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御仏

の光の剣、使うべからず」

 帝よりの勅を賜った真田の四郎は、大いに不満を持ちたり。

「使ってはいかぬなら、なにゆえ自分を召された?」

 関白殿、四郎を慰める。

「あれなるは余りに強過ぎる力なり。

 抑える事は出来ぬか?」

 四郎答えて曰く、あれより抑えると、爆縮連鎖が続けていかぬものである。

 関白殿、四郎の申す事、理解出来ず。


 関白殿、四郎を連れて、東大寺の大仏を見物す。

 四郎、大仏にえも言われぬ何かを感ず。

「其は法力なり」

 関白殿は答えるが、四郎頷かず。

 僧正に頼み、調べると、不思議な記述あり。


「斯くなる事もあろうかと   行基」


 行基和尚が如何なる事を予見していたか、四郎察する事、能わず。




 ある時、都に月より軍勢が押し寄せたり。

 怪しげな光放ち、民や公卿、体が固まりて動けず。

 されど坂東武士、まるで効かず。

 月国の者、首を傾げる。

「此の者どもは、畏敬の心持たざるや?」

 坂東武士ども答えて曰く

「欲するは、ただその首のみぞ」

「疾う、首寄越し候え」

御首みしるし頂戴仕る」

「乞い願わくば、その首渡し給え」

「首叶わなくば、腕の一本でも構わなし」

「我が手柄、刀の錆とせん」


……月国の者、識る。

 如何に心を揺さぶり、動けなくする覇王色の光、意味非ず。

 禽獣に畏怖や畏敬の心無しと。

 只々、欲と殺意有るのみと。


 武士、矢を射るが、見えざる壁に弾かれ刺さらず。

 刀で切り付けるも、同様なり。

 武士、慌てず。

「なれば、素手で殺すのみ」


 月国の兵に、武士ども組み打ち、そのまま首を折る。

 見えざる壁ごと、へし折りたり。

「あな怪しや。

 首を直に触れず。

 何物かに阻まれたり」

「なれば、其ごと折らん」

「情け無や、なんと、か細き首よ。

 おかしな力に頼り切る故、斯様に生身が衰えにけり」

「我等武士は足柄の山にて熊と相撲を取り、

 人喰らう大蛇の生肝を食い、

 素潜りで鰐(この場合はサメ)を倒す修練を積みたり。

 斯様に弱き生き物に成り下がるなら、おかしな力は要らざるなり」


 武士ども、月の兵の首を捻じ切りながら申す。

 都の民や公卿、御味方ながら呆れて何も言えず。




 都の襲撃は囮なり。

 真の狙いは、やはり大和国の天鳥船なり。

 不思議な強さを持つ坂東武士の目を都に釘付けにし、月国の兵は足三本の異様な乗り物にて、河内国に降り立ち、そこより大和を襲う。

 大和や紀伊の武士、荒法師が迎え討つも、まるで叶わず。

 ひとえに風の前の塵の如し。


 地を歩く月国の三脚に、如来菩薩法力爆縮放射竹は使えず。

 仮に使えば、生駒の山は月の三脚と共に塵となりて消え去らん。


 為す術無しと皆が思う時、やにわに不思議な事起こりたり。

 東大寺の大仏、むくと立ち上がり、大仏殿をいずると、そのまま駆け出す。

 そして飛び上がると

超絶スーパー稲妻蹴撃(キック)!!!!!!」

 と気合いの入った叫びを挙げて、月国の三脚を破壊す。

 月国の三脚の乗り物は、やはり見えない壁で守られ、強き光で本朝のつわものども燃やたるも、御仏たる大仏には通じず。


「硬き壁有れど、されば壁ごと打ち抜くべし。

 気組み(努力と根性)はよろずの事を凌駕す。

 成せば成るものと心得よ。

 此れ、即ち達磨大師の仏法なり」


 大仏、あたかも坂東武士の如き念話をす。

 四郎

「此が行基和尚の『斯くなる事もあろうかと』の本意なり哉」

 と合点がいくも、行基和尚が四郎見慣れたる武士ども同様のなつき筋肉であった事も識れ、途端に御仏の有り難みを感じなくなりにけり。


 左様なる四郎に構わず、大仏こと奈良の毘盧遮那仏は暴れる。

破壊法力光バスタービーム!!!!」

 と叫ぶと、白毫より凄まじき光を放つ。

 その光にて、月国の乗り物、爆散せり。


「あな、ありがたや、ありがたや」

 奈良の民、伏して毘盧遮那仏を拝む。

 法師たちは経を読み、暴れ回る毘盧遮那仏に法力を注ぐ。


 攻め寄せた月国の軍勢を叩き潰し終えると、毘盧遮那仏はその場で禅を組み、動かざりし。

 民は、ありがたやと唱えながら、ござむしろを持ち寄り、毘盧遮那仏の遷座に備えけり。

 やがて、民が敷いたその上を、綱にて引かれて元の大仏殿に鎮座する事になりけり。


 月国の三脚乗り物は、奈良とみならず、都も襲いたり。

 なれど、民も武士も死なず。

 此は坂東武士の強さに因るものなり哉?

 否。

 彼等もまた神仏の怒りに触れにけり。


 月の民、乗り物にて侵攻す。

 その途上、早良親王の陵墓を荒らす。

 途端に月の民、血を吐きて死す。

 怨霊の力、あな凄まじき。

 一両の月の三脚が祟りを受く。

 其れ、即ち他の三脚に乗りし月の民に伝播す。

 皆、一様に血を吐いて死す。

 後に分かる事。

 時を同じくして、三脚にて攻めるよう命じた者、やはり月国の宮殿にて血を吐きて死せり。


 かくありて都と大和国の天鳥船は守られし。

 都には、坂東武士が討ち取りし月の民の首が幾重にも晒されり。

 彼等は首を捻じ切られ、その傷痕如何にも痛々し。

 都の民、余りの事に気鬱を訴え、倒れる者数多。

 僧侶、法師、経を唱え香を焚き、敵を弔う。

 余りの惨さに、民がそれを望んだもの故に。




 真田の四郎、都に召し出さる。

 坂東武士が討ち取りし月の民の遺骸より、見えない壁の仕組みを知る為なり。

 更に帝が仰せになるには

「活躍した毘盧遮那仏を模した、人が乗って動かせる仏像のような物を造るべし。

 金に糸目はつけぬ」

 との事。


 四郎、逆らえず。

 地道に調べたり。

 斯くあって、支度に時が掛かり、「月二号作戦」は年を越しての発動になりけり。


 関白殿、右大臣、左大臣頭を抱えて嘆きたり。

「国衙よりの税では如何ともし難し。

 全く足りぬ……」


 富の不足を嘆く資格は、彼の者たちには無し。

 国衙を減らし、荘園を作って来たのは彼等なり。

 今、財源不足を嘆くは自業自得の事。

 因果応報とは正に此の事ならん。

京都はもうちょっと後になれば、崇徳院という最強の怨霊地雷が設置されます!

坂東には平将門という、こちらも最強クラスの怨霊地雷が埋まってますが。

(20世紀の進駐軍すら勝てない、オカルト地雷が結構ありますよね)


その将門公含め、平安武士は鎌倉武士に輪をかけて凶暴、鎌倉武士は文化人に見えるとか。

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