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~報復は失敗すると面倒~


レ)「…………………………」


ホ)「あひゃひゃひゃひゃ!いやぁ…これっ!うふふふっ!いやっ、」


レ)「笑ってるんじゃないっ!何より元凶あなたなんです…よっ!」


ホ)「グホハァッ…!で、ですが今回ばかりは………貴女のせいでも…おぉぉ…。」


横腹に一撃おみまい。

ホープさんは珍しく両腕で殴られた場所を庇うようにして痛がりながらソコにうずくまった。




さて、開始早々いきなり事件発生。

私とホープさんの目の前には、巨大な蛾が翼を拡げ立ち塞がっている。


なんでこうなった…。


二度言います。

なんでこうなったのか。

いや。そもそもこの人が何を考えているのか私にはちっとも分からない。


………。


取り合えず。

何でこうして目の前にこんなのが現れたのか。


その理由は小一時間前に遡ります。



(一時間ほど前)


ホ)「着きましたよ。セレスト有数の"安全地帯"。「不可侵の神域」。此処を越えればセレストの首都は目と鼻の先になってきます。いやぁ…長かったですねぇ。ここまで。」


あの村から丸一日と数刻。

歩き歩いて私達が辿り着いたのは、神秘的な雰囲気漂う木々が乱立した、崩れかけの遺跡だった。


「不可侵の神域」。

なぜ此処がそう呼ばれているのか。

ホープさんが言うには遥か昔。戦火の只中に在った此処に巨大な竜が現れ、その場の戦火をたった一撃で沈めた。その後、その竜は数日の間だけであったものの、此処を寝床として時を過ごして飛び去っていった。無論、竜が寝ているその間。誰一人として竜の前に立とうとはせず。それ以降人と魔物は竜が縄張りとしたこの地で争えば自分達がその怒りを買う事になると信じて恐れ、この地域のみ戦は起こらなくなったことから呼ばれるようになったらしい。


ホ)「強大な力を有する竜。戦争を一撃で止める程の力を持つがゆえに神とすら言われるものであった…。その時代の人々はそれを見た。どんな気持ちだったんでしょうねぇ。恐れながらも地に神域等と名前を付けるほどですから。何かしらの信教も存在していたかもしれません。ま。どうでもいいですが。」


レ)「…興味がない。と。」


ホ)「第一そんな大きな力を有する竜種が居ても、結局此処だけが無戦地になる程度。信じようが信じまいが他では騒ぎ続けているのがこの国であり大陸。考えても無駄ですよ。」


レ)「確かにそれは…土地への影響力少ないですけど、形として残ってるのならそれはそれで十分なんじゃないですか。そんなに言っても。」


ホ)「どうですかねぇ。ならこの国の今の事態程度。ソレが居ればさっさと止められていてもおかしくないのでは?」


レ)「う。」


何も言えない。

全くの正論だし。

仮に竜がかつて起こしたと言う事象が竜種故の気まぐれであったとしても、彼らは自分の縄張りとした所を荒らされるのを極度に嫌う。


それこそ、一国を火の海に変えるくらいに。


竜が居たのなら、今ごろ大陸そのものが焼け野原にでもなって、私たちがこうして歩いている地すら焦土になっていても何ら不思議ではない。


…?


居た?


居たのならって思ったけど。

もしかして"居ない"だけ?


レ)「………何か引っ掛かる…」


ホ)「何がです?」


レ)「此処に来る前、少し前にほら。竜種。」


ホ)「…あ。」


ふと二人の脳裏にあの底抜けに呑気な顔が浮かぶ。


レ)「メリナさん。」


ホ)「あれ、ですか。あ~。あり得ますねぇ…。姿こそあれですが、本来の姿じゃ何年生きてるんだか分からない巨躯。此方に来るまでの道のりからしても可能性は…。」


ホ)「…ありますねぇ。ああ、やれやれ。」


目を細め、

「おお~、あんなのがそれだったとしたら威厳もクソもへったくれも無いじゃないですか。第一夢遊病抱えたあの呑気がそんなー(以下略)」

とかなんとか。


さぞガッカリしているのか、矢継ぎ早にホープさんの口から出るわ出るわの悪口が。


本人が此処に居たらどうする…いや、どうなるのだろう。あの人(?)の事だからあまり怒らなそうではあるけど、もし怒ったのなら…多分私が彼を殴ってる時以上に力任せな一撃が飛ぶ可能性はあるだろう。


来ていないのが幸いだ。



そんな事を頭の中で考え、

隣で未だに一人で騒いでいる彼へ引き笑いをしながら私は歩く。


歩いて歩いて遺跡を進む。

時たま道に転がる瓦礫や崩れた壁の跡に足を邪魔されたり。敵が居ないとは言え悪路である分、遺跡の終点が見える頃には1時間。とそこそこに時間がかかってしまった。


レ)「はぁ~!もう瓦礫ばっかりで服が砂まみれですよ~!」


進むに瓦礫を退かしたり登ったりの繰り返し。

近道の為にそうした道程をしてきた為に、体は砂や埃にまみれて若干白んでいる。


私の目の前を歩くホープさんもまた同様。

特に袖や裾の部分は私以上に真っ白となっていて服の色なぞ微塵も見えなくなっていた。


ホ)「ホホホ。形はどうあれ今しているのは冒険。その身を汚さずに行くこと自体が無理ですよ。寧ろこれはこれで良いことです。それに…逆に汚れない冒険は味気無いのでは?」


レ)「それはそうですけど、って。最初に来たあの草原も同じでした…。ベタベタしてて色々くっついたなぁ…彼処も。」


ホ)「そうそう。冒険の汚れは旅の記録そのもの。無くてはならない。自分が何処へ行き、何処へたどり着き、何処へ至ったのか。それを思い出させてくれる。それが大切なモノであれば尚更忘れられない。一生の思い出って奴ですねぇ。」


レ)「それ、冒険の美学って言うのですか?」


ホ)「その通り。」


へぇ…。

この人にも冒険者らしい一面とかあったんだ。

彼の冒険に対する真面目な考え方を聞いて、私はちょっとだけ格好いいと考えたが、いつもの言動が頭にチラついたのでプラマイゼロ…いや、マイナス。


感心しながらもその半分で呆れ。

そんななんとも言えない感情を以て話を続ける彼の周囲を見る。


ん?

何か見えた。


遺跡の瓦礫の後ろに、黒いのだか白いのだかが入り混ぜになった丸いのが見えた。


…まだ大小様々な瓦礫の裏に隠れていてよく分かりにくいけれど、繭みたいな…いや、繭だろう。それが見えた。


レ)「あの…。」


ホ)「ん?なんです?もしかしてお手洗いとかですか?」


レ)「いやいや、違いますってば!それはさっき済ませ…っ………じゃなくて。」


私はふざけて返してきた彼に首を振って否定しつつ、丸いものを指差す。


ホ)「おや。ちょっと見に行きますか。」


ホープさんが動く。

ちょっと楽しみを見つけたぞと言わんばかりの小走りで。


レ)「あ、見に行くんですね。なら私も。」


私はそんな彼の後に着いていく。


ホ)「いやはや、此処に来てからはずっと何も起きずに暇でしたからねぇ。そろそろ何かしら起きてくれないと。」


レ)「…いや。そもそも今国全土が敵地ですよ?なんでそんな物騒な…。と言うかなんでそんなに楽しそうなんですか。寄り道ですよ?これ。」


ホ)「んん~。いや、ちょっと小突いてみようかなぁ~。と。」


レ)「こ…こづ………は?小突く?」


ちょっとまて。

いや、待って欲しい。

この人さらっと小突くとか言った!

あの如何にもな厄ネタっぽいあれを小突くって!絶対なんか出るに決まってるじゃないですか!あ、ダメだ。こんなこと心の中でツッコミ入れてる場合じゃない!早くとー


め…


ホ)「~♪」


あ。


ダメだ。

判断が遅かった。

いつの間にか走って寄りに行ったのかもう目の前に居ないし。と言うかもう例のやつの前に立ってるし!


んんんん!

剣取り出した!ホントにやる気じゃん!


ダメだぁぁぁ!

走っても間に合わないぃぃっ!


レ)「ちょっとまってくださー」


ホ)「スパっとな。」


するりさらりと彼の口から間抜けな一言。

それと同時にほんのりとホープさんの剣の切っ先がか細い繊維で組まれた巨大な繭糸の層に切り傷を付けた。


ホ)「フフフフ。まさかいきなりグサリなんてしませんよ。何が出るかも分からないのにねぇ…。ホホホホ。」


ヘラヘラと繭の前で笑うホープさん。


ああ、これは…。

こっちの表情を伺いながら冷やかして遊ぶつもりだったのか。楽しみを見つけたみたいな顔をしてたのはこういう…。


レ)「やめてくださいよ…そう言うの。さっきも言いましたけど、寄り道なんですからね?これ。」


なにも起こらなかった事に対して。

私は安堵の溜め息を吐いて、いつもの呆れ気満々で彼を白い目で見てやる。しかし、彼は依然としてヘラヘラとした表情でホへホへと此方の反応を見て楽しんでいる。


レ)「はぁぁ…。」


どうしたら人の驚く様子で笑えるようになるんだろうか分からない。いや、分かりたくはないのだけれど。


ホ)「さて」


と、早々にこの遊びに飽きたのか。

ホープさんは剣を鞘に戻し、切り替え早く真面目な顔で此方に顔を向けた。


ホ)「行きますかね。」


レ)「あの。此処に来た意味ありました?」


ホ)「ん?無いですが?ただのイタズラですが。そもそもレイカさんの指し示した方に丁度魔物が出てきそうなコレがあったんで気まぐれに道草がてらちょこっと驚かしてやろう的な感じで行っただけです。」


レ)「子供…。」


ホ)「何もなくて暇と言うのは事実でしたから。ホホホホホホ。ン。それにしても先程の顔は中々良かったですよ?」


レ)「このっ!」


ヘラヘラと言葉を流していく口に目掛けて私は目に止まった投げるのに丁度いい尖った石をひょいと拾って思い切り投げてやる。あわよくば眉間辺りにでも入らないかなと邪な念も乗せつつ。


ホ)「おっと。」


結果はさらりと避けられて失敗。

石は山なりに飛んでいった。


ホ)「やーい。ノーコンw」


当て損じた上で。

おまけにバカにされた。


レ)「ぐ………くぅぅ……!」


コケにされる悔しさに歯を食い縛り、私はまだだヘラヘラと笑う彼に背を向け歩みを進め始めた。


ーベチョー


ホ)「ん?」


レ)「ん?」


ベチョ。

何やら粘性のあるものに何かが落ちてくっついた様な音がした。"なんだろう"と私とホープさんは背後を見る。


穴。

繭に穴が空いている。

それもホープさんが切り傷を付けた所のど真ん中に。丁度握り拳くらいの穴。


ホ)「………………」


レ)「………………」


ホープさんの顔を見る。

"知らない"。そんな表情で此方を見る彼が私の目に写る。


そして、その次に繭がもぞもぞと動きだす。

もそもそ。もぞもぞ。ゴソゴソ。


ポカンと呆気に取られている内。そんなに時間を要すること無く、繭は内側から破られ中身が出てくる。


蛾だ。


それも大きい。

全長5m程の巨大な繭の中から一回り大きい。


蛾の体は繭から出たのち、すぐさまその体は乾き、尋常でない速度で成虫として完成。両の翼を拡げてバタバタと宙へと浮かび、此方をその顔に付いた無数の目…複眼が何人もの私やホープさんを写しながら見つめる。


ホ)「ぷっ…。ははははははは!」


ホ)「やぁーったやった!悪いコだぁ~!なんだかんだ言って面倒事作っちゃってますねぇ~!」


………そして、最初の会話に戻ると言うわけです…。

大変。

大変長らく留守にしてしまい申し訳ございませんでした。


仕事や体調不良、他にも私事等が多々重なり、いつの間にか7ヵ月以上も投稿が止まることに…。


ひとまず、こうしてまた何とか再開できたものの。流石にちょっと期間が開きすぎる…。これからもまだしばらく忙しくなるので、この趣味が進むのはかなり時間がかかることになりそう…。


ですが、これからも何とか時間が空き次第少しずつ制作していくので、もし宜しければどうか、どうか宜しくお願いします。

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