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友との別れ
「ねえ、これでよかったと思うかい?」
周囲が冷たい岩肌に囲まれた場所で、彼はひっそりと問いかける。
しかし、彼の声はがらんとした空間に吸い込まれるだけ。
その問いに答えをくれる者はいなかった。
彼はそれに構わず、岩肌をなぞるように視線を上へ上へと上げていく。
―――ここには、長い間を共に過ごしてきた友が眠っている。
多くの言葉を交わし、色んな場所に二人で自由気ままに赴いたものだ。
でも……もう、そんなことはできないかもしれない。
人とドラゴンとの絆は、断たれてしまったのだから。
それは、彼としても彼の友としても避けられないと理解していたことであり、一番あってほしくなかった結末でもあった。
「寂しくなるね…。でも、君は変わらずこう言ってくれるんだろう?」
岩肌をなで、彼は微笑む。
「我は、人間が好きだって―――」