39・老婆と山
むかしむかしあるところに、おじいさんとおばあさんがすんでおりました。
おじいさんは山へしばかりに、おばあさんは川へせんたくに……いくはずだったのですが、おじいさんがカゼでねこんでしまいました。
「おっしゃあ、おじいさんの代わりに、オイラがしばかりにいきますとするかね」
せんたくを終えたおばあさんは、「よっこらせ」とマサカリをかついで、曲がったこしで山へでかけていきました。
山についたおばあさんは、森を見まわしながらおもいました。
「はてな。しばかりとは、なにをするものかいな」
年をとりすぎて、しばかりがなんなのか、分からなくなっていました。
「じぃさんはいつも、木をもってきてたのう。ようし、この木を切ってけばよいんじゃな」
マサカリをもって、空たかくそびえ立つ大きな木にむかい、ちからいっぱいにきりつけました。
どすん!と大きな音がして、木がたおれていきました。
「コレを運べばいいのじゃな。よいしょと」
たおれた木をかつごうとしましたが、重くてもちあがりません。
「こりゃこまった。べつの木にしますかな」
おばあさんは、ぺっぺっ、と手につばをつけて、マサカリをぶきに森にある木にいどむことにしました。
「おばあさん、おそいのう」
夕ぐれになってもおばあさんはもどってきません。どうしたのかとおじいさんはしんぱいになりました。
長いことねむったので、かぜも歩けるまでかいふくしています。
クマにおそわれたかとしんぱいになって、おばあさんをさがしに山へいくことにしました。
「なっ、なっ、なっ、なんじゃこりゃーっ!」
山にきたおじいさんは、びっくりしました。
森の木がすべて切られてしまって、山はまるぼうずとなっていたのです。
「いったい、どうしたというんじゃっ!」
サル、シカ、リス、クマなどの森でくらしているどうぶつたちは、いき場をうしなってこまっています。
どうぶつたちは、うらめしげに山のてっぺんを見あげていたので、おじいさんも見あげました。
そこにおばあさんがいました。
マサカリをもって、ひとしごとを終えたとまんぞくげな顔をしています。
「おや、おじいさん。びょうきはなおっのですか?」
「そ、そんなことより、これはいったい、なんだ。なにをしたというんじゃあ」
「なにをってしばかりですわ」
「おばあさん、これはしばかりじゃない。山がりじゃあ!」
山がりじゃあ!
……やまがりじゃあ!
…………やまがりじゃあ!
おじいさんのさけびがこだましました。




