表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら男性が希少な世界だった:オタク文化で並行世界を制覇する!  作者: なつのさんち
第三章:Vtunerデビューの準備

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/138

天国で地獄の朝

 美哉(みや)橘香(きっか)と再会し、伊吹(いぶき)は様々な感情が溢れ出し、号泣してしまった。

 そして二人に抱き締められたまま意識を失った伊吹は、藍子(あいこ)の事務所があるビルの一室に寝かされる事になった。


 所属Vtuner(ブイチューナー)達が快適に配信出来るようにと改装されたものの、完成してから一度も使われていない、遮音性の優れた配信部屋。

 このビルに住み込みで活動する配信者がいるかも知れないと、藍子が張り切って用意した布団が役に立った。


「……!?」


 現在の時刻は朝六時。

 知らない天井だ、と言う暇もなく伊吹は混乱の最中にいる。

 前世でも味わった事のない感覚。口内に何かが侵入し、掻き回している。まるで口から食べられているかのような恐ろしい感触。

 顔を背けて逃れられたかと思えば、また反対側から同じように口に(ねぶ)り付かれる。


「どういう状況!?」


「いっちゃんが悪い」

「悪いのはいっちゃん」


 伊吹は幼馴染み二人に無理矢理ファーストキスを奪われてしまったと、半分残念に思い半分安心していた。

 どちらと先にするべきか、などという長年苦しまされた童貞臭い悩みが解消したからだ。

 しかし、ファーストキスだと思っているのは伊吹だけである。


 とりあえず一旦落ち着かせてほしいと懇願し、何とかその場を切り抜けた伊吹。

 美哉と橘香が怒っている理由は分かるし、再会した喜びもある。



 伊吹は二人が国立侍女育成専門学校を飛び級で卒業し、国家試験に合格したまでは知っていた。

 男性保護省の初任者研修を受講する必要があると聞いていたが、伊吹の屋敷が襲撃された前日には初任者研修が終わったとの事。


 そして本日より、晴れて美哉と橘香は伊吹付きの侍女となる。



「そっか、じゃあこれからずっと一緒だ。

 みぃねぇ、きぃねぇ、よろしくね」


「私達はご主人様付きの侍女です。どうか美哉と呼び捨てにして下さい」

「もう子供同士ではないのです。どうか、橘香と呼び捨てにして下さい」


 自分達はもう幼馴染みという関係ではない。主従の関係なのだ、と澄ました顔で主張する二人。

 その表情がおかしくて、伊吹は笑ってしまう。


「ふふっ。じゃあ二人の主として命令するね。

 今まで通り、幼馴染みのままでいてほしい。

 僕が堅苦しいの苦手だって知ってるでしょ?」


 伊吹の命令を聞いて、美哉と橘香が見つめ合う。そして小さく頷き合うと、二人は伊吹の手を取って口を開く。


「どれだけ私達がいっちゃんの事が大好きで、大切で、心から愛しているとしても、結婚する事は出来ない」

「それは小さい頃から知っていた事。心乃春(このは)様からも、お母さん達からも何度も何度も言われた。

 いっちゃんも理解してるはず」


 伊吹は二人の目を見ながら、小さく頷く。


「もちろん。でも、結婚なんてただの形式だ。

 その、……愛し合っていれば子供だって作れるし」


 伊吹は先ほどの二人からの熱烈なキスを思い出し、顔を赤くしている。


「男性は十八歳になり成人すると、可能な限り早急に結婚しなければならない」

「そして、子供を授かるよう努力しなければならない。これは法律で決まってる」

「私達はどっちも、母方三親等以内に男性がいない。第一夫人にも第二夫人にもなれない」

「いっちゃんと私達が馴れ馴れしくしていたら、奥様が良い顔をしない」


 この世界では一夫多妻制が推奨されているが、第一・第二夫人になれるのは、母方三親等以内の血族に男兄弟がいる女性に限られる。

 その方がより、男性が生まれる可能性が高いと各国の研究にて判明しているからだ。



 これは個人の意思でどうこう出来るものではなく、国家存亡の危機。さらには人類存亡の危機が掛かっている。

 だからこそ男性は国家により手厚く保護され、年間五千万円もの保護費が支給されているのだ。


 伊吹(いぶき)藍子(あいこ)に見せた銀行預金の七億円は、この男性保護費にあたる。

 祖母である心乃春(このは)と母親である咲弥(さくや)の方針で、男性保護費は伊吹の資産であるとして、手を付けず残しておいたのだ。



「分かってる。分かってはいるけど……」


「私達の事を想ってくれるのなら、早急に奥様を二人娶って」

「そうすれば家庭内での均衡が取りやすくなる」


(大奥みたいな話だな。詳しくは知らんが)


 伊吹としても、美哉と橘香に家庭内で肩身の狭い思いをさせたくない。

 この世界に生まれたからには、この世界の決まり事に倣わなくてはならない。

 郷に入っては郷に従う、である。

 前世では童貞だった伊吹は今、二人の女性から、別の女性二人と結婚しろと迫られている。

 なかなかの急展開だ。


「そうだね、分かってはいるんだけどね」


 伊吹が愛する美哉と橘香と結婚する為には、まず女性二人と出会って結婚する必要がある。

 前世童貞の伊吹にはかなり難しい試練なのは間違いない。


「とりあえず今いっちゃんがすべきなのはこれ」

「大丈夫、天井のシミを数えている間に済む」


 美哉の手にあるのは、通常よりも大きく太い注射器のような物。ただし、用途としては薬剤の注入ではなく精液の採取であるが。

 伊吹はそれを見て、表情をこわばらせる。


「それって、もしかして」


「そう、精液採取器」

「いっちゃんは十八歳になった。精液提供の義務がある」


(マジかよ……)


 分かってはいた、分かってはいたが初体験より先に初提供をさせられるとは思っていなかった伊吹。

 いや、可愛く美人で自分を好いてくれる幼馴染が二人もいるのに、この歳まで手を出さなかった伊吹が悪いのだ。

 どうにか先に初体験を、と思ったらまた橘香に口を塞がれ、美哉に身体を押さえ付けられる。


「大丈夫、怖くない」

「怖くない、任せて」


 伊吹の浴衣を剥いだ後、二人はゆっくりと、伊吹へ見せつけるように侍女服を脱いでいく。伊吹は二人から目を逸らせない。

 美哉の胸が、橘香の下腹部が、伊吹の股間へ訴えかける。さぁ使命を果たせと。


「いっぱい練習した」

「実物は初めてだけど」


 二人の手が伊吹の全身を撫で回す。

 伊吹は抵抗する事も、二人の身体に触れる事も出来ず、ただただきつく目を瞑ってその快感に耐えていた。


 こうして伊吹の精液は採取された。

投稿初日なので二十話分投稿しました。

明日から当分の間、一日三回投稿予定です。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ