宮坂紫乃・宮坂翠・宮坂琥珀
現在、藍吹伊通り一丁目では約千人の女性が働いている。
YourTunesをぶっ潰す、と生配信で言ってのけた安藤治の呼び掛けに対し、本当に応募して来た世界中の優秀な人材達だ。
VividColors本体に配属される者は未だいないが、子会社や関連会社、宮坂系列の会社などに割り振られ、日々副社長の為にと励んでいる。
「今後はどうやって選別するべきかしら」
「簡単に見分ける方法があれば良いんだけど」
「外部委託って訳にはいかないものねぇ」
VividColorsの経営企画室所属、紫乃と翠と琥珀が今後の採用面接方法について頭を悩ませている。
当初は藍子が社長として直々に面接を行っていたが、伊吹親王妃殿下という立場になってしまったので、警備の関係で今まで通りとはいかなくなってしまった。
Alphadealとの衝突、そしてその後の米国との戦争があった為、現在採用活動は凍結しているのだが、いつまでも人を採用しない訳にはいかない。
優秀な人材は広く受け入れたいというのが伊吹の方針だからだ。
現在三人が考えている採用の流れとして、一次選考は採用専用メールアドレス宛てに送付された履歴書と職務経歴書、その他自分の作った作品や成果などがあれば添付してもらい、それを元にふるいに掛ける。
二次選考はオンライン面接とし、履歴書等と照らし合わせて質問をし、ふるいに掛ける。
三次選考でようやく藍吹伊通り一丁目へと招き、希望者と直接会って面接を行うという流れで考えているのだが。
「誰かスパイを見分ける方法教えてくれないかしら」
「お母様に聞いてみる?」
「え、うちの家にもスパイって来てたりするの?」
当面の課題は、スパイの見分け方だ。
いくら伊吹がサラに行ったような手荒な方法が実行可能であるとしても、いつでも使える手ではない。
あの時は伊吹が橘香が傷付けられた事に対して怒り、ライル・サンダースを失脚させるという大目標があった為、伊吹が怒りに任せて行った方法であり、伊吹はもうこの手は使いたくないと拒否感を示している。
「今まではどうか知らないけど、これからは可能性大だと思うわ」
紫乃の言う通り、VividColorsの社長である藍子の実家なのだから、宮坂家や関連企業にスパイが入り込もうとする可能性は非常に高い。
「でもうちってほとんど血縁で固めてるし、入り込むのは難しいんじゃない?
外部からってなると限られるよね」
翠が琥珀を見て、そう口にする。
「賢章さん、大丈夫かしら……」
宮坂家中に入り込むもっとも有効な手段として、次期当主である琥珀の弟、賢章への嫁入りが挙げられる。
賢章はまだ十六歳と若く、女性に主導権を握られやすい年齢である。
宮坂家は賢章を宝物の様に大事に甘やかして育てていたのだが、伊吹とライル、そしてデイヴィッドを見比べて、方針を転換している最中である。
女がしっかりしていればそれで良いという時代は終わり、男の教育に力を入れるべきであると考え方を変えたのだ。
「こはちゃん、賢章さんに近付こうとする女をどうやって選別するべきだと思う?」
紫乃は賢章へ近付く為に宮坂家へと接触する女を、どうやって見分けるべきかと問い掛ける。
「うーん、そうは言っても私自身賢章さんに会うのは年に数えるほどだし……」
賢章の教育は専属の執事と侍女達が主導で行っている為、琥珀が関与する余地はない。
「賢章さんの嫁取りとVividColorsの採用面接では規模が違うんじゃないかな。
採用面接の時点で、旦那様とは絶対に顔を会わす事のない部署に所属させると前もって言っておくのは?」
「それだと優秀な人材確保っていう主目的が達成困難になるわ。
お館様とお会い出来るからこそ優秀な人材が集まるのだから」
翠の提案に対し、紫乃が否定する。
「そもそも、今の時点でも怪しい動きをして排除されている人員がいるって報告受けてるよね?
紫乃ねぇ、もういっその事さ、スパイが入り込む前提で採用しちゃえば?」
翠が思い切った提案をする。紫乃と琥珀が翠に続きを言うよう促す。
「だから、スパイがいる前提で採用して、試用期間は重要な業務であるかのように見せた偽の業務をさせるの。
そこからが本当の採用試験で、嘘の情報や重要じゃない情報を与えて、流出しても問題ないようにしておく。
で、流出した先を突き止められれば一石二鳥。どう?」
「悪くないわね……」
「翠ちゃん、大胆だね」
「名付けて、裏採用試験!」
翠の提案を元に、紫乃と琥珀だけでなく三ノ宮家全員で話し合い、採用面接の方法をさらに詰めていく事となった。




