ダイヤモンドの人形 『6』
「おーおー、これはヒドイのぉ」
ウィンドが見ている先には一体の人形。
そう、あの目にダイヤが埋め込まれている呪われた人形だ。
「思ったよりも呪いが強いな」
カイトが手にしているのは人形が安置されていた祠のかけら。
押しても引いても開かなかった祠の扉を、キレたカイトがぶっ壊したのだ。
…こうなった経緯を説明しろと言われたら、ムリと言うのが人間だと思う。
確かにジャーマンさんに案内されて来た訳だけど……祠の中に人形が収められていて、その祠の鍵はある青年が谷底へ落としてしまったと。
…そいつ、そーとーなマヌケだな。
村では、その祠の前に立つだけで呪われると言うバカバカしい噂がたっているわけで……御多分に漏れず、ジャーマンさんもその噂を信じているので、ここには来ていない。
そして現在に至るわけで……。
「…そーゆーのってどうやって分かるの?」
「オレだって分かるんだからその内分かる。雰囲気だよ、雰囲気」
確かに…、言われてみれば人形から滲み出る空気が不穏な感じがする。
「……どうやって呪いを解くの?」
「そりゃ魔法で。あっちは黒魔術だから少しの負担で強力な魔法をかけられるんだ。でもこっちの白魔術は多大な魔力を使うから、長期戦には向かないんだ。こういうのを解くにはウィンドでも四苦八苦するから数日は動けないよ」
「へぇ……ウィンドの弟子なのに何でカイトは魔法使えないの?」
「適性じゃないから。魔法の素にもなるエネルギーが戦闘向きだったから、魔法には使って無いだけの話。まぁ蝋燭に火を灯すぐらいなら使えるけどな」
ふうん、と頷いてウィンドの動向を見守る。
ウィンドは、何やら電話帳みたいに分厚い魔法書を取り出して読みながらブツブツ呪文を呟いている。
すると人形が禍々しいオレンジの光を発っして、宙に浮かんだ。
「……あれ、見た事ある」
「え、あれって…人形の事?おいっ!!」
ダッと走り出したアンナは、呪文を唱えているウィンドの前に出た。
「……何をしている、止めろ」
後ろから追いついてきたカイトが、アンナの腕を掴んだ。
それはやめとけ、と言う戒告の意を十二分に伝えていた。
「オレ達が介入してどうこうなるもんじゃない、やめとけ」
「アレ……向こうの世界でマリア像とか言って、キリストのお母さんだから壊しちゃダメ」
杏南の父はキリスト教の教会の神父をしているので、そーゆー事にはかなり敏感なのだ。
通ってた高校だってキリスト教を信仰していたし。
「だからって危ないぜ、戻ろう」
カイトが無理やりにも引っ張っていこうとした時、人形からあまりにも眩しい白い光がカァッと放たれた。
いやー、バトルと言うか…全然出てきませんね。
すいません……。