この世界で
この世界は『もうひとつの世界』
地球では『あの世』とか『極楽浄土』とか言うみたいだけどな
こっちでは逆にあっちの事を『あの世』とか言うけど
紛らわしいから地球の事を『向こうの世界』と呼ぶことにした
俺はこの世界で生まれ、ココで育ち、今、ある職に就こうとしている
【記録者】
この世界のあらゆる事を記録し、後世に伝える役目の担い手を【記録者】と言う。
この役職には心はいらない。
ただ記録していくだけ。
そのせいでやめていく人も多いと云う。
何故こんな職に就いて居るかと言うと、それは長いハナシになるから今はやめる。
今、修行中の身の自分はフィラデルフィアにいる。
この世界は向こうの世界と同じ名前をしている都市が多い。
師匠の名は無い。
ただ、《ウィンド》と云われている。
風のようにふいっと現れて、風のようにさぁっと居なくなってしまうからだそうだ。
俺の名も無いが、今の所の名前は『カイト』
誕生日も生まれた所も、生まれた国も分からない。
ただ、生まれた時からウィンドと一緒だったコトしかか知らない。
だから、誕生日も祝ってはもらえないし、正確な歳も分からない。
ウィンドは、そんな物は任務には関係ないだろう、と言う。
その今回の任務は指輪の途中経過と終わりを記録する事。
今、この世界には2つの指輪が在る。
【光の指輪】は、今ウィンドが持っている。
【闇の指輪】は、現在所在不明だ。
俺らは光の指輪を研究する事と、
現在所在不明の闇の指輪を探す事。
いつかジプシーの婆さんに予言された事がホントになるとはな。
『お前さん、いつか世界を左右する出来事をあつかうじゃろう。自分の味方を裏切ってでも
敵方と通じるじゃろう。あたしゃには止める事はできないじゃろう、だが、これは覚えておき』
『何があっても、自分以外を信じるんじゃない』
わーってるって、そんな事。
言われなくてもそんな事ぐらい。
俺らには帰る場所も無ければ、心の在りかさえ無い。
信じられる人も師匠のウインドと自分だけ。
だいたい人に出会っても次の日には敵かもしれない。
そんな時代なのだ、こっちは。
そんな事を考えている時だった。
『彼女』が降ってきたのは。
この話の後、ちょっと期間を空けさせて貰います。
他の連載を終わらせたいので。
その辺をよろしくお願いします。