備をしていると展示物が一斉に起き上がった
という事は無かった。
さっきのぴーちゃんに力を全部与えたせいでミキに魔法の力は残されていなかった。
「あれ?あれ?あれー?」
ミキは半べそをかきながら何度も何度も呪文を唱えていた。けれども展示物は全く答えず。
「…エダブル」
「回収?」
「しますか。」
顔を見合わせて頷いてミキに向って走り出した。小走りで。
呪文を唱えるのに夢中になっていたミキは私達が走って来ているのに気付かず初めて気づいたのは私がミキのスカートのリボンを掴んだ時だ。
「はーなーしーてーよー!!!!また閉じ込めるんでしょー!!!!閉じ込めて動けなくするんでしょー!!!!!!」
「閉じ込めるなんて言ってないじゃん…」
それどころかこれからどうするかも未定なのに…
「元の世界に戻さなきゃ…」
エダブルが私を見つめて呟く。
「あっそっか。ねぇミキちゃん元々の世界に帰りたくない?」
「いや!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
まぁやーーーっぱりそう言うよねーー
「どうする…」
「どうするって…帰りたくない理由があるんだろうね…聞くしかないか…」
「だよね…」
すぐに終わった小声会議の結果は「何があったかを聞く」に決定。
ミキに改めて向き直るとミキは大粒の涙を流して泣いていた。
「「!?!?!?」」
突然泣き出したミキに二人でびっくり。
聞く前にミキは自分の境遇を語り出した
読んで下さりありがとうございます