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~敵地に仏もクソもない~

(宿屋の屋上)


ゾンビ)「うぇーい!」


ホ)「ふんっ!」


ゾンビ)「うぇーへへへーいっ!」


勢いよく私たちの後ろに続いて屋上に上がってきたゾンビをまた一人、ホープさんが剣で殴り飛ばす。


ゾンビはアホみたいな間の抜けた声を出しながら吹き飛び落下していく。


レ)「……(うわぁ…)」


本当は今の状況に対して集中するべきなのだろうけど、相手が相手なのでとても集中など出来そうにない。と言うか、


出来るわけがない。


そもそもの話、ゾンビ達の表情が清々しい程にスッキリしているのだ。なんと言うか、笑顔?


それに、多少なりとも意思があり、思考して動いているのが分かる。


…と、私がゾンビに対して機敏に動き対応するホープさんを横目に思考している内に


ーバキッー


ホ)「ふぅ……。一先ず周囲のゾンビ達は追っ払えましたかね。」


取りあえず周囲のゾンビが彼の手によって遠くに突き放され、ほんのちょっとだけだが辺りが静かになった。


レ)「……で、さっきの話何ですけど。一体どうなってるんですか。これ。」


コキコキと剣を握り固まった指を解すホープさんに、私は先の話の続きを聞いてみる。


ホ)「簡単です。最初に此処へ踏み入った時点で幻と言うか化けの皮を被ったアレ(ゾンビ)の大群のど真ん中に立たされていた。それだけですよ。」


レ)「ば、化けの皮を被ったって…」


ホ)「ほら、擬装とかあるでしょう?アレに該当する結界魔法が村全体に張り巡らされていただけです。ましてやアイツら夜行性でしょう?朝っぱらから夕方位は大人しいので相性が良いと。端から見ただけじゃ分からないわけですよ。ったく。」


レ)「そ、それじゃあ此処の人達って、もう」


ホ)「ま。そう言うことでしょう。恐らくですが全滅してますね。」


レ)「…………」


ホ)「さーて。どれど……うわ。」


ホープさんは下で騒いでいるゾンビ連中を見るとそれにうんざりしたのか、「やーい。能無しー。」と嫌味混じりの声で罵ってから鞄からボムを取り出して放り投げる。


ーボズゥンー


死人が、犠牲が出ているにも関わらず、目の前に置かれた物事に対して何かと突くような反応は殆どない。


"慣れている"


それが。

今こうして高いところから顔色変えずにボムを投げ、ゾンビを吹き飛ばしている彼を見ながら私が思うものだった。


しかし、

冒険者である以上そうならなければ目標への道中、起こる出来事に対応なんか出来るわけがない。


レ)「命の価値に区別無く…か。」


自分の身を守る以上、敵が襲ってくるのならばそこに命の優劣なんて無い。襲ってくるものが見知った人や、あの魔物みたいな元は人だったモノ。そんなものであったとしても。それらに対して何か情を持つのはいけなくはなくとも目の前から退かさなければいけない。


レ)「はぁ……慣れないと、か。」


溜め息を此処で一つ。


「戦場など、命のやり取りが在る場所には道徳などのそれは介入、存在は出来ない。」


思考する中、いつかお父さんの書斎で読んだ本にそう書いてあった事を思い出す。


本当。その通りだと思う。


今更だけど。


ゾンビ(被害者の仏)だとしても、容赦なく粉微塵にしなくてはいけない状況になっているのだから。


平和な地元(オルレニア)で有り得ない行動ですら此処では自衛手段。何度も言うが、道徳がないのはその通り。あの時見た文は本当なのだ。と、そう痛感させられる。


でー


時間にすればそこまで長くもないが、こうして思考する最中でも。ホープさんのボムによる爆風の余波が下から吹き上がっていく。



ホ)「レイカさん。ほい。」


と、不意に横から丸いものが私へと投げ渡される。


レ)「え?」


黒くて、丸くて。そして地味に重い。


ー(黒光りする爆弾)ー


レ)「ってぇぇぇぇ!ボボ…ボムッ!?」


ホ)「まぁまぁ。火は着いてないのでご安心を。」


レ)「いやいやいや!何だってこんなものいきなり渡すんですか!ビックリするじゃないですか!」


ホ)「だってぇ。辛気臭い顔しながら私だけに任せてボッケーっとしてるからぁ?」


レ)「うっ。それは…ごめんなさい。」


いつも通り苦笑いで答えた私に対してホープさんもまた、いつも通りの腑抜けた様な、人をバカにした様な笑顔で私に返答を返した。


ホ)「ま。おおかた…今我々が置かれている状況に対して、「慣れてるなぁ」だかなんだか思ってたんでしょう?」


次いで。

まるで私の心を読み取ったかのように、あっさりと看破した。


レ)「!?」


ホ)「さて。一先ずこれで関門一つ突破と言ったところですか。ほら、ボサッとしてないで降りますよ…っと!」


考えを様子一つで見抜かれ面を食らっている私を置き去りに、ホープさんはひょいとこの屋上から飛び降りる。


レ)「……エスパーだよ。これじゃあ…。」


半ば驚き残る中、戦場に変わったこの場所を抜ける為、私もそれに続いた。



(「町の廃墟(中央の噴水広場)」)


移動後しばらくして噴水のある開けた広場に出た。


無論。道中にはゾンビがわらわらと蠢いていたので撃破して進んできた。


レ)「……」


勿論、既にゾンビと言えど元人間の一般人なのだから剣を振るうのは気が引けたし、胸が痛くなる。


もう気が滅入って仕方がない。


レ)「はぁ……。」


ホ)「侵攻されている範囲はそれなりにある証明ですねぇ。そもそも中央にあるセレストからそこそこに離れた此処がこれとは。」


レ)「あ。そう言えば前に此処へ来たことあるんですよね。ホープさんは。」


ホ)「ええまぁ。軽く数回程度。見覚えのある顔のゾンビもちらほら居ましたし、複雑な気分ですよ。全く。」


レ)「の、割には結構あっさりしてますね…。」


ホ)「当然。慣れてますから。こう言うのは。ましてやこの国のどの町もこうなる可能性と常に隣り合わせだったのですから。このくらい想定しなくてはやってられないでしょう。」


冷めた顔と声で私に事を喋ったホープさんは、周りにも聴こえるほど大きな溜め息を吐きながら目を閉じ、指で十字を切るように動かし数秒間黙り込んだ。


レ)「…………」


私もそれに続いて同様の動きをする。


そうしてほんの少しの祈りを捧げた後、ホープさんは苦々しげにこう口を開いた。


ホ)「慣れているとは言え、惨劇を見せられて気分がいい訳は何処にもない。まして、死んだ方の死体をこうしてゾンビにして弄ぶような連中には反吐が出ますよ。」


言葉の後。

すっと立ち上がり、剣を握り直してから鞘に収める。鉢が鞘に当たった時、僅かながらに舌打ちの音が耳に届いてきた。気に食わないのだろう。前に面識がある者まで巻き込まれたのだから。


私は取りあえずホープさんの一歩前に出て先に進もうと伝える。


ホ)「ですね。」


ややぶっきらな返事をして彼は歩き始めた。

呻き声はまだまだ聴こえる。


やんややんやと騒ぐゾンビ。

それらをチマチマ。躱しながら少しずつ先へと私たちは進んでいく。


そして。


ホ)「出口。ですか。」


レ)「ホントだ…。」


ようやくながらもあっさり。

出口へと辿り着いた。


しかし、ホープさんはこれを鼻で笑うとまたバックからボムを取り出した。


ホ)「一応、こう言うのは出口に何かあるものですし。」


レ)「……?」


ホ)「石橋を叩いて渡るぅ!あっそーれっ!」


ーポイッー


ーヒュルルルルルル…ボッ!ー


彼の手から投げられたそれは小さな見た目に反して凄まじい威力の閃光と爆風を巻き起こし、出口の門を粉微塵にする。


……廃墟とは言え容赦が無さすぎる。


そうして粉々になった門。

その周りは深さ2m程の大きなクレーターが出来る。


レ)「…………ん?」


舞い上がった土煙に目を細めながら私は中を覗く。


レ)「あれは球根…?」


穴の中央に緑色の玉ねぎのようなものが目に入った。いや、玉ねぎのようなものと言うには大分歪な形だけれど。


ホ)「…さしずめトラップと言ったところでしょう。小賢しい。正面から呑気に出たところをあれでバクリ。ですか。"食人植物"なんてめんどくさいものを置いてからに。」


レ)「名前からして何となく分かりますけど…逆に掘り返していいヤツなんですか…?あれ。」


ホ)「なわけ。」


レ)「えぇ…」


ホ)「見つけたらさっさと燃やすのは魔物発見のマナー。ほら。構える構える。あー言うのは見つかったら開き直って襲ってきますよ。」


ホープさんは言葉の最後に「はっ!」と笑って先まで地に埋まっていた魔物に視線をやる。


途端。


彼の言った通り。

うぞうぞと魔物は動き出す。球根のような所が開き、禍々しい蛇のような顔を現す。



ホ)「さっさと倒して先に進みましょう。臭くてたまらない。」


レ)「は、はい…!」






……続く

仕事が忙しい…


どうもお久しぶりです。

最近はペースがかなり落ちてしまい申し訳ないです。


せめて月1でも出せるように頑張ります。


そして此処最近職場では入学式などの準備とかをしているご家族(お客様)が増えてセールだのなんだのメチャクチャ忙しいです。



……チョコのみたい。

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