ダイヤモンドの人形 『5』
この話からカイトと杏南の距離がグッと近付きます。
個人的にはこの位が調度心地いいんですけど……。
ザアアァァ……
シャワーの音がやけにうるさい。
うぅ…なんかやだなぁ…夜。
だってウィンドの部屋遠いし、ジャーマンさん用事とかで街に行っちゃったし…。
ヤダけどしょーがないか、そこしか部屋無いもん。
キュッ
シャワーの栓を締めてもなお、水音が聞こえる。
「あ、雨?」
外は滝のような雨が降っている。
屋根から細い糸になって落ちてくる雨の雫。
「…夕焼け見えてたのになぁ」
ゴロゴロッ
「キャッ」
雷もなり始めた。
ゴロゴロっガッシャーン!!!
「きゃあああぁぁぁ〜〜〜〜〜〜」
服を着ていたので猛ダッシュで浴室から飛び出した。
カイトはスタンドライトだけを点けて本を読んでいた。
ゴロゴロ……
カ「あ、雷?」
シャッ、とカーテンを開けるとガラスの表面を雨が伝っているのが見え、遠くで雷が鳴っているのが聞こえた。
カ「…そうか、砂漠ばっかり歩いて来たからよくわかんなかったけどもう7月か」
「……ぁぁぁぁああああ〜〜〜〜〜〜!!」
悲鳴が近付いてきた。
カ「な、何だ?」
バタン、とドアを開けると悲鳴を上げながらのアンナが走り込んできた。
そいつは猛スピードで部屋に入ると、ベッドに飛び込んで布団を引っ被ってしまった。
カ「……何やってんだよ(呆」
ブルブル震えているそいつの肩に手を置く。
ビクッと肩が揺れ、小さな悲鳴が漏れた。
(細ぇ肩だな…)
元々小柄だなと常々思っていた杏南の身体に触れてみた事はなかったので(つーか女性を見る機会も無かったから…)、初めて触れた女性(それとも女の子?)の感触は新鮮なものであった。
カ「大丈夫かよ、おいっ!」
「…や……怖い……」
ふぅー、何言っても無駄みたいだな。
こういう時って何をすればいいんだっけ?
誰かー!ジジィでも教えてくれ〜!!
カ「オレ眠いから寝るぞー、隣で眠られたいのかー。……もー知らねーぞ、寝るからなオレは」
縮こまって震えているアンナの隣に潜り込んだ。
…………。
…………。
…………。
……………くそっ。
細くこまかく震えている小柄な身体を、後ろから、ギュッと抱きしめた。
今度も彼女はビクッとしたが、抗おうとはしなかった。
仄かな暖かさを抱きながら、雷が止むまで、雨が上がるまで、朝が来るまで、そうしていた。