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Prologue

2024年、7月、夏――。

記録的な猛暑が世界を覆い、日経平均株価がバブル期を超え、中身のない狂騒に世間が騒がしくなりつつあるこの暑い夏に高校生の一ノ瀬茉莉は、赤羽駅のホームにいた。


年齢は今年で17歳で東京の下町、赤羽に両親と共に住んでいる。高校生活も部活動もそれなりに楽しくやっており、友人も多くはないが出来、何の変哲もない平凡な女子高生として、普通の日々を送っていた。


しかしある日、友人が突然自殺した。理由も死因も不明だった。そして悩みを周りの大人や教師、果てはカウンセラーにも相談したが、嘲り笑うような態度や上辺だけ理解して熱心に聞き入れてくれる人は殆んどいなかった。そしてかつて仲の良かった友人も茉莉に愛想を尽かし冷たく当たるようになっていき、茉莉もそれに反発して交友関係は破綻に向かっていった。


茉莉は当然、深く悲しんだ。何故、彼女が死ななきゃいけないのか―。

世界は残酷だと思った。


そしてこの夏、思い立って長く住んでいた東京の街を離れ、どこか知らない遠くの街に一人で行きたくなった。現在のしがらみから一番遠いどこかへ―。


無論、今まで暮らしていた東京の商店街も、デパートも、幼い頃に連れて行ってもらった料理店も好きだ。ただ、今はそれらでさえも心の底から楽しめなくなり、次第に気が向かなくなっていった。食に対する興味もなくなっていき、あまり喉を通らない。


茉莉は両親に内緒で始めたSNSで、その土地に詳しい同年代の人を探すことをした。しかし、高校生の人は中々見つからなかった。だが辛うじて見つけたのが、夏の間だけ地元に帰省しているという、女子大生の人だった。文化人類学や中央アジアについて研究していると語る人物でそれだけを見るととっつきにくそうな印象を受けたが、勇気を持って話し始めると、案外ラフで話しやすかった。早速ダイレクトメッセージでトークアプリのアカウントを交換し、お互いに連絡を取り始めた。


悩みを打ち明けると、親身になって聞き入れてくれた。茉莉は彼女の人格や優しさに、なんだか荒んでいた心がほぐれていく感じがした。


そして茉莉は7月の半ば、高校が休みに突入する夏休みの初日に家出をして、関東の北端-その手前にある「安神沢市」へと向かう事を決意した。

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