旅の始まり
この人達は何を言ってるのだろう?
[異世界]なんて死語を。
そもそも彼らが人かさえ分からない。
確かに彼らは私に分かる言語を喋っているが、日本語で無いことは確かだ。
『カイト』と名乗った方は、まだ子供に見えるが私より2、3才年上に見える。
のが気に入らない。
髪の色は黒で瞳の色は灰色。おそらく北ヨーロッパの方の人だと思う。
『カイト』より『ウィンド』の方がもっと怪しい。
ハゲているから髪の色も分からない。今分かるのは相当な年齢だって事。
それにさっき見たときの瞳の色は黒だったのに、今は黄色になっている。
絶対に異世界の人だな〜。
どーもアヤシイ2人組が、何でこんな広い世界を旅しているのだろう?
あっ、そういえば………
「あの〜、お取り込み中すいません。元の世界に戻る方法は───」
『ない』
ハモったし。
カ「キミがこっちの世界に来たのは、自分から死を望んだから、だろ?」
ウ「その場合でもこちらに来る人の8割は死か化け物になってしまう」
「は?」
カ「つまり…心を失くして世界に来る訳だからトーゼン、善悪なんか分かっちゃ居ないさ」
「???よく分かりませんが………」
カ「心=考えることだから悪い事や良い事なんて分かんないって事」
「あ、あぁなるほど」
そういった時日が翳りだし、遠くで黒い雲が蠢いていた。
ウ「そろそろ次の町へ行かねば。お前さんも来るだろう?行く先も無いなら我々の旅に付いて来てくれるとありがたいのだが」
(……そうねこっちには知り合いも居ないし、行く当てもないなら)
「えぇ、お願いします」
カ「じゃあ出ぱーつ!!」
遠ざかって行く背中を見ながらポツリと呟いた。
「元気ですね」
カ「アイツは元気なことだけがとりえじゃからのう」
その後はずっと無言で長い長い道を今、歩き始めた。