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~残骸と監禁~


怪物)「おおぉぉぉぉぉおおおぉぉ!」


右横から大振り。黒いどろどろとした腕が俺に迫る。


ロ)「ぐっ!」


何とかガード。

剣と剣の峰を左で抑え、それを受け止める。


ロ)「力……っつっよ…っ!」


重い。しっかり受け止めている筈なのに。

この怪物はそれを正面から力押しで無理やり俺を吹き飛ばそうとしてくる。


…俺の足はズリズリと音を立てながら元々立っていた位置から押し出されていく。


サ)「そのまま!そいつを止めてて!」


力負けし、今にも吹き飛ばされそうな状況になっているそんな俺の背後からサンドラが声を張り上げながら此方に走ってくる。


何かある。そう俺は予想して必死に怪物の足止めを続け、サンドラが仕掛ける為の隙を作った。


サ)「ネイルデッド・シュレッダー!」


俺を飛び越え、サンドラが怪物を頭から鋭い爪で細切れにしていく。


怪物)「おぉ…おぉぉぉぁ…おぉぉ…!」


何十、何百と細切れにされ、怪物は形を失いながらその場で崩れ落ちていく。俺は目の前のそれが完全に崩れるのを見ながら剣を下ろして


ロ)「……ふぅ。」


と。一息。

しかし、その息を全て吐き切るすんでのところで後ろから乱暴に肩を引っ張られ、数歩後ろに移動させられる。


ロ)「何ー


肩を引っ張ったであろうサンドラに理由を聞こうと俺はサンドラの居るであろう背後へ視界を動かそうとしたその瞬間。


ーグォンッ!ー


鈍く、風切り音が耳に届く。

その音で先程まで動かそうとしていた視界を戻す。

そこには。


ロ)「なっ!?」


なんと。サンドラが細切れにした怪物が元の形に戻りながら、猛然と俺に殴りかかってきているではないか。


一瞬油断し、敵から目を剃らした時点で、防御の型を取って攻撃を防ぐだけの時間は無い。拳だか腕なんだかよく分からない。ぐちゃぐちゃの怪物の攻撃が顔面に迫る。


ロ)「がっは…っ!」


直撃。

初撃の時点で何となく察していたが、いざ食らったとなるとより一層パワーの差を重い知らされる。


痛いとか、そう言う感想が出る前に頭が、意識がグラグラと揺れる。視界が回る。同時に吐き気もした。


ロ)「ぐっ……ぬぅぅぅっ…っぐ!」


揺れる意識をより強い意思で繋ぎ止め、回る視界と吐き気を圧し殺しながら、俺は何とか受け身を取って体勢を立て直す。


サ)「…ちょっと!肩引っ張った理由とか聞かずとも察してよ!」


ロ)「ごめん。油断してた…。」


サンドラからお小言が飛んできた。

まぁ、無理はない。事実だ。しかし、あの怪物のことを俺はまだ知らないのも事実。


ロ)「なぁ。あれって。さっき君が細切れにしたよね?何で戻ってるんだよ!」


サ)「詳しくは知らない…けど、大体2回から4回は殺さないと死なないの。だから完璧に動かなくなるまでは攻撃を止めないで。」


ロ)「は、はぁ!?ハッキリしてないってことかっ?」


怪物)「オォォォォォォッ!」


二人)「「!」」


二人は素早く後退し、迫りきた攻撃を躱す。

戦いの場は長さこそあれど廊下。横幅は狭いため、剣を使う場合、防御ならまだしも、攻撃に転じる時はそれが制限される。


何より怪物の攻撃によって幾らか床は崩れて動きにくくなってきている。その状況を見てロイドとサンドラは互いに顔を見合わせ口を開く。


ロ)「サンドラ!君はあれと何度かやりあってるって認識で良いんだよね!」


サ)「うん。此処数日、この家で徘徊してる奴らとは何度も会ってきたから。けど、何でそんなの聞くの?」


ロ)「君がメインだから!」


サ)「メイン?どう言うこと?」


ロ)「さっきアイツとかち合った時に感じたんだけど、正直言って俺はパワー負けしてる。魔法での攻撃も考えてみたけど室内だからね。出せても初級程度。だからー」


サ)「あなたがさっきみたいにアイツを止めて、そこに私が切り込めば良い。そう言うこと?」


サンドラの返答にロイドは「その通り」と大きく頷きを返した。


サ)「分かった。なら前はあなたに任せるよ。」


ロ)「よし…!だけど長くは止められないから速攻で頼む!」


怪物)「オォォォォォォッ!」


ドタドタと騒がしい音と狂声(きょうせい)を上げながら再度怪物が仕掛けてくる。


ロイドは体勢を低く、構えを取りながら怪物の正面に立つ。


ロ)「……っ!」


全力で一息吸い込む。


全身に血が巡る。視界が一時的だが広くなる。


それと同時。四肢に力が入るのを感じた。



怪物)「おろぉぉぉぁぁぁぁぁおおおおおっ!」


距離を詰めてくる怪物は次こそ終わりだと言うかのように、先とは違う声を吠えながら黒く、重い腕を振り上げる。


ロ)「オォォォォォォッ!」


それに対抗するように。

ロイドもまた咆哮し、此方からも距離を詰めていく。距離が縮まり、互いに間合いへと入っていく。


そして


両者の攻撃は初撃と同じようにかち合った。


ロ)「ぐっ……」


最初と同じ。足を後ろに引きずり出される形でロイドの体の位置が動く。


ロ)「負っ……けぇ…る……かぁぁぁぁぁっ!」


しかし、2歩分引きずり出された所でそれは止まる。


ロ)「一度押し負け……!次は油断して殴られて…!

一度の助けと一度の油断。今のところ良いとこ無し。このままカッコ悪く…て、たまるかっ!」


再度全力で口から息を吸い込む。

一瞬対峙している怪物の腐臭が口から喉奥に入ってきて気持ち悪くなったが、それを根性で張り倒して続ける。


結果。ほんの僅かだが、ロイドの相手を押す力が強くなる。


怪物)「おぉぉ……おぉぉ……ぉ……!?」


徐々に押し返す。返していく。

後ろに仰け反るような形になっていた姿勢が、少しずつ前のめりになる。


いける。ロイドの頭にその一言が浮かぶ。


ロ)「今だ!頼むっ!」


俺は後ろで機を伺っているサンドラに合図をした。


サ)「見てれば分かるっ!」


サンドラは合図が送られるや否や、

素早く自分が立っている床を蹴り、そこから壁を蹴って俺の頭上までやって来た。


サ)「2回目…!ネイルデッド・シュレッダー!」


両手を広げ、赤く光る眼光と共に天井を蹴って怪物に迫った彼女は目にも止まらぬ速度を以てその爪を振るう。


怪物)「グギャッバッグバァァゴボボボボ…ッ!」


その一撃で2回目の死に直面した黒い怪物は、1回目よりも激しい声を出し、その肉片を周囲に飛び散らせながら四散。崩壊して二度と動かなくなった。



ロ)「……終わった…よね?」


サ)「終わったよ。今回は2か…。」


サンドラの返事を聞き、俺は剣を収める。

多少鼻を突く臭いが気になるが、それはまたあとでどうにかするとして。


ロ)「2って?さっきの怪物を倒す回数のこと?」


俺は最初に頼んだ「あとの説明」を求めることにした。


サ)「そう。まんまそれで合ってるわ。」


ロ)「そっか…。じゃあそれは良しで。アイツ、明らかに普通じゃなかったけどあれは何なんだ?何と言うか、原型を止めてないし、腐った臭いするし。さっきみたいに生き返ると言うか再生するし。力は強いし。しかも、戦ってる時に君…"奴ら"とか。」


サ)「聞く限り、大きく二つってことで良い?」


ロ)「あ。ああ。」


サ)「うん。まず一つ。あれが何なのか…って言うのは正直に分からない。けど、ほんのちょっと分かることと言えば…あれは元は人だとか魔物とかだったものよ。」


ロ)「…え?」


サ)「人であり狼だからね。臭いで分かるの。」


……おい。

じゃあなんだ。と、俺は怪物の残骸へと視線を向ける。


ロ)「元は…人…とか、魔物……?」


サ)「うん。その証明と言っちゃうとあれかもだけど…。こいつの死体の中。見てこれ。」


サンドラはそう言いながら


ーぐちゃりー


と生々しい音を立てながら何かを見つけて持ち上げて見せた。


ロ)「ぅ……っぷ…っ!」


それは、腕と、それに不自然な形繋がる心臓だった。それも。子供くらいの小さい腕に、牛とかそう言うやつの大ぶりの心臓がついている…異形と言うには十分すぎるものだった。


ロ)「……っ…ぐ。くく…ふぅ。」


腹奥から込み上げる吐き気を抑え、サンドラにそれを下ろすようにと俺は頼んだ。


サ)「……」


サンドラは申し訳なさそうにしながらそれを廊下の隅へと放り投げた。


ーベチャリー


……あまり聴きたくもないような音が響いた。



ロ)「ごめん。次を…話してくれるかな…。」


サ)「……うん。2つ目は、コイツは他にも居るってこと。」


ロ)「あぁ。まぁ、君がそれみたいな事を言ってたから何となく察しは出来てたけど…居るんだ。」


サ)「他に聞きたいこととか、ある?まだ1つくらいなら話せるけど。」


ロ)「………」


一応、さっきの二つの話で何となくあの怪物について、その作られるきっかけとかになりそうな出来事は予想がついた。


…しかし、これはあくまで俺の中だけの予想。

もしかしたら彼女が知っていると言うか、把握していることが今俺が欲しい"それ"ならば。少しは今回の目的に役立てられるかもしれない。


ロ)「なら、さっきの二つ以外で分かることを。」


であれば勿論イエス。サンドラが知っている事を最後まで聞くことしかないだろう。


サ)「あれが出たのは最近。首都…えっと、この国が崩壊した幾らか前に起きた大規模な殺戮。あれが起きた後になるかな。」


ロ)「……」


やはりか。

あんな怪物を作るなら"それ"しかないだろう。


サ)「殺戮が起きて次の日からか…さっきみたいな奴らが森にやって来て。私の仲間とか…そう言うのを襲って…"同じ"にしていったんだ。」


ロ)「………ん?」


…いや。倒せたから知らなかったが、何気に恐ろしいことも知れたな。まぁ。それについて聞く事にするか。


ロ)「……で。その同じにするって。あれか?マジに同じにするやつ?あのぐちゃぐちゃのあれになる?」


サ)「うん。アイツら、殺した相手に自分の肉片とかをくっ付けたりして。そうやって仲間を増やしてる。」


……キモい。と言うか噛まれたりとかじゃなくて増え鬼みたいだな。作ったやつはもしかしてそう言うのにはこだわりとか無いのか?


……とりま。そこは置いとくか。

俺は一先ずそこに区切りをつけることに。


と。やれやれと肩を落としながら情けない溜め息を吹いたそんな俺に、何処か寂しげな顔をしたサンドラが話しかけて来た。


サ)「…私。もう…周りの仲間が全滅しちゃっててさ。えっと、此処に居る理由とかもう、無いんだよね…。」


ロ)「え?」


サ)「さっき一緒に戦ったし、何かの縁だよ。私、ロイドに着いていってもいい?」


突然のことで少し驚いたが、確かにこの家で1人で隠れながら此処に居たのならば。このまま此処に滞在するより誰かに着いていった方が確かに安全だろう。


ロ)「…ああ!とは言え俺の行き先はセレストなんだけど…それでも?」


俺は自分の目的地を明かした上で彼女にそれでもいいかと聞く。


サ)「うん。少なくとも此処に残るよりは二人で動ける方が余程いいよ。」


ロ)「ならこれから宜しく頼むよ。サンドラ!」


決まりだ。

殴り飛ばされた先の幸運か。

俺は後で考えてみると半ば無理矢理だったが、少し気恥ずかしそうにしているサンドラの両手を取って握手をした。


サンドラが仲間に加わる事になった。


サ)「それじゃあ。ちょっと準備してくる。一応私が出てきた所…私室だったから。」


ロ)「了解。なら部屋の前で待ってるよ。」



(30分後…)


しばらく。サンドラが準備を終えるまで待ち。

彼女が準備を終えた後。俺たちは一度玄関に戻ることにした。


そして。


まぁ。森の洋館とかの時点で何となく察していたことではあるのだが。


ーガチガチガチガチー


ロ)「開かない…な。うん。」


サ)「……元々…私の家なんだけどな。何でだろう。」



アレコレ知れた分。イヤな事も起こるらしい。


ーびたりー


二人)「「………」」


怪物)「おおぉぉぉぉぉおおおぉぉ!」


二人)「「わぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」」






とにもかくにも、

此処を出るにはまだ時間がかかるらしい。




…続く。

第29話。


次は今週の土曜日の夜から書き始めます。


……寒波辛い。指が動かない…。


辛いです。


皆さんお風邪にかからないように気を付けてくださいね~。

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