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戦闘開始

 しばらく空いてしまいました

 忙しいです。また感覚開くかも

 半分残った町のいたるところから煙が上がっているのがデパートから出てきた七穂たちの目に映った。

 おそらく、町中のあらゆる場所で怪人たちが暴れているのだろう。


 阿鼻叫喚の嵐。

 ほかの『正義のヒーロー』を名乗るものたちは動いてくれているのだろうか。


 ただそれよりも気になるのは、ほんの一時間前まで更地であった町の半分が、かつて『日食』と争った『暗黒馬』をゆうに超えるサイズの建物が堂々とたっているのだ。

 その姿はまるで日本の城。

 敵を迎え撃つためだけに作られた建築美。一切に無駄が省かれた形。

 しかしその天辺だけは雲に隠れてしまっている。


 異様な光景に七穂や蘭だけでなく、二人と比べて数々の修羅場をくぐってきたであろう『日食』までもが言葉をうしなった。


 突然、大地が揺れ地鳴りが始まる。

 何とか立てる程度だが、それでも腕を多少広げて体を安定させなければとても倒れてしまうほど。


 少しずつ、『城』が動いているのだ。

 その動きは秒速一メートルほど緩慢なもの。

 残った町の半分へ向かってゆっくりと進んでいる。


「・・・・・・七穂」


 不意に『日食』が七穂の名前を呼んだ。


「どうしたの? ひーちゃんはあれが何だか分かるの?」


「あれがさっき蛸怪人の言っていた『計画』ってやつだと思う」


「じゃあ、全部ぶち壊す方向で」


「ああ、任せろ。蘭は七穂を守ってやってくれ」


「わかってるよぉ。七穂ちゃんはボクの一番大事な人だからね」


 やらなければいけないことは二つ。

 城の破壊と街中の怪人の掃討。


「よし、行くぞ!」



  ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆



 城のほぼ真下まで来たころだった。


 『日食』は唐突に体をひねって、右手で虫を払うような仕草をした。

 爆風が彼女の長いプラチナブロンドの髪をなびかせる。


 何が起きたのだろう。


 七穂には分からなかったが、彼女を抱きかかえて走っていた蘭には見えていたらしくその年齢の割に幼く見える顔をこわばらせている。

 その視線は、宙へと向けられていた。

 七穂もその視線の先を目で追う。


「オホホホホホ!」


 気を違えたような甲高い声がどんよりとした雲の浮かぶ空に響いた。

 その声の響くところに、黒い影が三つ浮いている。


「ワタクシの名前は『龍姫』! 悪のヒーローでございましてよ!」


 影のひとつ。蝶の模様の入った中華服を着こなし髪を頭の両側でお団子にまとめ、扇子を片手に空中を仁王立ちする女性――――『龍姫』が声を張り上げる。

 妖艶であろう姿をどこか凶悪に見せているのは、彼女の鋭い目つきと爬虫類のような尻尾のせいだろうか。


 『日食』は苦虫を噛み潰したような顔をする。


「『悪のヒーロー』か。『跳馬』見たいなのが三人だとするとかなり厄介だぞ」


 そんな『日食』の心配を肯定するかのように、頭上から『龍姫』の声が響く。


「オホホホホ! ワタクシ一人だけではないですわ。ワタクシの両脇にいる『魔女』と『悟空』も『悪のヒーロー』ですのよ。観念してワタクシの扇子に切り刻まれなさい!」


 そういうと『龍姫』は手元でたたんでいた扇子をばっと開く。

 その中央には堂々と天翔ける龍の模様が描かれていた。


「あ~あ。『龍姫』ちん私のコト勝手に紹介しちゃうんだもん。せっかく考えた私の登場時のオープニングテーマが台無しぢゃん」


 『龍姫』の隣で文句をたれるのは、紐のような衣装に大事な部分だけを隠された少女。

 その手にはアニメに出てくる魔法少女が持つような、先端にハートのマークがついたステッキ。

 ピンク色のローブを羽織ってはいるが、風ではためいているためあまり露出を減らす意味では役に立っていない。


「もういいや。魔法で宙に浮くのも飽きたし、おろしちゃお」


 『魔女』がステッキを一振りすると、三人の体がゆっくりと地面に降りていく。


 彼女のまるで緊張感のない発言に『龍姫』がまた金切り声を上げた。


「アホなことを言っているとあの虫けらどもにバカにされますわよ! ねぇ『悟空』」


「(・・・・・・・・・・・・ふるふる)」


 唐突に話を振られ戸惑う、まるで伝説上の孫悟空のコスプレにしか見えないような格好をした少女は、無言のまま首を横に振った。

 目が隠れるほどの長い髪が舞うように揺れる。

 手には長い棒を持っている。見た目から察するに、如意棒だろうか。


「ほら『悟空』だって違うって言ってるぢゃない」


「(・・・・・・・・・・・・ふるふる)」


「まったく、どっちなのかはっきりしなさいですわ」


「(・・・・・・・・・・・・うるうる)」


「ちょ、泣かないでくださいまし。まるでワタクシが悪者みたいじゃないですの」


「私たち、『悪のヒーロー』なんだし、別にいいぢゃん」


 まるで漫才のような三人。


「さてと・・・・・・」


 『龍姫』がふろ思い出したかのように七穂たちのほうを振り返った。

 その目はとても冷たい目。けれど、彼女の言葉どうりに決して見下しているわけではない。


 七穂は、その目に見覚えがあった。

 あの目は『日食』が敵とみなした相手を見る目と同じものだ。


「さっさと終わらせましょう。ワタクシと『魔女』でそこの目障りな偽善者気取りのヒーローを潰しますので『悟空』は後ろに隠れている一般人二人をさっさと殺してしまいなさい」


「はいは~い」


「(・・・・・・・・・・・・こく)」


 『龍姫』の扇子を握った手が顔の横へと運ばれる。

 次の瞬間、その腕が振りぬかれ突風が『日食』を襲った。






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