~今こうして居るのは~
ロ)「はぁ…はぁ……っだぁぁ」
サ)「私の……家なのになんで…こう…なるわけ…?」
ーどちゃりー
生々しくかつ気味の悪い感じの音を立てながら、俺達の前に現れた2体目の怪物はその体の形を崩しながら倒れた。
二人)「「はぁ…」」
不意こそ突かれたが、先程よりも動ける範囲が広いことが幸いした。玄関で立ち往生をし、背後から仕掛けられた瞬間、二人で何とか真横に飛び退き攻撃を回避。反撃に出られたのだ。
で。
倒して今に至る。と。
ロ)「どうする?」
まぁ、倒せるとは言えコイツらは普通に厄介なのは変わらない。
サ)「どうするって言っても…それに悩んでるから動けないんじゃない。」
ロ)「……あーははは…ふぅ。」
倒してもランダムに数回は再生・復活をする怪物。その2体目の討伐。たったの2体と言われるかもしれないけど。今この時点で俺達はあまり考えたり、さっさと動いたりすると言った行動はそこまでしたくないと思うくらいに疲れている。
疲れている…。そう。もうすでに疲れているのだけれど。
怪物の声)「おおぉぉ……ん」
屋敷の奥の何処からか声が聴こえる。
声の響きからして先にサンドラから知った他にも居る同種の連中の声だろう。
ロ)「っだ!聞いた時点で何となく予想は着いてたけどキリがないな!アイツら!」
疲れているのに足音と共に近付く声。それが俺達に伝える。「休んでいる暇はない。」と。
ロ)「クソッ。取り敢えずサンドラの部屋に戻るしかないか…!どうする!?」
じわじわと此方の体力を削ってくる「怪物達」と「この現状」に歯噛みをしながら俺は声を溢す。
サ)「…玄関は何故か開かなくなってる…。そうだね…それしかなさそう。」
ひとまず撤退。
俺達が今居る玄関へと近付いてくる足音。それに急かされながら俺はサンドラとその場を離れ、サンドラの部屋に戻ることにした。
(名も知れない森の洋館「サンドラの部屋」)
ーバタンー
二人で部屋に入り、
サンドラがドアを閉め、鍵をかけた。
ロ)「……取り敢えず此処でしばらく居るしかなさそうだな。」
俺は鍵をかけられた事を確認すると、これを話してから床に座り込んで胡座をかいた。
サ)「……一応、私の部屋だからね。此処。」
ロ)「分かってるよ。あれこれ下手には触らないから。」
サ)「…なら良いけど。」
ロ)「ありがとう。」
サンドラに幾らか注意みたいな事を言われながらもそれに軽く返してから俺は「ぶはぁ…疲れるなぁ…アイツら。」と、文句を吐きながら床に視線を落とす。
視線を落とし、ふと頭に軽い思考が巡った。
何と言えば、今共に行動している彼女の事だ。
詳しく言うと、
「この子は仲間が居なくなってからずっと此処で一人だったのだろうか。」
なんて簡単な疑問だ。
…まぁ。多分此処まで来てると彼女はすでにその証明としてあの怪物と戦い慣れている訳ではあるのだけれど。
……と言うか、そもそも"いつから一人になったのか"をまだ聞いていない。
ロ)「…………」
下らないかもしれないけど、聞いてみる分には分かるものも分からない。聞くだけ聞いてみよう。
俺は口を開いた。
ロ)「サンドラ。」
サ)「ん?」
俺が思考し、静かにしていた中。サンドラは部屋で本棚から本を引っ張り出して開いていた。
サ)「何?もしかして気になることとかあったの?」
声をかけられそう答えた彼女は開いていた本をそっと閉じ、俺に視線を向ける。
ロ)「辛いこと聞くかもしれないけど、それでも良い?」
いきなり聞ける話題ではない。
そう考えた俺は念のために今から聞くことはサンドラの心の傷に触れる可能性がある。と伝える。
もしかしたらこれ…つまりこの、「念のため」が悪い方向に行くかもしれないけれど。
そうなったとしても、相手の事を気遣い無しに聞き出そうとするのは人としてどうかと思った故の確認だ。
サ)「…良いよ。」
確認に対して、サンドラは少し考えるようにした後、僅かに間を置いてから質問にOKを出してくれた。
ロ)「ごめん。ありがとう。」
喋る前に深呼吸。そしてー
ロ)「あの、サンドラって…いつから一人だったんだ?」
サ)「………………」
発せられた言葉にサンドラは俯く。
それから、しばし沈黙を通してから彼女は喋る。
サ)「あぁ、やっぱりソコ気になるよね…。まぁ、最初に言わなかった私が悪いんだけど…。」
憎々しげではあったが。喋る。
サ)「1ヶ月。」
ロ)「1ヶ月?」
サ)「そう。1ヶ月。」
ロ)「それって、もしかして仲間が残ってたとか…そう言うのでいい?」
サ)「そ。首都が滅んでその次の日にはアイツらが沸いてきたって話したでしょ?そこから1ヶ月は仲間が居た。」
となると…
セリスさんが話したことをレイカさんから聞いた時は、レイカさんがセレストの状態を聞いた日から4日くらい経過してからと本人から聞いている。
……その4日を足して、今日。
ロ)「…3ヶ月……だよな。となると君は2ヶ月も此処で一人…」
サ)「あ、あは…あはは…まぁ……まぁ…ね。うん。」
ロ)「……」
3ヶ月。俺達がこうして行動するまでにのんびりしていた期間。
サ)「ちょっと…自分から聞いてきたのにそんな顔しないでよ。」
ロ)「……ごめん。」
準備とは言え、時間をかけ過ぎた。
実力が無いとは言え、それでも何とか助けるだけの時間とかは、作ろうと思えば作れたかもしれない。
もう少し速く来ていれば、彼女の周りの仲間を助けることが出来ていたかもしれない。
いや。違う。
"それを解決するにはまだお互い力不足"
……あぁ。
そうだった。
それすら出来ないかもしれないから、あの時「渡り風の丘」で約束したんだ。むやみに突っ込んでいたとして、先の怪物に当たるのは明白だし、少し前の俺じゃ…あれは足止めすら出来ない。犠牲も、恐らく変わらない。
"仕方ない"訳は無いけど。
これは"仕方ない"事なんだ。
なら…"今"。"現在"を見よう。
ロ)「…此処に。いや、来るのは…そもそも君と此処で会ったことすら偶然だったんだけどさ。遅かったよね……遅くなってごめん。」
サ)「……」
だが、仕方ない訳は無い。
俺は此処に来るのが遅かった事に対して、サンドラへ頭を下げた。
ついでに。
ロ)「生きててくれて…ありがとう。」
クッサいけれど。
こうして彼女が今日まで生きていて、俺と会うに至った事に感謝を伝えた。
サ)「ぷふっ…何それ。おっかし…ぷっ…。ふふ…。」
笑われた。まぁ、何となく予想はしてた。
サンドラはしばらく俺の発言にクスクスと笑っていた。そして、それが落ち着くと此方の目を見て笑顔を見せた。
サ)「でも、ありがとう。今日ロイドが来てくれたお陰で今も生きてるから。」
ロ)「…なんて言っても、サンドラの様子じゃまだ数日は凌げそうな強さだけど。」
サ)「まぁね。けど流石にこの家の食料はそろそろ厳しかったし…本当に数日だったと思う。」
ロ)「そっか。じゃあ…俺は…」
サ)「ロイドが今日此処に来たことは助けになってるし、助かったよ。」
肌寒いと思うくらい暗い、この洋館。
そんな中で唯一暖かいと思えるくらい、落ち着いた空気がこの部屋にある。その空気に押され、先の疑問から話は変わり、他の話を俺達はし始める。
そうして危険なところのはずなのに、二人で楽しく話している内に時間はどんどん過ぎていった。
……しかし。そんな暖かい空気の中での会話は
ーバコォォ…ン!ー
ロ&サ)「「!?」」
突如玄関の方から何かが壊れ、ものすごい勢いの音が響いた事で中断される。
ロ)「あの怪物達が何かしたのか…?」
サ)「いや、あれは何か生き物を見ない限りは何も仕掛けないから…」
耳に届いた突然の物音に目を丸くしながら二人は顔を見合わせ、立ち上がる。
(正面玄関)
ス)「開かない扉は普通に吹き飛ばすに限りますね。ええ。」
セ)「………あは…ははは~」
恐る恐る音の出所にやって来た二人。そんな彼らの目の前に。ドアが在ったであろう所に大穴が空き、その在ったであろう場所に在ったドアの破片…もとい木片が散乱し…その中心で先の言葉を呟くスノウと、苦笑いをして立ち尽くすセリスが立っていた。
ロ)「………ダイナミックエントリー。かぁ…」
サ)「だ…誰?あれ。」
ス)「あ!」
目が。視線が合った。
ロ)「ど、どうも…」
ス)「ロイド君!やっと見つけたぁ…!」
ロ)「ご心配をおかけしました…は、はは……。」
時間にして夕方。
夕焼けに照らされた洋館の前。
自らのミスで大いに焦ったのか、いつもは見ないほど…情けないぐらいに涙と鼻水でぐちゃぐちゃになったスノウさんに俺は飛びつかれる。
その様子を少しひきつった様な笑顔を浮かべ見つめるサンドラとセリスさんの視線がちょっと悲しい。それも、その視線が主に俺ではなくスノウさんに向けられていると考えて。なのだけど。
…取り敢えず、夜がやって来る。
今日は此処で休むことにしよう……。
続く
祝30話です!
今回も読んでいただき本当にありがとうございます!これを続けられるのは読んでくれる方が居るからこそです。
寒波の影響か分かりませんが、風邪と言うか、扁桃腺が腫れました。元々扁桃腺持ちですが。
流石にこの時期は毎回冷え込むから辛いですよね。
これじゃ趣味のために指を動かす事すら大変になるからたまったもんじゃない。
と。次回は水曜日の夜から書き始めます。
これからも私の趣味を読んでくれる方に感謝をしながら物語を書き上げていく所存です。
あと、良かったら感想とか書いてくれるとさらに励みになります。良かったら…ですけど。
追記。
第1章は50話程度で完結させる予定です。
1章を書き終えて2章に行く際、今までのお話にある程度目を通したりして修正をかけたりする予定ですのでご了承お願い致します。




