魔法少女 × 特撮ヒーロー
「副社長、どう答えたら良いですか?」
「たまになら良いけど毎週とかは難しいかもー」
「あたしは無理だから」
副社長室、ソファーに座る伊吹の対面には玲夢と睦月と葉月が座っている。
生配信中に、視聴者から藍吹伊通り一丁目のお披露目の際の実写版VividColors VS BrilliantYearsの専門チャンネルを開設してほしいという声が多数寄せられており、どのように返答すれば良いのかと聞きに来たのだ。
「あの企画を持ち出したのは僕じゃなくマチルダなんだよなぁ。衣装のデザインをしたのは燈子だし、脚本を書いたのはキャリーなんだよ。
衣装作成の指示を出したのは琥珀で、実際に作ってくれたのは僕の侍女さんだし、例え演じる皆が乗り気だったとしても、話し合わないと進められないんだよ」
「いやあたしは乗り気じゃないって言ってんだが!?」
「まぁまぁ」
伊吹へと怒る葉月を睦月が宥める。
割と見る光景なので、誰も葉月に対して批難をしない。
「じゃあ、もしチャンネル開設するとして、撮影に参加する上ではーちゃんが絶対にやりたくないのはどこらへん?」
伊吹が葉月へと問い掛ける。
伊吹は視聴者が求めている以上、実写版VividColors VS BrilliantYearsの専門チャンネルを立ち上げるつもりだ。
その上で、葉月にも参加させるべく、葉月に対してあえて意地の悪い質問を投げた。
葉月の要望を聞く振りをして、半ば無意識的に撮影に参加する事に合意させるつもりなのだ。
「フリフリのスカート履くのも嫌だし激しく動くのも嫌だし魔法の杖で魔法を打つのも嫌だし恥ずかしいセリフを言うのも嫌だ。
つまり全部嫌だ!!」
伊吹の誘導もむなしく、葉月が全拒否をする。
「うーん。私達は『ヤバすぎ!』にも出演しているし、次回作も撮るんですよね?
その他ラジオやったりゲームの実況したりしてますし。
私達三人以外の九人から出演者を選んでもらえませんか?」
「そもそも十二人ってのが多過ぎると思うんだよー」
玲夢と睦月も乗り気ではなく、言っている事はもっともなので伊吹としては言い返せない。
「分かった。ちょっと方針を転換するとしよう」
玲夢と睦月と葉月の意見を聞いた伊吹は、三人が退室した後、キャリーとマチルダを副社長室へと呼び出した。
「戦隊モノで六人対六人のシナリオは書きにくいですから、彼女達の言っている事は受け入れて問題ないと思います」
「あくまで十二人全員を登場させる為に考えただけやしなぁ。
ホンマにチャンネル開設するんなら、副社長を狙う悪の組織から守る三人から六人の戦隊ってのが収まりがええねんけど。
副社長に対して害をなす悪役は、念の為顔出しせん方がええよな」
キャリーにしてもマチルダにしても、伊吹の退院祝いのパレードの出し物として考えただけであり、継続的に制作する前提で動いていなかった事が判明した。
「どっちにしても、ただの実況者がアクロバティックな動きで戦うシーンの撮影なんて出来ないだろうから、変身するシーンを入れてスーツアクターにバトンタッチさせる必要があるんじゃない?」
「魔法少女戦隊なぁ、実写やししゃあないか」
元々アクション女優志望なのであれば、飛んだり跳ねたりの激しい撮影が可能だが、VividColorsにしてもBrilliantYearsにしても、本来はただのYourTunerなのだ。
あまり無理を言って、怪我をさせては大変だ。
「魔法のステッキ欲しいて言う書き込みもよう見るし、グッズ売上が期待出来るな!
子供用も大人用もコスチューム作って、変身用アイテムは化粧道具かそれともアクセサリーか……」
さっそくマチルダがどうやって商売にしようかと考え始めている。
「悪の組織の目的が副社長の身柄確保なら、伊吹さんも出演する必要がありますよね?」
キャリーは早くも脚本をどうするか考え始めている。
「んー、何か上手い事出来ない?
藍吹伊通り一丁目に侵入しようとしてするとか、顔寄せ大会に潜り込んで運営の邪魔するとか、非公式のグッズを売ろうとするとか、グッズを作ってる工場に忍び込んで盗んで売りさばくとか」
「……なるほど、副社長を直接狙う以外の悪事も考えればあるものですね」
キャリーがタブレットを取り出して、伊吹が挙げた例をメモしていく。
「あと、転売ヤーとかイブイブを騙って電話掛けて来る『イブイブ詐欺』とかイブイブが着た服や言うて売り付けたり未発売の特注ケッコン指輪や言うて売ったりイブイブの精液やと騙して山芋売るとか……」
「さすがに山芋は気付くだろ。しかも精液の売買は重罪だぞ」
「イブイブの精液にはそれだけの価値があるんよ。イブイブの精液やないと人工授精したくないって言う女性も一定数おるんやから。
これは真面目な話、社会問題になる前に何とかせんとアカンえ?」
マチルダの言う通り、少しずつ人工授精を拒否する女性達が増えて来ており、男性保護省を悩ませる問題になっている。
「僕は精液採取を毎日行ってると公表するとか?
最近はそうでもないけど」
美哉と橘香が妊娠して以降、毎日の日課だった精液採取は週一の必要最低限レベルにまで頻度が低下している。
「もっと簡単な方法があるねん。イブイブのイブイブの型を取るやろ?
で、人工授精用のシリンダーの代わりに疑似男魂人工授精用デバイスとして……」
「ダメー」




