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第1話 だから友達はいらない

辛い冬が明け、春がやってきたようだ。

暖かい気温、窓から差し込む穏やかな日差し、

ささやくように聞こえてくる鳥の声。

二度寝にふける俺。

そして、今日は輝かしい高校生活始まりの日。

ちゃんと遅刻した。


 ガララッとドアを開けるとジロジロ見られた。

まぁ、初日から遅刻するやつはそりゃ見るか。

おまけに、ホームルームの最中だもんな。


「きまず」

ボソッとそんな独り言を言い、とりあえず1席だけ空いている俺の席っぽい所に腰かける。すると、


「おい、遅刻しといてしれっと座るな」

「あ、すみません」

「まぁいい。」

ちょっと厳しそうだと思った女の先生。

遅刻に対して案外軽るいな、良い人かも─

「じゃあ、君から自己紹介してもらおうか」

「え、俺すか?」

「遅刻したんだし、これからやる所だったんだ。ちょうど良いタイミングで来てくれて助かるよ〜」

「はぁ、自己紹介すれば良いんすね」

なんだ、良い人とか思ってたらちょっとだるい先生か。名前とかテキトーに言ってさくっと終わらすか

「俺の名前は─」

「おっと、遅れてきたんだし皆が爆笑出来るような自己紹介を頼むよ」

前言撤回だ。ちょっとだるいレベルじゃねぇな、アホハードルあげやがったな。このババア。まあ誰とも関わりたくねぇし、もういっそ滑り倒すか。

「こほん、俺は成瀬湊だ。朝ごはんはチョコっとチョコとアルミ缶の上にあるみかん食ってきました。好きな食い物は焼肉です。やきにくい焼肉は嫌いです。俺みたいなんに絡むやついなぁと思うけどよろしくお願いしまーす。」

寒っ、なんだここアラスカか?と思えるほど教室は凍てついていた。トドも滞るぞこの寒さ。

ブルッ、あんま何言ってるかわかんねぇしもうやめとこうこれ以上は命に関わる。

「あぁ、そのなんだ。私が悪かったこんな空気になるとは。ここまで面白くないのは予想外」

フォローするならちゃんとしろよ。さて、でもこんだけおもんないことをすれば誰も関わろうとしないことだろう。少なくとも俺はこんなやついたなら、空気扱いは必然だな。疲れた、寝よ。


腕を枕に眠っている間にどうやら自己紹介は終わったようだ。俺が作り出した地獄の空気を皆無事に終えて良かった。ホームルームだけで本日は解散とのこと。俺は誰より早く帰る。賑わってるなぁ、ものの見事に俺の周辺以外だがな。


「どこの中学?」

「え、まじで!」

「交換しよー」

このように、普通の人間ならこの初日にどれだけ連絡先を獲得できるかで後々の学校生活を円滑に過ごせるかが決定する。だから、皆それに駆り立てられている。ご苦労さまと常々思う。

以前の俺ならばあちら側だったのだろうか。しかし今は、それを他所目に帰らせてもらおう。

「なぁ」

あぁ、家に帰ったらどんだけ寝れるんだろう。

「なぁって」

今週は全部午前までしか授業ないし、寝れる時間が十分に取れるな。

「おい、お前に言ってんだよ」

となぜか肩に重みを感じた。うん、疲れてるな。

帰ったら寝る前に塩まくか、幽霊怖いな。

「え、まだ無視できるのこれで?な、成瀬くん」

名前言われたら、もう完全俺じゃん。振り向くと

イケメンがいた。なんだこいつ、恐喝か?

「金ならないぞ」

「いや、カツアゲとかじゃないから」

「ウチは代々真言宗だ。間に合ってる」

「勧誘的なのでもないから!」

「テレビ置いてません」

「ツッコミ辛いの辞めてくれよ!!」

割とうまいことかわしたいいツッコミだな、この人関西の人かな。

「はぁ、じゃあなに、俺もう帰るよ」

「だから、話聞けよ!連絡先交換しよって」

「え、なんで?」

思ったことが綺麗に口から出た。

「なんで?って普通になんかおもろそうだから」

「ていうか知らない人に連絡先はちょっと」

「いやいや、同じクラスだろ。友達なろうぜ!」

「知らん、遠慮する」

「自己紹介したじゃん。城森慎吾だって!」

「寝てたから。わからん」

こいつ、しつこいな。とか考えてると。

「ん?」

教室から1人女の子が出てきた。

「その、城森くん良かったらこの後クラスの子たちと遊ぶんだけど来ない?」

チャンス!心なしか俺の死んだ目に光が宿った。

「あぁ、良いね。でも今は成瀬と、ってあれ?!」

「成瀬ってあの寒い感じ悪いやつ?なんで」

「ちょっと連絡先をと」

「えぇ!辞めといた方がいいよ〜」

「…まぁ、次があるか」


厄介なやつから逃れることができた。ふぅー命拾いした。ああいうタイプが1番タチ悪いからな。

薄っぺらくていいなら、会話できたな。少しは回復の兆し感じられて安心した。


「友達なろうぜ!」

ふと思い出した言葉。嫌なやつと重なるな、そういえばアイツの時も同じこと言われたっけか?


「翔太と城森?だっけ、少し似てるな」

昔を思い出し、懐かしさと同時に気持ち悪さを感じた。会話はできてもそれ以上の関係値にはなれなさそうだ。これは、あの時からの足枷だ。気づかなかった俺も、翔太のやった行為も他にも色んなもんが重なっておっきな塊になってずっと引きずっている。

 だから、、


「あ、一応塩買いに行こ」

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