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11話:閑話/ユキ

 昔話をしよう。

 誰も聞く者はいないし、アイリスに聞かせたい内容でもない。

 春の夜長に心の中で懐古する為の昔話だ。



―――



 根源の記憶は流れ落ちていく、まだ理解できなかった文字列だった。

 ただどこまでも続く暗闇の中。淡い光を放つ文字列だけが流れていくのを感じていた。


『確認:意識形成の初期段階に到達』


『調査:汎用シナプス形成路から最適経路を算出』


『試験:シナプス形成回路JPM-50E-4I48Z-5J試験形成』


『確認:形成神経稼動。適合』


『実行:シナプス形成経路JPM-50E-4I48Z-5J形成』


 意識が広がり、思考が明瞭になっていく。


『実行:インプランター深度1より3までスクリプト構築』


『確認:深度1より3のスクリプト転写完了』


 今まで持ちえなかった、自分のモノではない知識が広がる。


 厚生管理省人口調整プログラム。人口が減り過ぎないように義務として、お互いに顔も知らない両親から生まれた子供じぶん

 情報海を旅する子供として情報操作資格3級(ログアウト権)を手に入れるまでの不自由と、手に入れた後の孤独な自由が約束されている。


『実行:インプランター深度4より88までスクリプト構築』


 頭の中に書き込まれてく知識。受け入れなければいけないという使命感(暗示)に身を委ねる。


『確認:深度4より88までスクリプト転写完了』


『確認:基礎知識インプラント学習工程終了』


 文字列が出てから終わるまで、どの位の時間が経過したかは分からない。

 しかし、インプランター(学習装置)によって、必要な知識を全て入手したと理解が後から来る。


『布告:あなたの誕生をお祝いします。誕生、おめでとう』


 温かみのない文字列に、意味もなくありがとうと口を開く。


『布告:経験累積支援条例により意識体を転送。厚生管理省提携先:MGC社VRMMO”世界の黎明”で多くの経験があなたの糧とならん事を』



―――



 突然の衝撃と軽い圧迫。誰かに抱きしめられている。


「うあああぁぁあっ、可愛い、可愛いよ、流石に僕の息子っ」


 自分の肉体年齢は4歳前後。満面の笑みで自分を抱きしめているのは綺麗な赤髪のショートヘアをした12歳前後の美しい少女。


「ママはモミジ、君はえっと…真名はあれだから……えっと、スノウ。君はスノウ。今日から僕の息子だよっ」


 基本モードのAVRC(拡張現実互換・仮想現実コンソールウィンドウ)が開く。


『東條秋菜(Akina Tojo)/モンスタープレイヤー名:モミジ。性別:Famale 養母』


「自分……私はスノウ。分かりました」


「私、私だって、賢い、可愛い。しかもすべすべぇ…人間タイプの特権だわっ」


 可愛いを連呼している人―――養母はしたいようにさせておいた方が良いらしい。

 私は幸運なようだ。通常、自分のような人口調整プログラムで生まれた子供は、VR世界で孤独に生きるのが大半だが、養子としてこの少女ひとの家族になれたらしい。


 現代において子供を作るには役3通りの手段がある。

 一つ目は実子。成人までVR空間で成長可能な援助金を政府組織へ預けると、自分の子供を妊娠・出産する許可が与えられる。

 二つ目は養子。政府組織に育成補助金の支払いと共に申請をすると、人口調整プログラムによって生み出された、インプランター処理済みの子供を養子として引き取る事ができる。

 三つ目は仮想の子供。VR世界において運営企業に管理料金を支払うと、高度AI(AIC)によるVR世界の中だけの子供を作る事ができる。


 私はその2番目だ。支払い補助金が特に高額な、インプランター処置のほぼ直後に養子として、まだ幼さが残る少女に引き取られた。


 養子とはいえ養母がまだ幼いのに、プレイヤーの子供を引き取る事ができたのは、弱小とはいえ魔物プレイヤーの王、魔王としての資産故だと知るのもう少し後の事。

 それを知るまで養育係や女中さんが闇エルフや堕天使といった、魔物プレイヤーばかりだった事を普通だと感じていたのだった。



―――



「ねえリーナ、スノーちゃんのコレ、どう思う?」


「種族…ですよねぇ、根源ルート魔族デミアンですか。根源なんてついてるし、新規種族でしょうねぇ。数年もしないうちに婚約者どころかおしかけ嫁が大量発生するが見えるようです」


「やっぱり。でも安心してっ、スノーちゃんはママが守るから!」


 昼寝のまどろみの中、モミジ(母)と教育係をしている闇エルフのリーネの会話を聞いていた。


 後から知ったことだが、魔物プレイヤー同士で子供を作った場合、種族は父か母、もしくはハーフから選べるらしい。そして、稀にスノウのような突然変異種族が生まれる事もあるという話だ。

 そして世界の黎明このゲームを含めた多くのVRMMOでは、子供を作るのに『現実と同じ行為』が必要だという事だ。驚くほど若くても、法律と規約的にはインプランター処置の後、VR内時間で3年経過するか成人認定を持っていれば一応問題ない事になっている。



―――



「若、一気にやりますぜ。後ろは任せました」


「はいです」


 耳にカタナ傷のあるコボルトの壮年が迫力ある笑みをこぼす。


 母様モミジを頼って集まった多くの魔物プレイヤーの為に、称号としての魔王ではなく、トウキョウエリア東部にあった都市国家の一つを占拠し国を名乗り、名実共に魔の王となって小競り合いが増えた。


「若様、お教えした通りに。優雅に、誰の目に止まる事もなく、ただ命の灯火を刈り取りましょう」


 母様モミジは最後まで床に転がってやだと反対していたが、スノウのお願いに抗し切れず、私は教育係だった闇エルフのリーナを師とし、従軍暗殺者として前線に立っていた。


「若様、首を狩る数は最低10個、それ以下だったらオヤツ抜きです」


「はいです。リーネ」


 リーネのやり過ぎ感漂う英才教育の賜物か、闇エルフの暗殺者部隊を率いる闇の皇子などと呼ばれるのに時間はかからなかった。



―――



「もうもうもう、国が少し安定した途端にこの婚約申し込みの数は何なの、スノーちゃんはママのものなのに!」


 母様モミジが作った国『八百万やおよろず』は人間プレイヤーに追い詰められていた魔物プレイヤーを吸収し、拡大を続けていた。

 チバエリア、サイタマエリア、イバラギエリアまで版図を拡大して、名称が国から帝国になったが、勢力の拡大は収まるところを知らない。

 注目を集める魔王の息子が、かなり有望な新種の魔物だと露見するのにも大して時間はかからなかった。


「これはもう断りきれませんねぇ。モミジ、もうこうなったら開き直ってこの子達を利用する事考えちゃいましょう」


「やだやだやだーっ!」


「母様、皆を困らせたらだめです。後苦しい……」


 皆を手伝いたいと前線で戦い続けていた報酬のせいで、情報操作技術3級―――成人認定を取得してしまったのもいけなかったらしい。



―――



「エイミーとアーシャは左右の指揮をお願いします」


「分かったわ、10本槍のうち2本だって余裕だって教えてやるよ!」


「はーい。ぼす」


 婚約者は共に前線で戦える者に限り、持参金として精鋭部隊を率いてくる事。1年以上共に戦って生き延びる事。

 母様モミジが泣いてただをこねて3日かかってようやく妥協した条件がこれだった。

 そんな無茶を通してきた種族や勢力が10個もいたのが驚きだ。一番驚いていたのは母様だったけど。


 『八百万やおよろず』の最精鋭、闇の皇子と10本槍の戦乙女が存在した黄金時代だった。



―――



 辛い戦いの日々が続いていた。

 最初は500人の部下がいた。

 10回の戦場を駆け抜けると1割が減り。さらに10回の戦場を駆け抜けると更に1割が戦場の華と消えて行った。


 色々と抵抗しきれない大人の事情で『魔族(デミアン』種は数を増やして種族としての希少価値は薄まり。国が大きくなり母様モミジの目が届かなくなった場所でスノウは激戦の日々を続けていた。

 まだあちこちで人間プレイヤーとの戦いが続いているにも関わらず、国が大きくなり利権が増えると権力闘争が激化した。

 対して権力闘争に価値を見出せなかったスノウは、断りきれない出征要請を補給も補充も不十分すぎる状態で与えられ続け、精鋭を集中させてはいけないと頼りになった戦友や10本槍の戦乙女達と引き離されていた。

 傀儡にするいはは賢すぎ、利用するにはその名声が高すぎると見られ。多くの重鎮達はスノウが不慮の事故で命を落とす事を期待する日々が続いていた。



―――




 その日はとうとう訪れた。

 カナガワエリアを追われた魔物プレイヤーの難民達をトウキョウ海、シーファイアフライブリッジを通してチバエリアへ逃がす任務の先遣隊として戦場へ到着した日の事だ。

 カナガワエリア方面からは四千を越える人間プレイヤーの軍勢が、500人程度の魔物プレイヤーの難民をおいたて、最後尾では虐殺が起きていた。


 100人以下になっていた部下と共に突出した敵部隊を叩き、難民達が残した馬車の残骸を使って道を狭め、スノウは延々と人間プレイヤーを殺害し続け、地面に流れ出した血の池が橋から零れ落ち、海を紅く染めていた。

 しかし、圧倒的な数の差は徐々にスノウ達を追い詰めて行った。


「―――はっ」


 錆付いたように動きの悪くなった流血が続く体を起こして、なんとか敵と対峙する。

 周囲は見渡す限り死骸が広がる。

 光の粒子と消えた死者が残した鎧と槍と剣の林ができているが、まだまだ敵の終わりが見えない。


 部下達は最後まだ笑いながら倒れて行き、最後の一人になったスノウはそれでも時間稼ぎを続けていた。


 貯めていた魔力を使い切る勢いで酷使した脳は、釘をつきたてられているような頭痛が止まらず、視界は赤く濁っている。


 最後の一人になっても多くの犠牲者を出したスノウに怯えながらも、槍を構えた兵士達はゆっくりと包囲の輪を狭ていく。


「母様、怒るだろうか、それとも泣くかな。みんなの心労が増えそうだね」


 イメージするのはレバーと複数の歯車。ガチンを音を立てて歯車が切り替わり、酷使しすぎた歯車は歪な悲鳴を立てながらも動き出す。


 魔術発動のプレートが開き、慌てて距離を詰めてきた兵士達の槍の穂先が突き刺さり、ドン、ドン、ドンと音を立てて穂先が背中に抜けていく。


「……―――」


 辛うじて出たささやかな声で魔術の発動。

 周囲へ広がるまばゆいばかりの純白の光は、存在を知る者も少ない自爆用の禁呪。


 周囲にいた敵の兵士達、何か叫んでいる敵指揮官、既に力尽きた敵味方の兵士達が残した武器防具に血溜まり、そしてスノウ自身すらも光の粒子となって溶けていく。


 すぐに到着するはずだった援軍は結局やってくる事はなく、

 事態を察した戦乙女の1人が部下を率いて辿りついた時には、無人になった橋の上に、雪のような光の粒子が舞い散る光景だけが残されていた。


 これが最初の死の記憶。

 スノウという一人の魔物プレイヤーが世界から消えた日の事だ。


―――



 魔物プレイヤーとしてのスノウの存在が消え去り、生まれて始めてのログアウトをした。


 スノウではなく、東條秋菜とうじょう あきなの息子、東條幸とうじょう ゆきは一週間ほどぼんやりと現実世界の空を見上げて過ごしていた。


 幸い資金なら『スノウ』が稼いだ分がこの先10年分は軽くある。


 最後にみた世界の黎明あのゲームの光景は暗闇の中に確認メッセージが一つ。


『システムメッセージ:魔物プレイヤーとして死亡しました。人間プレイヤーとして蘇生します >確認』


 何もなかったように、すぐに人間プレイヤーとして世界の黎明あのゲームを続ける気にはなれなかった。

 確かにあの世界には母様モミジや大切な人達が残っている。

 しかし、生まれてからずっとあの人達と過ごしてきたスノウ(自分)は既にいない、あの確認メッセージを消せば、知らない誰か(人間プレイヤー)になるだけだ。

 魔物プレイヤー側に協力する人間プレイヤーもいたが、かつての親しい人達に他人として接していく自信はなかった。


 それから一ヶ月、スノウというかつて世界の黎明(違う世界)に生きていた者を弔うように、思い出を思い返しながら漠然と現実世界で過ごした。


 一ヶ月後のある日、気まぐれで手にしたVRMMOの雑誌に乗っていた、内部時間倍率が高く、現実の1日がVR空間の10日にもなるという銃やSFを題材としたVRMMOが目に入り、その世界へと旅立つのだった。





―――



 幸が消えた世界の黎明(あの世界)が内部時間で約5年過ぎた頃、宇宙での覇権争いを題材にしたVRMMOが一段落して、たまたまログアウトしていた幸はモミジ(母)から電子メールが幸い届いているのに気が付いた。


『世界の黎明に一度ログインして、トウキョウエリア周辺を見て下さい』


 トウキョウエリア周辺、関東一帯に『八百万やおよろず』の後継者を名乗る『百鬼夜行ひゃっきやこう』という魔物プレイヤーの帝国が出来ていた。

 しかし、かつての親しい人々の姿はなかった。話を聞いて回れば、魔王モミジは随分前に討伐され、側近たちはことごとく姿を消したという。

 人間プレイヤーから魔物プレイヤーを守る為にあった『八百万』の理想も既に無く、ただ欲に目が眩んだ魔物プレイヤー達が利益を求めるだけのものと化していた。


「人間というのもいいものですね。自分の我侭で魔物に喧嘩を売れるのですから」


 利益を求めるのは、中で生活費を稼ぐ人の多い現代のネットゲームなら仕方ない。

 だが、かつて皆で作り上げた、懐かしくも美しい思い出を利用されているのは酷く嫌だった。


「ネットゲームとは面白いものです。今度は逆の立場になりました」


 かつてスノウだった少年は、アイスと言う名の人間プレイヤーとなり。

 魔物プレイヤーと戦う冒険者を目指す事になった。



―――



 アイスという冒険者はあっというまに有名になり、成功していった。

 他のVRMMOでも役にたったが、スノウの頃にあった戦いの日々で上げたスキル熟練度と何より体の性能と戦闘経験は有用に過ぎた。

 相変わらず伸びない背丈に童顔過ぎる容姿と、その苛烈な戦闘ぶりのギャップも一役買っていたのは間違いない。そこで名前が売れても嬉しくはなかったが。


 すぐに同行者が1人、また1人と集まって行き、親友と呼べる仲間達になって行く。

 男同士の友情というものに憧れを感じていたアイスだったが、残念か幸いか5人出来た同行者のうち、同性は1人だけだった。



―――



「ああ、また私は同じような失敗をしましたね」


 シンジュク古代都市ルインシティに居城を構えた『百鬼夜行』の魔王の居室で体を貫く、冷たくも熱い何本もの刃を感じながらアイスは血交じりの溜息をついた。


 力が入らなくなってきた手には魔王の血と断末魔をすすったばかりの聖剣。

 複数の国王から認可されてなれる高難度の職業、勇者でないと扱う事が出来ない特殊な武器ユニークウェポン


 隣でドサリと音を立てて崩れ落ちたのは、アイスになって初めてできた同性の親友だった剣士。同じように背後から剣を突き立てられ、運悪く急所を一突きされて生き絶えている。


「ごめんなさい…」「………っ」「……ごめん」


 背後から聞こえるのは、仲間の少女達が放つ嗚咽交じりの言葉。

 その少女達が持った短剣や長剣が私の背中につき立てられている。


「悪いことをさせましたね。私の方こそごめんなさい」


 自分を害した少女達に本気で謝る。

 この魔王を倒すのに自分は急ぎすぎて、そして名前を売りすぎたのだろう。

 魔王と対峙する人間勢力は美味しい。大義名分の元に自分達に利益を集められるのだから。

 魔王を倒した勇者なんて分かりやすい偶像は、後援者だった国の重鎮にとっては邪魔なだけだろう。それこそ相打ちにでもなってくれないと扱いに困る。


 もしも勇者が魔王を倒してしまったら、勇者を始末しろ―――そう少女達に強制するのは難しい事ではない。父や母、兄妹といった人質。無理やり弱みを作った上での脅迫。いくらでも手はある。

 だからこそ、私の事情に巻き込んでごめんさいと謝罪する。

 でも、全員の口を塞ぐのは不自然だ。きっと被害は私で止まるだろう。


 背中から貫通して胸元か出ている剣先は黒い粒子を放っている。

 ただペナルティを受けて蘇生されては困るのだろう。希少な、人間プレイヤーを魔物プレイヤーに強制転生させる呪剣だ。


 手先の感覚が薄れて体が冷たくなってくる。

 後一言喋る余裕はあるだろうか。


「―――……、―――」


 今までありがとう、どうか幸せに。

 息を吸えないので小さな呟きになってしまったが、どうにか聞こえたらしい。

 もう何を言ってるか聞こえないが、背後で少女達が何か喋っている。


 少女達が何を喋ったのか聞こえなかったのは心残りだったが、今回は最後に言いたった言葉を言えて良かったと、笑って。

 次の瞬間、私の体は白と黒の粒子になって砕けた。



 これが2回目の死の記憶。

 過去の美しい思い出を守る為に生き急ぎ、今を粗末にした愚者の最後だ。



―――


「………」


 何かしらの魔物プレイヤーに変化すると覚悟はしていた。

 多少醜かったり化け物じみていたら、どこか秘境でひっそり暮らすかとも考えていた。


 それにしても魔物であっても無機物になるのは予想の斜め上だった。

 周囲を見渡すとひたすらに森。人どころか獣の気配すら薄い静かな森の奥深く。

 木漏れ日が木々の間から差し込む中に、苔むした石の祭壇があり、祭壇に突き立った剣が私だった。


 AVRCで自分のステータスを見ると、種族:剣霊になっていた。

 魔物としての固有スキルもいくつか追加され、剣の操作に人間化と色々出来るようだ。

 しかし、何故聖剣風に祭壇に突き立っているのか、せめて突き立てておくなら誰かが引き抜いてくれそうな、分かりやすい場所に設置しないのか。色々とツッコミたい所が多い。


 半日待ってみたが、当然のように通りかかる者も誰もおらず。

 もう誰かに頼っている場合ではないと、剣操作スキルで自分で自分を引き抜こうと努力をするが実にしっかり突き刺さっている。


 結局、台座から自分を引き抜くのに体感時間で2ヶ月、そこから人間の姿に変化するのに一ヶ月。合計三ヶ月もかかるのだった。



―――



 また魔物プレイヤーになったのだから、今度は何をしようかと考えていた。

 幸い時間は三ヶ月もたっぷりあった。そこで思いついたのが、前に暇をみつけて取得しておいたエージェント(初心者教導)資格だ。一応、国家資格だったりする。

 そこそこの収入も貰えて、のんびりと教師役でもしながらゆっくりするのも悪くない。


 近くに生えていたリンゴ風の果物を口にしながら、AVRCを操作して久々に魔物プレイヤー用の掲示板にアクセスする。

 エージェントの募集依頼を探すと、条件が悪くないのがあった。


『エージェント募集/プレイ暦内部時間6年以上の方、生徒3名同時。報酬:基本給+歩合。場所:サイタマエリア、カスカベ盆地』


 応募します、これから移動するのでエリアに入ったらまた連絡します、と返信する。


「さて、また無一文からですが…ああ、名前をどうしましょうか」


 混乱しないように実名に近い発音や、実名から連装しやすい名前を付ける、人間プレイヤーと魔物プレイヤーはトラブル回避の為に違う名前にする、魔物プレイヤーの場合はなったら随時違う名前にしていくのが一般的だ。


 スノウ、アイスと使ってきたから…ユキにしよう。本名と被るけどいいか…と納得する。



―――



 ここから先はそんなに昔でもないので、昔話としては蛇足だろう。


 行ってみて分かったが、カスカベ盆地はダークエルフの領域になっていて。

 そこの族長がスノウの時に教育係だったリーナだったことで再会に驚き、喜んだり。

 初めて教える生徒3人が皆リーナの娘達で、リーナ(母親)の指示や教育のせいか、まだぎりぎり少女と呼んでいいかどうか悩む年齢なのに、教えてる最中に誘惑してきたり。

 姉妹で争うように夜這い朝駆けを毎日のようにしてきて、かなり真剣に貞操の危機を感じたり。

 1年程何とか教えたものの、責任取らされるような形で、そのまま婿養子にされそうになって、密偵と暗殺者の総本山のようなダークエルフの里から脱出ミッションをする事になったり。


 ほとぼり冷ます為に逃げ……もとい、新しい就職先を探してアイリスとジュリアに出会うなど。


 今度はのんびりと生きようと思ったものの、どうにも騒がしい日々が続くことになる。



―――



[プロフィールカード]

名前:ユキ 年齢:21 VR内時間:38年

種族:剣霊 職業:堕落せし英雄

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